第114回 正修止観章 74
[3]「2. 広く解す」72
(12)業相境②
(2)別釈②
③料簡
ここでは、善悪の業の様相が現われて障となることに相違があることについて問答考察している。障でないけれども障である場合、障であるけれども障でない場合、障と非障がともに障である場合、障と非障がともに障でない場合の四種の場合を取りあげている。
第一の障でないけれども障である場合について紹介する。もし人が先に善の様相を生じれば、そのときに歓喜し、後に愛著・慢心を起こして、他を軽んじ、この証相を頼りにして、驕り高ぶることの根本とし、しだいに名誉や利益に染まって、過失と憂いはますます生じ、心は退き法は破壊され、戒を捨て俗世間に戻って、すべての悪を作る。このような場合、はじめは障でない善によって、後に大障の悪をもたらすことになるのであると述べている。
第二の障であるけれども障でない場合については、先に悪の様相を生ずるが、慚愧し恐怖し、熱心にこの悪を懺悔し、相続の心を断じて、ずっと罪を起こさず、熱心に多くの善を行じて、偉大な事柄を成し遂げることに至るような場合を指すのである。第三と第四の場合については説かれていない。
その他、善悪が生じることに関して、さまざまな記述があるが、ここでは説明を省略する。
この段の末尾に、真正な発心か邪(よこしま)な発心かによって、業が修行を妨げるかどうかが決まることを、次のように述べている。そもそも発心が真正であり、智慧による理解が明瞭であり、巧みにさまざまな様相を知って、一々誤りがなく、さまざまな障礙に迷わされず、心を鞭打ち理に入り、あらためてその明るさを増大させ、行に余力があって、業の門を認識して、自在に通達して、広く他者を教化することがある。もし業の様相を認識して細かく砕くことができなければ、ただまとめて障であると知って、何も執著せず、ただちに心を鞭打ち理を観察すれば、業も妨げることができないといわれる。
これに対して、もしもともと理解する心がなく、さらに発心が邪であれば、業の様相を見てから愛著を生ずるので、魔はその隙をねらって入り、吉凶を示し、ついには死んで餓鬼道に落ちるとされる。
④止観
ここでは、業の様相という境に対して十乗観法を行なうことを述べている。はじめに思議の業の境について述べている。業が三悪道の報を招くこと、業が三善道の報を招くこと、声聞の観業(業を観察すること)、縁覚の観業、通教の観業、別教の観業について述べ、これらはすべて思議の境であり、今の用いるものではないと述べている。
これに対して、不思議の境については、『法華経』提婆達多品の「深く罪福の相に達す」(大正9、35中28)の解釈をめぐって説いているが、最後の円教の理解については、浅い業そのままが深い業であるとする円教の理解が「深く罪・福の相に達す」と名づけることができると述べている。
一念が生起することを観察すると、十界を備えることを十方と名づけ、十方は依報であり、十界は正報であるとされる。このような法は、一念の業であるので、一業が一切業であると名づける。業を法界と名づけ、諸法の都であるので、不思議境と呼ぶとされる。
次に、深く業境の善悪がともに都とすることを理解する以上、すぐに慈悲を起こすとされる。次に、業が空、仮、中道であることに、心を安んじることが説かれる。
次に、三世にわたって推しはかり考え、横と縦について探求すると、善悪のさまざまな業はともに実体として捉えることはできず、究極的に清浄である。業に業を作ること、受けることがなく、三諦はともに静寂であるので、破法遍と名づけるといわれる。次の識通塞から無法愛については簡潔に述べられているが、説明を省略する。
業相境の末尾にも、大車の比喩によって結論づける段があり、そこには次のように説かれている。この大乗の十観は、無量の煩悩がなく清浄である果報を得、最高の報いを獲得し、自在の業を獲得し、罪・福を深く理解し、究極的に汚染することがないので、清浄と名づけるが、これが法身である。根本に戻り根源に帰り、智慧によって照らすことが完全で究極に達するので、無上と名づけるが、これが報身である。身を九道に示し、あらゆるものの姿をあらわし示すので、自在と名づけるが、これが応身である。このような三身は、とりもなおさず大乗であり、乗り物が高く広く、まっすぐに道場に到達するとされる。
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