枝野氏「減税は間違いだった」――迷走する野党第一党

ライター
松田 明

減税は「野党共闘」の共通政策

 衆議院選挙を目前にした2021年9月8日。立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の野党4党の代表が国会内で集合した。市民連合の呼びかけに応じて「共通政策」に署名するためだ。
 この「共通政策」には、

消費減税を行い、富裕層の負担を強化するなど公平な税制を実現し(【市民連合】「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」PDF

とある。
 署名終了後、立憲民主党の枝野幸男代表(当時)は記者団に、

市民連合の皆さんに大変ご尽力ご協力をいただいて、野党4党で共通政策が作れたことは大変良かった(「立憲民主党」公式サイト2021年9月8日

と発言。日本共産党の志位和夫委員長は、

今度の総選挙は、9年間に及ぶ安倍・菅自公政治に対する総決算、チェンジの審判を下す選挙。提言にはそのチェンジの重要な政策がしっかり盛り込まれている(『しんぶん赤旗』2021年9月9日

と絶賛し、

野党共闘の基本はできた。次のステップとして今度は政党間の協議で、政権交代後に共産党がどう関わるかという『政権協力』の在り方や、選挙協力の合意をつくっていきたい。衆議院選挙は政権選択の場になるので『政権協力』の合意は不可欠だ。(「NHK政治マガジン」2021年9月8日

 
と、この「共通政策」を足掛かりに「政権協力」への合意が〝不可欠〟と強調した。

衆院選、参院選でも公約に掲げる

 枝野氏が率いた立憲民主党は、昨年6月の衆院本会議で「税率5%への時限的な消費税減税を目指す」と表明しており、これは衆院選の公約にも盛り込まれている。
 だが、事前のマスコミの予測に反して、10月31日におこなわれた衆院選で立憲民主党と日本共産党は大敗。立憲民主党の生みの親である枝野幸男氏は責任を取って代表を退く結果となった。
 それでも、この「消費税減税」は泉健太執行部の立憲民主党にも引き継がれた。今年7月の参議院選挙の公約にも、

税率5%への時限的な消費税減税を実施します。(「立憲民主党」公式サイト2022年6月28日

と明記された。
 6月21日に開かれた日本記者クラブ主催の与野党9党首討論会で、公明党の山口那津男代表はこの立憲民主党の公約に言及し、

消費税(の増収分)は年金の国庫負担や保育の受け皿などに使われ、(減税すれば)こうした社会保障の充実に使えなくなる。今それを放棄し、税率を上げ下げするのはいかにも無責任だ(『産経新聞』6月21日

と批判した。
 そもそも消費税率の引き上げは民主党政権時代に、野党だった自民党と公明党が民主党に協力する形で社会保障と税の一体改革関連法案の3党合意として決まったもの。
 この結果、当時5%だった消費税率を2014年4月に8%へ、15年10月に10%に引き上げる法案が成立する。なお、この3党合意にあたって公明党は10%引き上げ時に軽減税率を導入するよう強く求めた。
 その後、自公連立政権になって予定どおり8%に引き上げられたものの、10%への引き上げについては2度にわたって時期を延期。最終的に2019年10月に引き上げられたが、公明党の主張に沿ってテイクアウトの食品などには8%に据え置く軽減税率が導入されている。
 同時に、自公連立政権はこの税収を財源に、少子高齢化の厳しい状況下で全世代型社会保障の実現を大きく進めてきた。
 コロナ禍でテイクアウトの需要が一気に拡大したなか、軽減税率が暮らしや需要を大きく助けたことは人々が実感していることだろう。
 だが、この公明党の掲げた軽減税率に対し、立憲民主党の枝野代表(当時)は国会の代表質問(2019年1月30日)で「天下の愚策」と罵倒している。

枝野氏「減税は間違いだった」

 社会保障の財源を捻出するために消費税率の引き上げを決めたのは、他でもない枝野氏や泉氏らが所属していた民主党政権なのだ。
 それを自分たちが下野した途端に、無責任にも反対する。
 立憲民主党が社会保障費の財源として示したのは、大企業や富裕層に対する法人税や所得税の課税強化。しかし、10兆円から15兆円と枝野代表が見通した不足分を補うことには疑問の声が相次いだ。

財源は大丈夫かと国民は思う。説明は一切ない。過去にも野党が減税を訴えたが実現していない。政権交代を現実として考えていない証左だ。(竹中治堅・政策研究大学院大教授『日本経済新聞』2021年10月24日

 さて先日、その無責任な〝消費税減税〟を掲げた立憲民主党の枝野氏から、驚きの発言が出た。

枝野氏は10月28日に投稿した動画で「政治的に間違いだったと強く反省している。二度と減税は言わない」と語った。枝野氏は時限的な消費税減税を公約に盛り込み、共産党などと選挙協力を進めた。(『日本経済新聞』11月6日

 わずか1年前、自分が代表だったときの総選挙で掲げた公約を「間違いだった」「強く反省している」と撤回したのだ。
 11月12日の集会でも、

昨年の衆院選で野党共闘の旗印に掲げた消費税減税の党公約が「政治的に間違いだった」との考えを重ねて示した。衆院選の敗因だとして「大きな失敗をした。次は見直すべきだ」と述べた。(『産経新聞』11月12日

 
と繰り返した。

露呈した「野党共闘」のお粗末さ

 立憲民主党は今も消費税減税を掲げている。泉代表は11月4日の記者会見で、

昨年の総選挙、そして今年の参議院選挙、私たちは消費税の時限的減税、これを訴えました。これを今なにか変えたということはありません。(「立憲民主党」公式Youtubeチャンネル

と党の政策に変更はないと明言した。
 枝野氏の発言は、立憲民主党が2つの選挙で掲げてきた公約を〝元代表が否定する〟もの。しかも、日本共産党などとの野党共闘の根幹を覆しかねない。
 あわてた日本共産党の小池晃書記局長は、

国民に消費税減税を訴えて選挙をたたかったにもかかわらず、「間違い」だというのは国民に対して不誠実な発言だと言わざるをえない(『しんぶん赤旗』11月8日

と激しく非難した。
 自分たちが民主党時代に決めた消費税率引き上げを、選挙めあてに否定する。そして有権者に愛想をつかされて選挙で負けると、今度は「間違いだった」とまた否定する。
 あきれるような迷走ぶりだが、呉越同舟の立憲民主党内には、日本共産党やれいわ新選組などとの共闘で〝左のポピュリズム〟に引きずられていく党の現状に危機感を抱く勢力もある。

枝野氏の発言について、党内には「立民を責任政党として現実路線にしようとする狙いがあるのではないか」との見方がある。(『日本経済新聞』11月6日

 枝野発言が同氏の乱心でないとすれば、こうした党内勢力の思惑を背負ったものなのだろうか。どちらにしても有権者をあまりにも軽んじた態度だ。
 岸田政権の支持率が下がっても、まったく支持率の上がらない野党第一党。衆院選、参院選と、立憲民主党に1票を投じた有権者は何を思うのだろう。

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