フランスのセクト対策とは(下)――ヨーロッパでの創価学会の評価

ライター
松田 明

典礼法人としてフランスSGIを承認

 フランスにおける宗教法の権威であり、フランスSGIの法人機構の整備・統合にも携わってきたグザヴィエ・デルソル弁護士はインタビューに対し、

 2006年、最後となった第4次国会セクト報告書で、ついに、「創価学会は、その教義においても、事実関係においても、いかなるセクト的逸脱に該当する行為は存在しない」と断言されるまでになったのです。
 この点は本質的に重要です。というのは、創価学会には、何ら批判できるような教義を含んでいないと「議会」が認めたという点であります。
 その後は、学会に関して、いかなる国会の報告書でも言及されなくなり、「セクト」と同一視される教団と見なされていません。(『創価新報』2022年9月21日付)

と明言している。 続きを読む

フランスのセクト対策とは(中)――首相通達で廃止されたリスト

ライター
松田 明

フランスの「セクト規制法」とは

 フランスでのセクト対策の、その後の経過をさらに追っていこう。
 1996年にセクト関係省監視室が設置された。だが、これは年次報告書を1回出しただけで終わり、1998年10月、新たに省庁横断の関係省セクト対策本部「ミルス」(MILS/Mission interministérielle de la lutte contre les sectes)が設置された。本部長に就任したのは、あの問題だらけの第1次国会報告書を作った元社会党議員アラン・ヴィヴィアンである。
 ヴィヴィアンは当時、民間の有力な反セクト団体「ロジェ・イコール・センター」の会長をつとめていた。
 1999年6月には、やはりセクト対策の中心的人物だった共産党議員のジャン=ピエール・ブラールが「セクトと金」という報告書を出している。
 2001年6月、フランス議会は「セクト規制法(人権および基本的自由を侵害するセクト的団体の防止および取り締まりを強化する2001年6月12日の法律)」を制定した。
 これが最近、日本でしばしば取り上げられるフランスの「反セクト法」だ。 続きを読む

フランスのセクト対策とは(上)――創価学会をめぐる「報告書」

ライター
松田 明

「非カトリック的」なものへの侮蔑

 安倍元首相の銃撃事件に端を発し、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)をめぐる批判が再燃した。
 これに関して、フランスの「反セクト法」のような、いわゆる「カルト」を規制する法律を日本でも導入すべきだという声が、立憲民主党などからあがってる。だが、法学者のなかには慎重論が強い。
 一部メディアやネット上では、フランスのセクト対策に関して、あいかわらず正確さを欠いた言説が溢れている。人々の漠然とした不安に便乗して党派性に立ったヒステリックな声が飛び交い、デマがデマを増幅させるという状況は、決して望ましいものではない。
 そこで、フランスにおけるセクト対策の経緯と実態を、あらためて検証しておきたいと思う。 続きを読む

芥川賞を読む 第21回『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周

文筆家
水上修一

目の見えない老婆の踊るダンスに浮かびあがる輝きと寂寥感

藤沢周(ふじさわ・しゅう)著/第119回芥川賞受賞作(1998年上半期)

 W受賞となった第119回芥川賞受賞作の一つは、藤沢周の「ブエノスアイレス午前零時」だった。それまでの藤沢周は、「ゲルマニウムの夜」の作者・花村萬月と共通する荒々しい力が持ち味だと思っていたが、本作品は、以前芥川賞候補となった3作品とは異なる静謐な空気を漂わせている。
 
――主人公のカザマは、東京を離れて雪深い故郷に戻り、冴えない温泉宿の従業員として働いていた。朝、源泉で温泉卵を作ることから始まる退屈な日々に埋没する生活を送っていた――。 続きを読む

書評『もうすぐ死に逝く私から いまを生きる君たちへ』――夜回り先生 いのちの講演

ライター
本房 歩

夜の世界の闇に沈んでいく子どもたち

 夜の街を見回っては、徘徊し薬物や売春に走ろうとしている少年少女たちに声をかける。著者が、それまで横浜でも名門校といわれていた高校の教諭から、全国最大規模の定時制高校の教諭へと移ったのは30年前のことだ。
 今日の定時制高校は、いじめなどさまざまな理由で昼間の高校に行かない選択をした子どもが約半数。ほかに家計を支えるために働きながら学ぶ人や、都市部だと外国から来て日本語が不自由だけれども向学心のある子どもたちなどが占め、むしろ多様な学びを支える場になっている。
 だが、著者が赴任した当時の、その横浜の定時制高校は、口の悪い市民が「横浜市立暴力団養成所」とまで呼ぶほど荒れた場所だった。

入学した子どもたちの半数近くが学校を辞めていき、夜の世界に沈んでいく。そんな学校でした。(本書『もうすぐ死に逝く私から いまを生きる君たちへ』

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