連載エッセー「本の楽園」 第92回 tanbunとは

作家
村上政彦

 今回の本は、『kaze no tanbun 特別ではない一日』である。キーワードは、「tanbun」だろう。日本語表記にするなら、おそらく「短文」。これを、どのように解釈するかが、まず、ポイントになる。
 短い文章――短篇小説、エッセイなど、普通に思い浮かべるのは、そのあたりだろうか。編者は、西崎憲。福岡の出版社・書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)から発刊された文芸誌『たべるのがおそい』の編集長を務めた人物だ。
 もともと作曲から出発し、翻訳をするようになり、のちに小説や短歌を書くようになった。『たべるのがおそい』が話題になったのは、掲載作から芥川賞の候補作が選ばれたことが大きい。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第91回 瓦礫の未来

作家
村上政彦

 子供のころ、いくつか憧れた仕事があった。まず、船乗りと建築家だ。広い海に出て世界をめぐるのは、何とも愉快な仕事におもえた。それから自分の好きなように道路を引き、橋を架け、ビルを建てるのも、同じように愉快におもえた。
 ところが、僕にはできないと分かった。僕には、色弱という生まれつきの眼の異常がある。赤や黄色やはっきりとした色の見分けはつくのだが、微妙な色の違いがわからないのだ。
 船乗りは通信に手旗信号を使う。その色の見分けがつかないといけない。建築家は電気の配線などを指示する。やはり、その色の見分けがつかないといけない。僕にはそれができないのである。
 このことを知ったとき、子供なりにショックだった。母親に不満を述べた。そうしたら、彼女は、ふん、と鼻先で笑って、産んでもらっただけありがたいとおもえ、とうそぶいた。僕は驚いて言葉を失った。 続きを読む

新型コロナウイルス特集⑧――国民が見ているのは「実現力」

ライター
松田 明

内閣支持率が上昇に転じる

 安倍首相が緊急事態宣言の延長を発表してから最初の世論調査が各社から出た。
 当初、5月6日までとしていた期間を延長せざるを得なくなったことについて、安倍首相は5月4日の会見で国民に「お詫び」を表明した。
 この「延長」決定については、JNNの月例の世論調査(5月9日~10日)で、

評価する  81%
評価しない 14%
答えない・わからない 5%

と、8割が評価。また内閣支持率については、

支持する  47・3%(+4・1)
支持しない 50・8%(-1・9)

と、支持率が上昇。日本経済新聞や産経新聞の調査でも、同じように支持率が上がり不支持率が下がっている。 続きを読む

新型コロナウイルス特集⑦――さらなる支援策の強化を

ライター
松田 明

急がれる賃料への支援策

 新型コロナウイルスの緊急経済対策などを盛り込んだ補正予算案が、祝日返上で4月29日の衆議院で可決。30日の参議院本会議で可決・成立した。
 これによって、一律10万円の現金給付などが早速5月から始まる見通しになった。緊急経済対策の事業規模は117兆円にのぼる。

 賃料の支払いが困難な事業者への支援をめぐって、自民党は30日に作業チームを立ち上げ、無利子・無担保の融資を活用したうえで、賃料を助成する制度について検討を進めることにしています。
 公明党は事業者が賃貸借契約を維持できるよう支援するほか、地方自治体が給付金を支給した場合、国が財政的な措置を講じることを検討しています。(「NHK NEWSWEB」4月30日)

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連載エッセー「本の楽園」 第90回 地球を見る

作家
村上政彦

 アポロ11号が月面に着陸したのは1969年の夏のことだった。僕の記憶には、我が家の映りの悪いモノクロのTVの、アームストロング船長が、宇宙船を降りて月面に降り立った映像が残っている。
 人類初めて月に立つ――とメディアや大人たちは騒いでいたが、僕はまだ子供のことだから、それほど深い感慨を持ったとはおもえない。「へー、これが月の表面か」とか、「宇宙服ってけっこう重そうだな」とか、おそらくそんな幼稚な感想だっただろう。
 もう少し成長して、宇宙の起源だとか、太陽系や銀河系の大きさだとか、そんなことに興味が及ぶようになると、少しばかり宇宙というものの存在が分かり始めてきた。 続きを読む