コラム」カテゴリーアーカイブ

コロナ禍で問われる政党の能力――ヒットを打つ公明党

ライター
松田 明

自宅療養者の重症化防ぐ

 6月から上昇の一途だった東京都の新型コロナ陽性者数が、8月下旬に入って減少トレンドに移った。予断は許さないものの、1日100万回ペースのワクチン接種が着実に継続していくなかで、日本のワクチン接種回数は世界的にも上位になっている(「NHK特設サイト「世界のワクチン接種状況」)。
 さらなる感染予防の徹底でなんとか減少傾向を維持したい。
 政府が5月に大規模接種センターを設置したあとも、立憲民主党の枝野代表は「ワクチン頼みではなく検査拡大にかじを切るべき」などと発言していた。
 立憲民主党や、ワクチン確保と接種の予算に反対した日本共産党などが仮に政権をとっていたなかでコロナ禍が起きていたら、大変な惨状になっていただろう。 続きを読む

書評『創価教育と人間主義』——第一線の学識者による力作

ライター
本房 歩

著者と創価教育学の出あい

 著者の渡邊弘氏は教育学、とりわけ日本の教育思想史の研究者。2017年から作新学院大学学長、作新学院大学女子短期大学部学長をつとめ、2020年には学校法人ねむの木学園理事を兼務する教育者でもある。
 創価教育との出あいは、1994年に恩師である村井実・慶應義塾大学名誉教授がおこなった「創価教育学と教育の未来」と題する講演に招かれたことだった。浅草公会堂で開かれたこの講演は、牧口常三郎・創価学会初代会長の生誕123周年記念の行事だった。
 この年から、著者は創価教育の研究をはじめる。 続きを読む

芥川賞を読む 第8回 『運転士』藤原智美

文筆家
水上修一

ひとりの地下鉄運転士の内面を徹底して描き切る

藤原智美著/第107回芥川賞受賞作(1992年上半期)

無機質な運転士の変貌

 第107回芥川賞を受賞したのは、当時36歳の藤原智美の『運転士』だった。『群像』(1992年5月号)に掲載された127枚の作品だ。

 主人公には名前はなく、「運転士」と表記されるだけだ。この無機的な表現方法は、主人公の内面とうまく共鳴し合う。主人公が地下鉄の運転士を仕事に選んだ理由は、時間と方法が確立されていて、いい加減なものが入り込む余地のない明確な仕事だからだ。彼にとって曖昧さは不自由さと同じ意味を持つ。あえて地上の電車ではなく地下鉄を選んだのは、天候によって運航が乱されることも昼夜の光量の差もなく、常に一定の条件で運転できるからだ。 続きを読む

核兵器の恐怖から人類を解放するために(下)――理想と現実のギャップを乗り越えていくために

中部大学教授
酒井吉廣

 8月6日の広島平和記念式典の後の記者会見で、菅首相は、核兵器禁止条約(以下、核禁条約)の署名・批准やオブザーバーとしての参加の意思がないことを表明すると共に、NPT(核不拡散条約)の下で核兵器の不拡散に努めると語った。前回も触れた通り、日米安全保障条約に基づく米国の核の傘の下にある日本の宰相として菅首相のコメントは当然の内容で、筆者はこの国際情勢の現況を睨んだ判断を多としたい。
 これに対して、野党の多くは日本国が核禁条約に書かれているオブザーバーとしての参加を主張し、日本共産党は核禁条約のすみやかな署名・批准を主張した。日本国が、核禁条約へのオブザーバー参加を考える事は難しいというのも前回触れたとおりである。オブザーバー参加して、米国の核の傘の下での防衛体制を敷きながら、それを否定する核禁条約加盟国と話し合いをするという二股外交などあってはならないからだ。 続きを読む

書評『ニュースの未来』――石戸諭の抱く「希望」とは

ライター
本房 歩

 石戸諭の新著『ニュースの未来』を読み終えて、鷲田清一の式辞集を思い出した。
 哲学者の鷲田清一は、2007年から11年まで大阪大学総長を、15年から19年までは京都市立芸術大学の理事長・学長をつとめている。
 その彼の学長としてのキャリアの最後となる式辞。すなわち2019年3月におこなわれた京都市立芸術大学卒業式で、鷲田は宮沢賢治の言葉について語った。
 まず有名な《世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない》に触れ、《職業芸術家は一度亡びねばならぬ》と《産者(創る人)は不断に内的批評を有(も)たねばならぬ》のふたつの言葉を挙げた。 続きを読む