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連載「広布の未来図」を考える――第7回 宗教間対話の重要性

ライター
青山樹人

諸宗教との対話は不可欠

――前回(第6回)は、広宣流布の運動を推進していく上で「私たちはどのような社会をめざしていくのか」という具体的なビジョンが必要ではないかという話でした。引き続き、このテーマを考えていきたいと思います。

青山樹人 前回、広宣流布といっても、他の宗教を淘汰して一色に染めていくようなものではないということを、池田先生の著作をもとに確認し合いました。
 この他宗教との関係について、もう少し考えていきたいと思います。あくまで頭の体操と思って、ひとつの思索の参考に聞いてください。

 この4月にローマ・カトリックの教皇フランシスコが逝去され、5月に新しく教皇レオ14世が選出されましたね。
 教皇は12億人とも13億人とも言われる信徒を擁するローマ・カトリック教会の最高位の司教であり、同時にバチカン市国の国家元首でもあります。 続きを読む

連載「広布の未来図」を考える――第5回 「カルト化」の罠とは

ライター
青山樹人

「反カルト」がはらむ「カルト性」

――旧統一教会の問題では、「カルト」という言葉に注目が集まりました。そもそも「カルト」と「宗教」は何が異なるのか。あまり深く考えないまま、安易に使われているような気もしないではありません。
 そこで、今回は「カルト」について、いくつかの観点から考える機会にできればと思います。

青山樹人 「カルト」の定義は、じつは学術的には厳密にこれと定まったものはないのです。一般的には〝特定の人物や事物に対して熱狂的に崇拝する小規模な集団〟を指して使われることが多いと思います。
 べつに特定の宗教集団だけを指す言葉ではなく、むしろ集団の性格や構造に向けられた言葉といえるでしょう。

 性格という点では、「反社会性」です。具体的には、集団の理念や目的のためであれば「人権侵害」を正当化することです。
 家族や友人から隔離して集団生活を強制したり、生計に支障をきたすような額の出資や献金をさせたり、就学や就労などの機会を奪って集団のための役務に就かせたりする。 続きを読む

連載「広布の未来図」を考える――第4回 宗教者の政治参加

ライター
青山樹人

戦後、多くの教団が政界進出

――今回は「政治と宗教」について、多くの人が抱いている疑問などにも触れながら、ていねいに考えていきたいと思います。
 まず、日本では多くの人が、宗教団体が政治に接近することに警戒心を持っているように思います。なかには、「憲法違反」だと思い込んでいる人もいます。

青山樹人 おっしゃるとおりですね。「政治」も「宗教」も、一般的には話題から避けることが多い。だから、よけいに不信感や不安感が強まるのかもしれません。
 私はこういう問題こそ、友人や家族と折に触れて語り合うことが必要だと思っています。その場合も、なにか説得しようとか、論破しようとかいうような姿勢ではなく、〝一緒に考えていく〟態度が大切だと思います。

 民主主義の社会というのは、異なる思想信条、価値観、信仰などを持った人々が共存していこうとする社会です。これが大前提ですよね。
 もし特定の思想信条や価値観、信仰が排除抑圧されてしまうのであれば、それはもはや独裁国家、権威主義国家になってしまいますから。 続きを読む

連載「広布の未来図」を考える――第3回 宗教を判断する尺度

ライター
青山樹人

――「政治と宗教」への人々の懐疑や批判的な声が続いています。そのうえで前回は、むしろこれをコミュニケーションのチャンスと捉えるべきだという話が出ました。

青山樹人 これは、とても大事な視点だと思います。むろん、誰でも自分が一番大切にしているものを土足で踏みにじられれば、黙っていられませんよね。その心情は当然でしょう。
 また、幾百万人の信仰に関わる悪意のデマに対しては、やはり黙していてはいけない。

 池田先生は『新・人間革命』で、日蓮大聖人が常に電光石火の言論戦に徹していた姿に触れ、

 黙っていれば、噓の闇が広がる。その邪悪を破る光こそ、正義の言論である。(第8巻「清流」の章)

 「一」 の暴言、中傷を聞いたならば、「十」の正論を語り抜く。(同)

と綴られています。
 まして現代はSNSの時代です。誤情報や悪意のデマが瞬時に広がる。だからこそ「電光石火」のスピードで、真実の情報を繰り返し発信していく必要があります。 続きを読む

連載「広布の未来図」を考える――第2回 公権力と信仰の関係

ライター
青山樹人

解散命令請求を認めた東京地裁

――2025年3月25日、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の不法行為をめぐって、東京地裁は国(文部科学省)が出していた「宗教法人法に基づく解散命令請求」を認める判決を下しました。

青山樹人 国側が解散命令請求の対象事実としたのは、同教団が遅くとも1980年頃から長期間・継続的に、不安や困惑、自由な意思決定に制限を加えるなどして、霊感商法や高額献金などをおこない、家族を含む多数の生活の平穏を害したというものです。

――これまで解散命令請求が出された教団は、オウム真理教(1995年請求)と明覚寺(1999年請求)の2件だけでした。
 言うまでもなく、オウム真理教は坂本弁護士一家殺害事件や公証人役場事務長の殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件など、犯罪史上でもまれに見る数多くの凶悪犯罪を実行しました。
 明覚寺の事件とは、それ以前から霊視商法が社会問題化していた宗教法人が、新たに休眠状態の宗教法人を買収して正体を隠し、「水子の霊が憑いている」などと脅迫して多額の供養を集めていたものです。15人が詐欺罪で逮捕・起訴され、最高幹部は懲役6年の実刑判決を受けました。

青山 この2件は、いずれも刑事事件であり、教団の最高幹部らが逮捕されていました。一方、今回の旧統一教会は民法上の不法行為が理由とされたものです。 続きを読む