コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第77回 人の物語

作家
村上政彦

 フィリピンのマニラにある橋の下で、著者の「私」はメルセディータと出会う。彼女はそこに家を構えて暮らしていた。橋の下で暮らしているのは100家族ほど。電気は違法に引いていたが、電力会社に止められ、ろうそくの炎が唯一の家の中の灯だ。
 もともと「私」は教師をしながら、貧困層の人々を支援するボランティアに携わっていた。あるときからフルタイムのボランティアになった。メルセディータと出会って、彼女の半生を記録し始める。

 メルセディータ・ビリャル・ディアス=メンデスは、1965年に生まれた。両親は農場で働いていた。6人きょうだいの末っ子だった。貧しい暮らしで、おもちゃがひとつもなかった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第76回 家族の光

作家
村上政彦

 家族新聞をつくっているという話を、たまに聞くことがある。実際、僕の知人は2人の子供が小学生のとき、父母も加わって新聞を製作していた。記事の一部を読ませてもらったことがあるが、母親のダイエットが失敗する逸話などがあって、とても微笑ましかった。
 こういう営みが家族の絆を強くすることは推測できる。どの家庭でもそういうことをすれば、家族の心のすれ違いなどは、最小限にすることができるのではないか、とおもうが、なかなか実行するのは難しい。
 今回、取り上げる『詩集「三人」』は、家族詩集の試みだ。詩を寄せたのは、金子光晴、妻の森美千代、息子の森乾の、文字通り3人。 続きを読む

2019参院選をふりかえる(下)――ポピュリズムの危うさ

ライター
松田 明

「自分ファースト」の野党

 あれだけ「年金制度」と「消費税」で国民の不安を煽り立てながら、野党は有権者の票を集めることができなかった。
 投票率は過去2番目の低さとなったうえ、共同通信の出口調査では10代から70代以上までの全世代で、与党に投票した人が上回る結果となった。
 2012年の民主党政権下で「税と社会保障の一体改革」をおこなった張本人たちが、今になって声高に年金不安や消費増税反対を叫ぶ無責任な姿を、有権者は冷ややかに見ていたのだろう。 続きを読む

2019参院選をふりかえる(上)――バランスを求めた有権者

ライター
松田 明

 令和初の国政選挙となった第25回参議院議員選挙が終わった。
 投票が締め切られた午後8時ほぼジャストに、NHKの開票速報がまず公明党の山口那津男候補(党代表/東京選挙区)の「当確」を発表。各メディアは出口調査の結果から早々に「与党勝利」と報じた。
 最終的に自民党・公明党の与党が、改選議席の過半数(63)を上回る71議席を獲得し、安定した政権基盤を維持。
 対する野党は、立憲民主党が8議席増の17議席となったが、国民民主党は2議席減の6議席。共産党も1議席減の7議席にとどまった。
 選挙結果について、いくつかの視点から検証してみたい。 続きを読む

2019参院選直前チェック④終――政治を変える現実策とは

ライター
松田 明

バラ色の公約は守られたか

 2009年8月の総選挙で1政党としては戦後最多の308議席を獲得して政権の座に就いた民主党。
 政権交代の実現に喝采し、期待した国民も多かった。
 では、民主党が2009年8月の総選挙で掲げた公約は、政権の座にあった3年4ヵ月のあいだで、どれだけ達成されたのだろうか。
 これについては、当時の民主党自身が馬淵澄夫政調会長代理(当時)の作業チームによって検証し、結果を公表している。

 約160の政策を「実現」「一部実施」「着手」「未着手」の4分類で評価。「実現」は約3割にとどまった。(『日本経済新聞』2012年10月26日

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