連載エッセー「本の楽園」 第75回 我的日本語

作家
村上政彦

 リービ英雄さんとは、文芸家協会でときどき顔を合わせる。最初にお眼にかかったとき、「村上政彦です」と名刺を出したら、「お名前は、よく存じ上げております」と丁寧な日本語で返されて驚いた。
 彼は、北米で生まれ育ったアメリカ人だ。17歳で日本語と出会って、大学で『万葉集』を学び、それを英訳して、北米でもっとも権威のある全米図書賞を受けた。その後、日本語で小説を書くようになり、作品は高く評価されている。 続きを読む

「解散風」に右往左往した野党――深刻化するバラバラ感

ライター
松田 明

大はしゃぎした共産党

 全国唯一の日本共産党公認の野党統一予定候補が実現した参院福井選挙区(改選数1)。福井県中を駆ける山田かずお予定候補に、「共産党で一本化してびっくり」「共産党で統一できたのがすごいこと」「ぶれなかったからだね」と期待が寄せられています。

 野党統一によって希望ある政治をつくる道に踏み出した野党と市民に感謝したい。“共産党候補だからこそ共闘が進むんだ”と示す結果を出したい。

 こう大はしゃぎしているのは、6月23日の「しんぶん赤旗電子版」である。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第74回 片的なものの社会学

作家
村上政彦

 岸政彦の名は、なんとなく知っていた。小説の作者としてだ。『断片的なものの社会学』という本が話題になって、手に取ってみたら、彼の本業が社会学者であると分かった。じっくり読んでみて、これは小説にとって手強い相手が現れたとおもった。
 本書は社会学の本だ。岸が生活史の聞き取り調査の現場で体験したことがしるされている。体系的な著作ではない。まさに「断片的なもの」が満ちている。冒頭でこんなエピソードが紹介される。 続きを読む

「野党統一候補」の不協和音――不信と嫌悪にまみれた〝共闘〟

ライター
松田 明

32選挙区で〝統一候補〟

 来たる参議院選挙に向けて、32ある「1人区」で立憲民主、国民民主、共産、社民などの野党が〝統一候補〟を立てる見通しとなったようだ。

 参院選全体の勝敗を左右する1人区は全て、公明党推薦の自民党公認候補と野党候補が対決する構図になる。(「毎日新聞WEB」6月7日

 この6年半、自公の連立与党が安定したパートナーシップを深めている一方、野党は目まぐるしく合従連衡を繰り返してきた。
 分裂と罵り合い。風向きを見ての野合。クルクルと変わる党名。低迷する支持率。多くの有権者は、今や誰がどの党の所属なのかもよく分からないほどだ。
 実際、わずか6年半で所属政党が5つも6つも変わっている野党議員も珍しくない。 続きを読む