『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第74回 正修止観章㉞

[3]「2. 広く解す」㉜

(9)十乗観法を明かす㉑

 ⑥破法遍(2)

 (4)従仮入空の破法遍①

 では、最初の従仮入空の破法遍の段について説明する。この段も「先に見仮従り空に入り、次に思仮従り空に入り、後に四門もて料簡す」(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅱ)、660頁)とあるように、さらに三段に分かれる。仮を見仮と思仮に分けていることがわかる。 続きを読む

荒唐無稽なSNSデマ――池田会長の出自めぐる虚構

ライター
松田 明

東京都大田区「大森ふるさとの浜辺公園」

「リポスト」しただけでも賠償命令

 SNSなどネット上の「デマ」「誹謗中傷」に対して、司法の厳しい判断が続いている。

 コロナ禍では、感染対策としてマスクの着用やワクチンの接種がWHO(世界保健機構)からも全世界に推奨された。
 ところが、陰謀論にからめてマスク着用やワクチン接種に反対する人々が一部に発生。SNS上で誤情報を拡散するばかりか、感染対策に従事する専門家や医師らに対し、激しい中傷批判を繰り返すアカウントも続出した。

 感染防止への情報発信を続けていた忽那賢志 ・大阪大学教授(感染制御学)も、そうした誹謗中傷にさらされた1人。「泣き寝入りしては、次のパンデミックが起きたときに後進の医師たちも被害に遭う」と考えた。

 22年12月、特に悪質な投稿約50件について、発信者情報の開示を大阪地裁に申し立てた。全ての開示が認められ、40人ほど発信者を特定。約半数とは、解決金の支払いを条件に和解が成立した。(「読売新聞オンライン」2024年2月3日

 2023年7月、和解に応じなかった投稿者17人を提訴。うち特に悪質だった3人に対し、大阪地裁は同年12月、計約70万円の損害賠償を命じる判決を言い渡している。 続きを読む

書評『ヒロシマへの旅』――核兵器と中学生の命をめぐる物語

ライター
本房 歩

作者が子どもたちに語ったこと

 本書に収められた2編の小説の作者は、創価学会第3代会長であり創価学会インタナショナル会長であった池田大作である。
 ただし最初に明確にしておきたいのは、この2編はもちろん、池田が子どもたちに書き綴り贈ってきた絵本や物語といった文芸作品からは、特定の宗教的ドグマや価値観がいっさい排除されていることだ。

 あらゆる宗教運動にとって、次世代への信仰の継承が重要な問題であることは言うまでもない。
 しかし、池田が若い命に対して指針としたのは、①健康でいこう ②本を読もう ③常識を忘れないでいこう ④決して焦らないでいこう ⑤友人をたくさんつくろう ⑥まず自らが福運をつけよう ⑦親孝行しよう(未来部7つの指針)といったことである。
 とりわけ、いずこの国においても池田が中高生の世代に繰り返し伝えてきたのは、「友情」「信念」「正義」「平和」といったことがらについて、世界の名著や偉人の生き方を通して思索し、これらを大切にする人間に育ってほしいという願いであった。

 本書の2編の小説のうち、『ヒロシマへの旅』は1986年8月から87年2月まで、『フィールドにそよぐ風』は1988年11月から89年3月まで、いずれも創価学会中等部の当時の機関紙『中学生文化新聞』に連載されたものである。
 いずれも1996年に『池田大作全集』第50巻に収録されたが、本書はこれを底本として著作権者の了解のもと一部修正し、このほど第三文明社から刊行された。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第73回 正修止観章㉝

[3]「2. 広く解す」㉛

(9)十乗観法を明かす⑳

 ⑥破法遍(1)

 今回は、十乗観法の第四「破法遍」について紹介する。「破法遍」の段は巻第五下から巻第六下まであり、実に一巻半分の長いものである。それだけに、この段の科文は非常に複雑煩瑣であるので、ここでは便宜的な科文(完全には体系的でない)を設け、読者の便に供する。これでもやや複雑であるが、以下の通りである。なお、科文に付した番号は、「破法遍」のみに当てはまる番号であり、『摩訶止観』全体に適用する番号ではない。もし『摩訶止観』全体の番号とする場合は、番号の前に、「5.7.2.8.1.2.1.1.1.1.4.」を付けなければならない。( )の番号は、『大正新脩大蔵経』巻第四十六巻の頁・段・行である。 続きを読む

書評『アレクサンドロスの決断』、『革命の若き空』(同時収録)

ライター
本房 歩

収録された2編の小説

 本書は、古代ギリシャの王アレクサンドロス(アレクサンドロス3世)と、18世紀フランスの最高峰の詩人と称えられるアンドレ・シェニエという実在の歴史的人物を、それぞれ主人公とした2編の小説を収録したものである。

 作者は、池田大作。言うまでもなく池田は創価学会第3代会長、創価学会インタナショナル会長として、世界的な在家仏教の民衆運動を率いた宗教者であるが、他方で「世界桂冠詩人」などの称号を持ち、『人間革命』『新・人間革命』など膨大な文芸作品と言論を残した文学者としても知られている。

『アレクサンドロスの決断』は、1986年7月から87年3月まで、当時の創価学会高等部の機関紙『高校新報』に連載された。また『革命の若き空』は1988年11月から89年8月まで、同紙に連載された。
 集英社から単行本化されたのち、『池田大作全集』第50巻に収録されたが、いずれも今日では版が絶えている。
 そこで、あらたに全集を底本として第三文明社からこのほど新装再刊された。 続きを読む