コラム」カテゴリーアーカイブ

連載「広布の未来図」を考える――第6回 三代会長への共感

ライター
青山樹人

未来への展望が求められる時代

――3月から始まったこの連載ですが、おかげさまで反響をいただいているようです。

青山樹人 第1回で申し上げたように、あくまでも一つの見解としての言論であり、読んでくださる方の何らかの思索のヒントになればという企画です。
 お手軽なネット記事と違って、あえて毎回それなりに文字量も多くしています。それでも読んでくださる方々には感謝するばかりです。

 今から70年前の1955(昭和30)年7月の『大白蓮華』巻頭言で、戸田先生は「青年よ、心に読書と思索の暇(いとま)をつくれ」と綴られました。池田先生もまた、この恩師の言葉を何度も青少年たちに語られてきました。

 そのなかで戸田先生は、「読書と思索のない青年には向上がない。青年たる者はたえず向上し、品位と教養を高めて、より偉大な自己を確立しなければならぬ」と記されています。

 仕事に、家庭や家族のことに、地域のことに、学会活動に、本当に多忙な日々を送っている人が多いと思います。ともすれば目の前のことに追われていく日々です。
 だからこそ、創価の青年には、また青年の心で生き続ける先輩世代も含めて、あえて活字に挑んで思索を重ねていただきたいと願っています。 続きを読む

書評『〈決定版〉ミシュレ入門』 ――偉大なる歴史家の卓越した史観に学ぶ

ライター
小林芳雄

宗教の歴史的功罪を見つめる

 フランスの歴史家・思想家ジュール・ミシュレ(1798~1874)。世界屈指の研究機関コレージュ・ド・フランスの教授でもあった彼は、数多くの書物を著し、人間の生活文化を視野に収めた総合歴史学を目指す〝アナール学派の源流〟ともいわれる。さらに母国では歴史学の分野を超えた大作家とされ、ユゴーやバルザックと並び称されることもある。
 本書は、ミシュレの入門書であるが、生涯の事績を列挙するようなことはせず、大著『人類の聖書』にミシュレが書き残した特徴的な一節を導きの糸に、彼の歴史観の底に流れる問題意識を明らかにする試みである。

インドから(一七)八九年[=大革命]まで光の奔流が流れ下ってくる。「法」と「理性」の大河である。遥かなる古代は君なのだ。君の種族は八九年となる。そして中世はよそ者となる。(『人類の聖書』大野一道訳/藤原書店、本書12ページ)

 中世から近代への歩みを踏み出した時代を「ルネサンス時代」と名付けたのはミシュレである。そしてルネサンス時代に始まる近代化を実現したのがフランス革命であった。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第84回 正修止観章㊹

[3]「2. 広く解す」㊷

(9)十乗観法を明かす㉛

 ⑥破法遍(12)

 (4)従空入仮の破法遍④

 ④入仮の位

 従空入仮観の破法遍の第四段である入仮の位について説明する。この段は、さらに教に歴て位を判ず、利益を明かす、破法遍を結ぶの三段に分かれている。

 (a)教に歴て位を判ず

 第一の教に歴て位を判ずの段では、蔵教・通教・別教・円教それぞれの上根・中根・下根の位について説明している。今は、円教についての説明を引用しよう。

 円教の十信は、六根浄の時に、即ち遍く十法界の事を見聞す。若是(も)し空に入らば、尚お一物も無し。既に六根は互いに用うと言えば、即ち是れ入仮の位なり。又た、五品の弟子は正しく六度を行じて、広く能く法を説く。即ち是れ入仮の位なり。何ぞ必ずしも六根浄を待たんや。又た、初心の人は、能く如来秘密の蔵を知って、円かに三諦を観ず。尚お能く即ち中なり。豈に即仮ならざらんや。『大品』に云わく、「初め道場に坐して、尚お便ち正覚を成じ、法輪を転じて、衆生を度す」と。又た、六即もて料簡するに、便ち出仮の義有り。何ぞ須(すべか)らく五品に至ることを待つべけんや。(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。以下同じ。大正46、79下2~9)

と述べられている。 続きを読む

芥川賞を読む 第52回 『冥土めぐり』鹿島田真希

文筆家
水上修一

過去の不運や絶望の中から見出した再生の光

鹿島田真希(かしまだ・まき)著/第147回芥川賞受賞作(2012年上半期)

過去という遺物を眺める

 不運や絶望や諦めから、人は再生の道を発見できるのか。ある種の宗教的命題を抱えた作品ともいえる鹿島田真希の「冥土めぐり」。
 主人公の奈津子の母と兄は、傲慢で、虚栄心が強く、拝金主義で、浪費家だった。その背景にあるのは、祖父母時代の裕福さ。超豪華なホテルで食事をしダンスを楽しみ、周囲からも特別扱いされるような家庭環境だったため、祖父母が亡くなり金の工面にも苦労するような生活に落ちぶれた今でも、昔の栄華が忘れられず虚栄に満ちた生活を追い求めているのである。
 そうした二人から小馬鹿にされ金銭的に搾取されてきたのが奈津子である。社会的常識から見れば奈津子の方が圧倒的に健全なのだが、そうした家庭環境だったため奈津子の自己肯定感は極めて低い。家族からの無理な要求にも逆らわない。それはまるで自分を諦めたような存在である。そんな奈津子は、職場の同僚と結婚したのだが、夫はその後、脳に関する病を発症し車椅子生活となる。稼ぎのない夫の日常生活を支える奈津子の日々は、一見あまりにも不遇である。
 ある時、二人は旅行に出かけることにした。行く先は、裕福だった頃に両親や祖父母と一緒に出かけた超豪華ホテルのある観光地。そこで、家族の過去を客観的に見つめるのだが、夫との出会いこそが自分にとっての救いだったということを発見するのである。 続きを読む

公明党の「平和創出ビジョン」――2035年までを射程とした提言

ライター
松田 明

17分野に及ぶ包括的な提言

 5月9日、公明党の斉藤鉄夫代表が国会内で記者会見し、「平和創出ビジョン」を発表した。
 これは2025年が「戦後80年」の節目に当たることから、同党の平和創出ビジョン策定委員会(委員長=谷合正明・参議院会長)がまとめたもの。
 3つの視点から17の分野において包括的な提言をおこなうもので、概要は以下のようになっている。

Ⅰ 平和の基礎づくり
  ①北東アジア安全保障対話・協力機構
  ②核廃絶
  ③AI
  ④国連改革
  ⑤海洋秩序
Ⅱ 現実への行動
  ⑥復旧・復興
  ⑦気候変動
  ⑧SDGS
  ⑨司法外交
  ⑩人権
  ⑪遺骨収集
  ⑫平和拠点の沖縄
Ⅲ ソフトパワーの強化
  ⑬教育
  ⑭文化芸術・スポーツ
  ⑮女性
  ⑯若者
  ⑰地方発
「公明党 平和創出ビジョン~対立を超えた協調へ~」2025年5月9日

 これは2024年8月6日、広島平和記念公園での平和祈念式典に参列した同党の山口那津男代表(当時)が記者会見で策定を発表していた。 続きを読む