本の楽園」タグアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第81回 世界は言葉でできている

作家
村上政彦

落書き禁止 「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」 違反者は、処罰されます。 見つけた人は警察に通報してください。/おおむらさきつつじ つつじ科/ここはみんなの公園です。うらに書いてあるきまりを守って、みんなでなかよく遊びましょう。/NO NIKE!! ナイキ 悪/ゴミは持ちかえりましょう/水を大切にしましょう/公園はみんなのものだ! PARK is OURS/フットサル場 使用上の注意 このフットサル場は、ゴムチップ入り人工芝を使用しています。きれいな緑と足にやさしい使用感をいつまでも保つため皆様のご協力をお願いいたします。/皆様のフットサル場です。大切に使いましょう。/フットサル場は平成22年4月末まで休場いたします。/防犯カメラ作動中/喫煙所/忘れ物・落とし物にご注意ください/ゴミ等はお持ち帰りください/カン・ビン ペットボトル その他のゴミ/さんごじゅ すいかずら科/れんぎょう もくせい科/渋谷区土木部/不審物を発見したときは、区役所の公園又は警察に連絡願います。なお、無届で集会等を開くことで、不法に占拠することを禁止します。/消えないで公園/荷物をあずけている方へこの倉庫に荷物をあずけている方は、布テープにマジックで名前を書いてください。名前のない荷物は4/19(月)に別の場所に移動します。/みんなのCAFÉ いらっしゃい/わたしたちは、以下の問題があると考え、反対しています。/企業の宣伝・営利に使われること。誰もが憩える公園でなくなること。手続きが不透明かつ非民主的なこと。渋谷区の目的が、公園からの一方的な「ホームレス排除」、街からの「スケーター排除」であること。わたしたちは、この計画の白紙撤回を求め、工事を着工させないために、デモなどを行い、現在テントを張っています。/落書き禁止 落書きは「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」により禁止されています。違反した場合には処罰されます。(後略)

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連載エッセー「本の楽園」 第80回 僕の好きな文芸誌

作家
村上政彦

 文芸誌というのは、小説や詩、エッセイや書評などを掲載した、文学に特化した雑誌をいう。僕は文芸誌の新人賞をもらって作家としてデビューしたので、何か特別な思い入れがあるかというと、そうでもない。
 ただし、デビューする前は、いわば修業のために何誌か定期購読していた。作家の名前が印刷された表紙を眺めて、いつかここに自分の名前が入ることを妄想していた。10代の半ばから20代の半ばにかけてのころだ。思えば、あれは僕の文学の青春だった。
 デビューしてからほとんど文芸誌は読まなくなった。気になる作家の作品が掲載されていると、ちらっと覗く程度で、文芸誌は読むものではなく、作品を発表する場に変わった。タモリが、「テレビは見るものではなく、出るもの」といっているのに近い。
 最近になって、また文芸誌を手に取るようになった。これには理由がある。大学の創作科で教えるようになったので、現在の文壇の動向を観察する必要に迫られたのだ。学生たちに最新の文学事情を伝えるためだ。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第79回 山下清の放浪日記

作家
村上政彦

 僕が山下清のことを知ったのは、TVのドラマが最初だった。確か、『裸の大将放浪記』というタイトルだったとおもう(間違っていたらごめんなさい)。軽度の知的な障害を持った主人公が全国を放浪しながら、地元の人々と温かな交流を重ねる様子を描いた番組だった。
 主人公が、画家の山下清であるところがポイントで、坊主頭の、半ズボンにランニングを着たみすぼらしい男が、著名な芸術家であることが分かると、水戸黄門が印籠を出したときのように、人々の態度が一変する趣向だった。
 その後、僕は山下清の作品を何度か見て、感心した覚えがある。ジャン・デビュッフェがアール・ブリュットという概念を提出し、精神的な障害を持った人々、アカデミックな美術教育を受けたことのない人々の作品が注目されるようになった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第78回 シウマイの丸かじり

作家
村上政彦

 このあいだ新幹線で九州への日帰り出張をやった。朝は5時起きで、車で妻に最寄り駅まで送ってもらって、東京を7時の、のぞみに乗った。小腹が空いたのでおにぎりの弁当を買って、それを食べてから目的地の小倉までほとんど意識がない。爆睡である。
 昼頃に小倉へ着いて、仕事関係の何人かと合流してホテルで会食。その後、僕は某作家と対談した。2時間ぐらい言いたい放題しゃべりまくって、疲れたのでケーキとコーヒーを頼んで終わり。
 さて、問題はここからである。みなと別れて駅へ向かいながら僕が考えていたのは、書店はどこにあるか? ということだった。東京駅まで5時間弱ある。行きのように爆睡はできないだろう。そうすると、帰りの新幹線のなかで読むものが欲しい。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第77回 人の物語

作家
村上政彦

 フィリピンのマニラにある橋の下で、著者の「私」はメルセディータと出会う。彼女はそこに家を構えて暮らしていた。橋の下で暮らしているのは100家族ほど。電気は違法に引いていたが、電力会社に止められ、ろうそくの炎が唯一の家の中の灯だ。
 もともと「私」は教師をしながら、貧困層の人々を支援するボランティアに携わっていた。あるときからフルタイムのボランティアになった。メルセディータと出会って、彼女の半生を記録し始める。

 メルセディータ・ビリャル・ディアス=メンデスは、1965年に生まれた。両親は農場で働いていた。6人きょうだいの末っ子だった。貧しい暮らしで、おもちゃがひとつもなかった。 続きを読む