連載エッセー「本の楽園」 第107回 アジアをつなぐ本屋たち

作家
村上政彦

 僕の作家としての出発は、小学生のとき、町の本屋で始まった。小さな本屋の文学書がなければ、小説家になろうなっておもわなかっただろう。そして、この本屋は、地方の片隅から、広い世界に開かれた窓だった。
 僕は、この窓から、フランスやイギリスを見、ロシアを知り、アメリカに行った。小さな本屋の、小さな棚には、ヨーロッパやアメリカの、多様な文学書があった。僕はそれを手に取って、それぞれの国の人々と出会い、その国の歴史や風土を学んだ。
 いまはインターネットがある。ノートの大きさほどの端末さえあれば、さまざまな情報が手に入る。グーグルアースを使えば、書斎にいて、世界のどこでも見ることができる。しかしそれは本を読むことでもたらされる体験とは、別のものだ。 続きを読む

ワクチンの円滑な接種へ——公明党が果たしてきた役割

ライター
松田 明

厚労相が国会で明言

 2月12日午前、米国ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチンの第1便が、ベルギーのブリュッセルから成田空港に到着した。
 厚生労働省は14日に特例措置として、このファイザー社製ワクチンを承認。17日から日本国内での先行接種がはじまった。21日には第2便も到着している。
 一方で、実際に接種にあたる自治体などの現場からは、医療従事者の人員確保の問題や、ワクチン供給量や時期などの情報不足、国から補助される費用の上限などに不安の声も出ていた。
 医療従事者が遠隔地まで訪問する場合や、接種を受ける側が遠隔地まで移動しなければならないケースでは、移動費用が大きな負担になる。
 あるいは離島など人口規模の小さなコミュニティで教条的に優先順位どおりの接種をすれば、コストが何重にもかかるうえ、ワクチンが無駄になりかねない。
 2月17日の衆議院予算委員会集中審議では、公明党の中野洋昌議員が円滑な接種に向けて、

必要な費用を国としてしっかり支援することをはっきり示してほしい

と厚労相に要求した。 続きを読む

長嶺将真物語~沖縄空手の興亡 第12回 空手の琉球処分(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

長嶺が方針転換した背景

 今から40年前の1981年8月、沖縄空手界は2つに分裂した。
 この年、空手が初めて国体の正式種目となり、滋賀国体(夏季)で組手と型の競技が行われた(同年9月)。6年後の87年にはその国体が沖縄に回ってくる。空手発祥の地・沖縄で開催される国体において、地元沖縄からだれも選手が出場しないという事態は、県政に関わる者からすればありえない選択だった。
 当時の県知事は西銘順治(にしめ・じゅんじ 1921-2001)。保守系で1期目の半ば。90年に革新系の大田昌秀(1925-2017)に敗れるまで、西銘は3期12年を務める。87年の沖縄海邦国体を開催する責任者となったのもこの西銘だった。 続きを読む

なぜ立憲民主は伸びないのか——社会党化した野党第一党

ライター
松田 明

〝敵失〟のなかで迎えた党大会

 さる1月31日、立憲民主党はオンラインで「2021年定期大会」を開催した(「立憲民主党」HP ニュース1月31日)
 昨年9月、同党はかつて〝ケンカ別れ〟して犬猿の仲であった国民民主党とふたたび合流。150人を超す大所帯にこぎつけることができた。
 11月以降、新型コロナウイルスの感染拡大があきらかに第3波を迎えると、当初は高かった菅内閣の支持率が急降下。
 Go To トラベルキャンペーンの全国一時停止を発表した夜に、菅首相や自民党の二階幹事長らが銀座のステーキ屋で多人数の会食をしていたことが発覚すると、12月下旬には内閣不支持の数字が支持を上回った。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第106回 ニートの覚悟

作家
村上政彦

 今の世の中は生きづらすぎる。自分がわかいときはものはなかったが、こんなに窮屈じゃなかった。
 人にはそれぞれ、自分に合った履き物がある。
 なのに、今は既製品の靴に、無理に足を押し込んで履いている。
 だから、歩いているうちにすぐ足が痛くなる。それじゃダメだ。
 靴に足を合わせるんじゃなく、足に靴を合わせなきゃいけない。
 昔わらじを自分で編んだように、自分に合わせた履き物を作る。
 そうすれば、足は傷つかず、どこまでも歩いていける。
 自分専用のわらじをじっくり作る、そのための時間と場所が必要だ

 これは和歌山県の山中にニートやひきこもりの居場所をつくったNPO法人『共生舎』の代表・山本さんの言葉だ。 続きを読む