コラム」カテゴリーアーカイブ

「国保逃れ」を維新が認める――どの口で「改革」を語るのか

ライター
松田 明

「維新の議員もやってるから問題ない」

 本来、議員となった者たちが全額自己負担で納付しなければならない国民健康保険料と国民年金。それを、わずかな報酬の社団法人の「理事」に就任することで、安い社会保険料で済ませるという法の抜け穴を使った悪質な手口。

 こうした手口を自身の「ビジネス」として作り上げ、宣伝・勧誘していた者も日本維新の会の関係者。自分の支払う社会保険料を減らしたくて、その「理事」に就任していた者も日本維新の会の現職議員。
 日本維新の会に浮上した「国保逃れ」について、1月6日の朝日新聞が生々しい記事を掲載している。

 大阪府内に住む30代の個人事業主の男性に、スーツ姿の男性が近づき、国民健康保険料(国保料)の話を切り出してきた。
 この事業主が男性の名刺に目を落とすと、こんな言葉が躍っていた。
「個人事業主向け社会保険サービス」
「いくら稼ごうが国民保険+国民年金=34000円/月固定」
 事業主は普段、上限額いっぱいの国保料を納めている。「正直、国保料は高い」と不満をもっていたが、保険料が低減されるような文言をみて直感的に「ほんまにそんなことができるんか」と怪しんだ。
 そんな気持ちを感じ取ったのか、男性はこう語ったという。
「維新の議員さんもやっていますから問題ないですよ」(『朝日新聞』1月6日

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『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第107回 正修止観章 67

[3]「2. 広く解す」 65

(10)煩悩境②

 (2)別釈②

 ②「煩悩の起こる因縁を明かす」

 この段では、煩悩が生起する原因を三種取りあげている。一方、煩悩が生起する様相には四種があり、深いが鋭くないこと、鋭いが深くないこと、深くもあり鋭くもあること、深くもなく鋭くもないことである。この第四の深くもなく鋭くもない様相は、通常の果報(五陰)の惑の様相の所属であり、ここの煩悩境で扱うものではないといわれる。第三の場合(深くもあり鋭くもあること)は、煩悩が生起し動くのが普通と異なり、煩悩境の煩悩が生じる様相に所属する。「深い」というのは、煩悩が生じるとき、深く重大であり禁止することができず、あらゆる境についていよいよ増大し、遮り制止することがないことをいう。「鋭い」というのは、しばしば起こり、起こるといつも深く重大であることをいう。第二の鋭いが深くないこと、第四の深いが鋭く【利】ないことについては、これに準拠すればわかるであろうといわれる。 続きを読む

書評『公明党の決断』――佐藤優VS斉藤鉄夫

ライター
本房 歩

「連立離脱」を受けて佐藤氏が提案

 2025年10月10日、日本の政治史に刻まれる出来事が起きた。公明党が1999年10月以来、3年3カ月の民主党政権時代を除いて、自民党と組んできた「連立」関係に〝ひとつの区切り〟をつけたのだった。
 このタイミングで、作家の佐藤優氏から公明党の斉藤鉄夫代表に対談を呼びかけて生まれたのが本書『公明党の決断』である。

 本書は自公連立離脱に関する重要な歴史的証言であるとともに、創価学会の価値観を命懸けで現実の政治に活かそうとして闘っている斉藤鉄夫という誠実な人の魂の記録として特別な意味を持っている。(佐藤優氏による「まえがき」)

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芥川賞を読む 第66回 『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子

文筆家
水上修一

孤独と老いに向き合う東北弁の老婦人

若竹千佐子(わかたけ・ちさこ)著/第158回芥川賞受賞作(2017年下半期)

老いを思弁する

 芥川賞作家の受賞年齢は、だいたい30~40代が多いのだが、ダブル受賞となった第158回は、前回取り上げた「百年泥」の石井遊佳が54歳、今回、取り上げる「おらおらでひとりいぐも」の若竹千佐子が63歳と、いずれもある程度の年配者だったのがひとつの特徴だった。
 若竹は、55歳の時に夫に先立たれ、長男のすすめで小説講座に通い始めたのが小説に取り組むきっかけだった。2017年に同作で第54回文藝賞を受賞してデビューし、翌年2018年に芥川賞を受賞。2020年には田中裕子の主演で映画化もされている。まさに、人生どこでどうなるか分からない。 続きを読む

書評『「三国志」を読む』――正史から浮かび上がる英雄たちの実像

ライター
小林芳雄

正史『三国志』とは

 日本で『三国志』というと、明代(1368-1644年)に書かれた小説『三国志演義』(以後、小説『演義』)が圧倒的によく知られている。しかし民間伝承を豊富にとりこみ編集したこの作品は、中国の大衆の心情や文化を伝えるものではあるが、誇張や伝説が多く紛れ込んでおり、人物の歴史的実像を伝えているとはいいがたい。
 著者の井波律子氏(1944-2020年)は、正史『三国志』と『三国志演義』を翻訳したことで知られている。その他にも『水滸伝』や『世説新語』などの個人訳を成し遂げ、中国古典に関する多数の著書がある。
 本書は、「正史『三国志』を読む」というテーマで行われた4回の講座を加筆、編集したものである。さらに岩波現代文庫収録にあたり、2編の文章が増補されたものだ。小説『演義』の骨子となった歴史書である正史『三国志』を読み解きながら、波瀾万丈の時代を駆け抜けた英雄たちの実像に迫っていく。

 陳寿は生きている間はとかく悪口を言われどおしで、挫折つづきの不幸な歴史家でしたが、その著述はこのようにして時間を越え、脈々と生命を保ったのですから、以て瞑すべし(※)というべきでしょう。(本書50ページ、注釈は編集部)

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