2連敗した立民と共産――参院選でも厳しい審判

ライター
松田 明

衆院選に続く2党の大敗

 7月10日に投開票がおこなわれた第26回参議院選挙は、与党の圧勝で終わった。
 自民党は単独で改選議席125の過半数となる63議席を獲得。公明党も選挙区7候補が激戦を制して全員当選を果たし、13議席を獲得した。
 一方の野党は、立憲民主党が改選23議席から大きく後退して17議席にとどまり、日本共産党も6議席から4議席へと大敗した。
 立憲民主党は獲得議席数では辛うじて野党第一党の座を保ったものの、比例区の得票数では日本維新の会に及ばなかった。日本維新の会は改選議席の6から12議席へ倍増させている。
 さらに立憲民主党は、参議院幹事長だった現職の森裕子氏が自民党の新人に敗北。小沢一郎氏のおひざ元である岩手選挙区でも、現職の木戸口英司氏が自民党の新人に敗北し、1992年以来30年ぶりに自民党が勝利した。
 また比例区でも、有田芳生氏や白眞勲氏といった現職が議席を失った。

立憲民主党の泉代表は10日夜の記者会見で、参院選で議席が伸び悩んだ責任について「次のわが党の勢力拡大に向けた努力をしていきたい」と述べ、代表辞任は否定した。ただ、党内で西村幹事長ら執行部の責任を問う声が出る可能性はある。(「読売新聞オンライン」7月11日

 立憲民主党は昨年の衆議院選挙で日本共産党と「選挙協力」「政権協力」をむすんだことで有権者の失望を招き、各メディアの事前予測に反して大敗。党創設の中枢メンバーだった当時の執行部が退陣する結果となった。
 新たに代表に就任した泉健太氏には、今回の参院選で党勢の立て直しという課題が突きつけられていたが、ふたたび有権者の厳しい審判を受けたことになる。

非難を浴びた立民の迷走

 選挙戦のあいだも、同党にはガバナンスの欠如というべき事態が続いた。
 神奈川選挙区では定数4(非改選の欠員1を含めると5)の激戦にもかかわらず、立憲民主党は候補者を2人擁立した。神奈川県議を辞職して挑む寺崎雄介氏と新人の水野素子氏だ。
 公示後、期日前投票がはじまって11日も経った選挙戦終盤の7月4日になって、共倒れの可能性を危惧した執行部と神奈川県連は候補者の一本化を決定。翌5日、笠浩史衆議院議員がツイッターに、

水野候補の4位以内当選を目指して、厳しい判断ですが、今日から水野候補に集中して支援してまいります。皆さん、神奈川県選挙区は水野もとこでお願いします!(笠議員のツイート/7月5日

と投稿した。
 すでに期日前投票で寺崎氏に投票していた人たちからすれば、選挙戦の終盤に自分たちの票が白票にされたも同然。一本化を図ったものの、結局、水野氏は任期が3年しかない5位での当選となった。
 最終盤の7月8日に応援演説中の安倍晋三・元首相が凶弾に倒れるという事件が起きた。各国首脳から弔意が寄せられ、野党党首たちも哀悼を表しているなかで、立憲民主党の小沢一郎氏は8日、「自民党が長期政権の中でおごり高ぶり、勝手なことをやった」「結局、自分たちの政策の過ちが日本社会をゆがめ、結果として自分に跳ね返ったということ」などと記者を前に発言。
 テロを政権批判に結びつけたこの発言に非難が殺到することとなり、泉代表は翌9日の自身のツイッターで、

元総理の命が失われ、背景や全容はいまだ不明です。
その状況で、事件と長期政権など何かを不用意に関連付けるべきではない。党としても注意いたしました。
どんな背景であろうが、テロは是認されないのです。(泉代表のツイート/7月9日

と、小沢一郎氏を「注意」したと釈明した。岩手選挙区で現職の立憲民主党候補が落選する結果となったのは前述のとおりである。

自公政権は国民の負託にこたえよ

 今回の参院選では、有権者が自公政権に強い基盤を与え、立憲民主党と日本共産党がさらなる退潮を見せた一方で、大小あわせてポピュリズム的な政党が議席を伸ばした。
 多様な意見、少数意見が尊重される必要性は言うまでもないが、参議院は衆議院と違って解散がなく、当選した議員には6年間、税金から莫大な歳費が支払われることも事実。
 政治的疎外感を抱いた人々が、「政治的局面を一挙に変えてくれるリーダーの登場に期待する」(『ポピュリズムの本質』谷口将紀・水島治郎 編著/中央公論新社)現象は、すでに欧米などで顕著になり、社会の分断を招く深刻な事態となっている。

日本でもカリスマ的なリーダー個人が――彼らをポピュリストと呼ぶかどうかは諸説あるにしても――牽引して、新党を立ち上げたり、首長になったりという例が見受けられる。政治のリーダーシップ自体は否定されるものではないが、彼らの権力掌握および行使の仕方に注目すべき段階に来ている。(前出『ポピュリズムの本質』)

 欧米先進国がいずれもポピュリズムの波に見舞われているなかで、日本はこの10年、自公連立政権が政治の安定を維持している。このことは国際社会での日本のプレゼンスを高めているだけでなく、国際秩序や安全保障の面からもグローバルな貢献を果たしてきた。安倍元首相の逝去に世界各国が異例の弔意を示したことは、その象徴でもあろう。
 自民党と公明党という思想も支持層も異なる政党が、高度な選挙協力と政策の合意形成能力で、差異を生かして幅広い民意を拾いあげていることは、政治学の世界でも稀有な例として注目されているのだ。
 第7波が到来したコロナ対策、物価高対策、外交・安全保障。2つの選挙を乗り切った岸田政権は、いよいよこれからその真価を問われる。自民党と公明党には重大な責任感をもって、国民の負託にこたえていってもらいたい。

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