漫画読みになったのは小学校に入るころだった。当時は漫画雑誌の創刊が相次いで、『少年マガジン』『少年サンデー』『少年キング』『少年ジャンプ』『少年チャンピオン』と週刊誌だけで5誌もあった。
僕はすべて購読していた。発売日には、学校から帰ってまっすぐに本屋へ。すると1台のトラックが店先に停まって、荷台からビニール紐で結んだ漫画雑誌の束を下ろす。馴染みの本屋のおじさんが鋏で紐を切って、1冊手に取ると、ぱんぱんと埃を払う。
「はい、村上君」
「ありがとう」
僕は掌ににぎりしめて温かくなっている硬貨を渡して、漫画雑誌を受け取る。表紙をめくる。ぷんとインクの匂いが立つ。歩きながらページを繰ると、指先が青いインクで染まる。僕は家にたどりつくまでに、連載の一話を読み終わっている――。
いまでもそのころのことは、よく憶えている。あんなに夢中になって漫画のなかへ入っていけたのは、名作がそろっていたからだろうか。それとも子供だったからだろうか。その後、だんだん関心が文学に移って、あまり漫画は読まなくなった。 続きを読む
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