投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

わたしたちはここにいる:LGBTのコモン・センス 第1回 相方と仲間:パートナーとコミュニティ

山形大学准教授
池田弘乃

以下、私が示すのは単純な事実と平明な主張、そして常識である。読者にあらかじめお願いしたいことがある。第一に、固定観念や先入観を捨てて、理性と感情を働かせて自分で判断をくだしていただきたい。第二に、人間としての真の品性を身につけていただきたい。いや、保っていただきたい。第三に、現在のことにとどまらず未来にまで視野を大きく広げていただきたい。(トマス・ペイン『コモン・センス』、角田安正訳、光文社、2021年、52頁)

「性」に関する常識をアップグレード

 あるカップルのことをお話ししたい。1987年生まれ、同い年の2人はつきあって5年目。1人はシステムエンジニアとして働き、もう1人は介護施設に勤めている。喧嘩もするが仲の良いこのカップルには夢がある。2人で子どもを育てたいという夢が。
 しかし、この夢へのハードルはかなり高いのが日本の現状である。なぜなら、この2人は男性同士のカップルだから。 続きを読む

菅政権この1年の成果――圧倒的に実績残した政権

ライター
松田 明

次々に実施した改革

 菅首相が自民党総裁選挙に出馬せず、9月末の総裁任期満了をもって退任することになった。
 史上最長の長期政権となった安倍前首相のもとで、菅氏も歴代最長の任期となる7年8カ月、官房長官をつとめた。安倍前首相が持病の悪化で辞任。自分が首相の座に就くことなど、おそらく菅氏自身も想像していなかったのではないか。
 長引くコロナ禍と、オリンピック・パラリンピック東京大会の開催という難局。五輪への評価も政権の浮揚にはつながらず、無派閥の首相は自民党内で打つ手を失った。
 安倍前首相がテレビ映えする華やかさをもっていたのに対し、地味でメディア対応がお世辞にもうまいとは言えなかった点も、コロナ禍での支持率低迷に影響しただろう。
 ただし、首相個人への好悪とは別に、わずか1年の在任中に、政権としてきわめて多くの実績を残したことは率直に評価されなければならない。 続きを読む

長嶺将真物語~沖縄空手の興亡 番外編① 稲嶺惠一元知事に聞く

 1998年から2006年まで2期8年にわたり沖縄県知事を務めた稲嶺惠一氏は、知事時代の1999年に2回目となる沖縄伝統空手道世界大会を開催し、2005年に「空手の日」を制定したことで知られる。父親の一郎氏は早稲田大学の学生時代、東京で船越義珍に師事した空手の有段者であり、稲嶺氏自身は空手をしなかったものの、沖縄県空手道連合会の第2代会長を務めた(知事選出馬のため任期途中で交代)。稲嶺氏は自身の政治回想録『我以外皆我が師――稲嶺惠一回顧録』(琉球新報社)で、「私は長嶺将真さんを尊敬していた」と記している。現在も「株式会社りゅうせき」(旧社名:琉球石油株式会社)の参与として仕事を続ける元知事に話を伺った。(取材・2020年10月) 続きを読む

野党共闘の先の悪夢――共産党との連合政権

ライター
松田 明

4野党の政策協定を報じる『読売新聞』(9月9日付)

誰が辺野古移設を決めたのか

 9月8日、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の野党4党が、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」を介する形できたる衆議院選挙への政策協定を結んだ。
 4野党の党首が署名したのは「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」と題するもの。
 その「共通政策」のなかには、「アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」「沖縄辺野古での新基地建設を中止する」「消費税減税」「原発のない脱炭素社会を追求する」といった項目も並ぶ。
 立憲民主党の枝野代表は、日本共産党の志位委員長、れいわ新選組の山本太郎代表らと共に、署名した共通政策提言と記念撮影に収まった。 続きを読む

芥川賞を読む 第9回 『犬婿入り』多和田葉子

文筆家
水上修一

独特の文体で、奇妙でリアルな世界を描き出す

多和田葉子著/第108回芥川賞受賞作(1992年下半期)

引き込まれる独特の文体

 第108回芥川賞を受賞した多和田葉子は、「村上春樹よりもノーベル賞に近い」とも言われる作家だ。実際、2016年にはドイツの文学賞「クライスト賞」を受賞し、2018年には米国で最も権威のある文学賞のひとつとされる「全米図書賞」を受賞している。国内でも、2000年に「泉鏡花文学賞」、2003年に「伊藤整文学賞」と「谷崎潤一郎賞」、2011年に「野間文芸賞」、2013年に「読売文学賞」を受賞し、2020年には「紫綬褒章」を受章している。
 そんな彼女が32歳の時に芥川賞を受賞した作品が「犬婿入り」だ。『群像』(1992年12月号)に掲載された77枚の短編である。 続きを読む