摩訶止観入門」タグアーカイブ

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第82回 正修止観章㊷

[3]「2. 広く解す」㊵

(9)十乗観法を明かす㉙

 ⑥破法遍(10)

 (4)従空入仮の破法遍②

 十乗観法の第四「破法遍」のなかの従空入仮の破法遍の説明を続ける。この段は、入仮の意、入仮の因縁、入仮の観、入仮の位の四段に分かれるが、今回は、第三の入仮の観が、病を知る、薬を知る、薬を授けるという三段に分かれるなかの薬を知る段落から説明をする。

 ③入仮の観(2)

 (b)薬を識る

 冒頭に、病の様相が無量であるので、薬も無量であると述べ、この薬を世間の法薬、出世間の法薬、出世間上上の法薬に三分類している。出仮(入仮)の菩薩は、この三種の薬を明確に知って、衆生を救済しなければならないとされる。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第81回 正修止観章㊶

[3]「2. 広く解す」㊴

(9)十乗観法を明かす㉘

 ⑥破法遍(9)

 (4)従空入仮の破法遍①

 すでに述べたが、「広く破法遍」を明かす段落は、竪の破法遍、横の破法遍、横竪不二の破法遍の三段落に分かれている。最初の竪の破法遍を説く段は、さらに従仮入空(空観)の破法遍、従空入仮(仮観)の破法遍、中道第一義諦に入る(中観)破法遍の三段落に分かれている。これまで従仮入空の破法遍について説明してきたが、ここからは従空入仮の破法遍を説明する段である。この段は、入仮の意、入仮の因縁、入仮の観、入仮の位の四段に分かれる。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第80回 正修止観章㊵

[3]「2. 広く解す」㊳

(9)十乗観法を明かす㉗

 ⑥破法遍(8)

 (4)従仮入空の破法遍⑦

 ⑥四門の料簡

 この段では、蔵教・通教・別教・円教の四教それぞれの有門・無門(空門)・亦有亦無門・非有非無門の四門について述べている。ここでは円教の四門についてのみ簡潔に説明する。
 まず、「円教の四門は、妙理、頓説なれば、前の二種に異なり、円融無礙(むげ)なれば、歴別(りゃくべつ)に異なり」(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。以下同じ。大正46、75上20~21)と述べている。つまり、円教の四門は、絶妙な理、円頓の説であるので、前の蔵教・通教の二種とも相違し、円かに融合し障礙がないので、別教の段階的なものとも相違すると指摘している。
 そのうえで、有門については、「見思の仮を観ずるに、即ち是れ法界にして、仏法を具足す。又た、諸法は即ち是れ法性の因縁にして、乃至、第一義も亦た是れ因縁なり」(同前、75上21~23)と述べている。つまり、見仮・思仮を観察すると法界であり、仏法(仏のすぐれた特質)を備える。さらに、諸法は法性の因縁であり、ないし第一義も同様に法性の因縁であると述べている。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第79回 正修止観章㊴

[3]「2. 広く解す」㊲

(9)十乗観法を明かす㉖

 ⑥破法遍(7)

 (4)従仮入空の破法遍⑥

 ④空観(4)

 今回は、十乗観法の第四「破法遍」の続きである。破法遍の段落のうち、前回は「広く破法遍を明かす」のなかの「竪の破法遍」・「従仮入空の破法遍」・「見仮従り空に入る観」について紹介した。「従仮入空」の「仮」には、見仮と思仮の二種があるので、「従仮入空の破法遍」の段は、「見仮従り空に入る観」、「思仮を体して空に入る」、「四門の料簡」の三段に分かれている。今回は、「思仮を体して空に入る」、「四門の料簡」について紹介する。 続きを読む

『摩訶止観』入門

菅野博史
菅野博史

第78回 正修止観章㊳

[3]「2. 広く解す」㊱

(9)十乗観法を明かす㉕

 ⑥破法遍(6)

 (4)従仮入空の破法遍⑤

 ④空観(3)

 以下、具体的に老子・荘子と釈尊との比較をテキストに沿って紹介する。この箇所は、『輔行』によれば九項目に分類されているので、これにしたがうのが便利であろう。また、解釈についても『輔行』を参照する。ただし、この比較は、智顗の時代までに中国に伝来した仏教の総体と老子の『道徳経』五千文とを比較したものも含まれており、公正な比較とは言えないと思うが、なかには興味深い論点もある。 続きを読む