書評『希望の源泉 池田思想②』——「反体制」への誘惑を退ける

ライター
本房 歩

「哲学の大空位時代」

 池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長の『法華経の智慧』の連載が、創価学会の機関誌『大白蓮華』ではじまったのは、1995年2月号からである。
 折しも、第二次世界大戦の終結から50年。
 自民党の長期単独政権は93年夏に終焉しており、下野した当時の自民党は、日本社会党の党首を首班に担ぐという奇策で政権復帰を果たしていた。
 そうしたなかで、1月17日に近畿地方で大都市直下型の阪神・淡路大震災が発生。3月にはオウム真理教によって同時多発的に東京の中枢で猛毒サリンが撒かれる地下鉄サリン事件が起きた。さらに警察庁長官が何者かに狙撃され重傷を負った。
 世界を見渡せば、東西冷戦が終わったことで〝重石〟が外れ、復古主義的なナショナリズムが強まり、一部の宗教宗派もまた偏狭な民族主義に侵食されつつあった。
 日本国内も世界も、それまでの安定や秩序が大きく崩れ、強い不安感と危機意識に覆われていたのである。 続きを読む

公明党の手腕が光った1年――誰も置き去りにしない社会へ

ライター
松田 明

人権侵害の是正を求める

 2019年12月23日、ミャンマーを訪問中の山口那津男・公明党代表は、アウン・サン・スー・チー国家顧問の私邸に招かれて会談した。両者は前年10月にも東京で会談しており、3回目の会談となる。

 山口氏は、隣国のバングラデシュに避難している、少数派のイスラム教徒・ロヒンギャの人たちをめぐって、「人権侵害が行われているという疑惑について適切な措置をとるとともに、帰還に向けた環境整備に努めることが重要だ」と指摘しました。
 これに対し、スー・チー氏は、避難民への日本の支援に謝意を示したということです。(「NHK NEWS WEB」12月24日

 少数民族ロヒンギャへの弾圧をめぐり、EU(欧州連合)はミャンマーへの制裁措置を2020年4月まで延長している。一方、中国は「一帯一路」の要衝として、同国への経済支援を積極的におこなっている。
 こうしたなかで、日本政府は経済支援というコミットメントを維持し、ミャンマーの孤立化を防ぎながら民主化を強く促す戦略をとってきた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第83回 アートとしてのアナスイ

作家
村上政彦

 アナスイのコレクションを眺めていると、なぜか、創作の意欲を刺激される。あるとき、デパートですばらしいワンピースを見て、思わず「欲しい!」とおもった。僕には、女装癖はない。だから、純粋にアートの作品として、欲しいとおもったのだ。
 しかし、隣にいた妻は、私には似合わないわ、という。いや、君のためじゃなく、僕のために買うんだ。彼女の頭の上に、大きな「?」が浮かんでいた。だから、これは画を買うのと同じなんだ。僕は、作品として、このワンピースが欲しいんだ。
 妻は、値札を見て、無理、と一言いった。いや、画よりも安い。でも、画じゃないもの。これ、大きな額縁に入れて壁に飾って置いたら、仕事が捗る。妻は首を振りながら売り場を去った。 続きを読む

期待値の低い「野党合流」――急ぐ理由は政党交付金

ライター
松田 明

「亥年は鬼門」のジンクス

 12年に一度、統一地方選挙と参議院選挙が重なる「亥年」の2019年が、まもなく終わる。
 亥年の選挙が波乱含みで、とりわけ自民党にとって鬼門になると言われ出したのは1980年代後半だ。
 実際、1995年の参院選で自民党は得票率で新進党の後塵を拝し、2007年は当時の民主党に風が吹いて、第1次安倍内閣が退陣するきっかけともなった。
 その意味では、2019年も危うい1年だった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第82回 僕はグレン・グールドになりたかった

作家
村上政彦

 小学生のころ、門のある大きな家が並ぶ住宅街を歩いていると、ピアノの音が聴こえてくることがあった。僕は、それを弾いている人を想像した。たぶん少女で、髪は長く、白いブラウスを着て、赤いスカートを身につけている。そして、なぜか、白いハイソックスを履いている。
 傍らには、美しい母親がいて、少女がピアノの練習を終わると、おやつを運んで来る。それは、どうしても、苺ショートと紅茶でなければならない。僕は、そんな生活とは無縁の、貧しい長屋暮らしだったので、よけいに妄想をたくましくした。
 あるとき、酒場へ出勤するため、化粧をしていた母に、ピアノを習わせてほしいと頼んだことがある。彼女はふんと鼻で笑って、貧乏人の子供がピアノ習うてどうするんや、と手を休めずに言った。 続きを読む