共産党が進める政権構想――〝革命〟めざす政党の危うさ

ライター
松田 明

排外ナショナリズム煽る共産党

 1952年に破壊活動防止法が制定されて以来、民主党政権時代も含め、日本共産党は常に公安調査庁の〝調査対象団体〟であり続けてきた。
 理由は、戦後の日本共産党が「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し、各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしたこと。
 その後も、革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し、暴力革命の可能性を否定しないまま現在に至っていることにある。
※公安調査庁HP「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」
 日本共産党を他の政党と同じように考えてはならない。日本を「社会主義・共産主義の社会」へ革命することをめざす特殊な政党なのだ。
 その日本共産党は、2020年の第28回党大会で党綱領の一部改定を採択した。

 いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流となっている。アメリカと他の台頭する大国との覇権争いが激化し、世界と地域に新たな緊張をつくりだしていることは、重大である。(日本共産党綱領)

 たとえば新たに加えられたこの部分は、中国への対決姿勢を鮮明にし、日本国内の〝反中国ナショナリズム〟を扇動するものだ。
 自公連立政権は民主党政権が破壊した日中関係を完全に修復し、今も米中対立のなかで現実的な安定に努力している。
 だからこそ日本共産党は、日中関係、ひいては東アジア情勢を不安定化させることが、自公連立政権へのダメージになり、自分たちへの追い風になると考えている。
 共産主義政党が「排外的なナショナリズム」を党勢拡大に利用しようとしていることに、国民はもっと注意を払わなければならない。

〝統一戦線〟としての「野党共闘」

 社会主義・共産主義国家への段階として、日本共産党は世界観や歴史観、宗教的信条の違う勢力と〝統一戦線〟をつくることを綱領に明記している。

現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす。(日本共産党綱領)

 そして、先の党大会決議では、あらためて共産党が最終目標として党綱領に掲げる日本の体制転覆――すなわち「社会主義・共産主義社会」への革命と、そのための「民主連合政府(統一戦線の政府)」樹立が叫ばれた。

野党連合政権の実現をはかるとともに、「アメリカいいなり」「財界中心」の自民党政治そのものを終わらせ、民主主義革命と民主連合政府の樹立をめざしている。さらには資本主義の矛盾を乗り越え、社会主義・共産主義社会へとすすむことを展望している。(第28回党大会 第二決議)

 この数年、日本共産党が必死で進めようとしている「野党共闘」は、「野党連合政権」すなわち彼らのいう「統一戦線の政府」をめざすものにほかならない。
 コロナ禍という社会の混乱に加え、立憲民主党など野党の支持率が低迷していることに、日本共産党はいよいよ今が「統一戦線の政府」へのチャンスと意気込んでいる。
 地方組織の弱い立憲民主党にとって、日本共産党が独自候補を立てずに支援に回ってくれることは、当選するための必須要件になる。
 しかし、共産党との連立政権を組むことは、支持団体の連合や党内の保守系議員、国民民主党はもちろん、多くの有権者からも拒絶される。だから、いまだに立憲の執行部は具体的な政権構想(政権の枠組み)を示せないでいる。
 だが4月の3つの国政選挙を共産党に勝たせてもらったことで、立憲民主党は追い込まれてしまった。

「国会内で連立する」という戦術

 5月15日、都内で講演した志位和夫委員長は、

「共産を含めた政権協力の合意が得られるなら、市民と野党の共闘に画期的な新局面が開かれる」と述べた。立民中心の政権ができた場合には「閣内と閣外のどちらもあり得る」と語り、閣外協力に含みを持たせた。(「共同通信」5月15日)

 共産党の存在がネックになって野党の結集が難航してきたなかで、最近、新しい戦術が公然と語られはじめている。
 さしあたって内閣そのものには共産党を入れず、外形的には非共産政権に仕立てる。そのうえで、国会の重要な常任委員長のポストをいくつか共産党に渡して、実質的に国会審議で共産党と〝連立〟するというのだ。
 これなら世論の警戒感が低いまま政権交代を可能にし、一方で共産党は政権運営に影響力を持てる。だが、この選択は「社会主義・共産主義」へ日本という国の体制転換につながる危険なものだ。共産党が党綱領に描いてきたとおりの手順である。

このたたかいは、政府の樹立をもって終わるものではない。引き続く前進のなかで、民主勢力の統一と国民的なたたかいを基礎に、統一戦線の政府が国の機構の全体を名実ともに掌握し、行政の諸機構が新しい国民的な諸政策の担い手となることが、重要な意義をもってくる。(日本共産党綱領)

 立憲民主党が自力では何もできないなか、日本共産党は「野党連合政権」へ主導権を握って着々と外堀を埋めている。
 7月に迫った東京都議会議員選挙でも、すでに立憲民主党と水面下で選挙協力を模索していることが報じられている。
 日本共産党にとって、いよいよ視野に入ってきた〝統一戦線の政府〟樹立へ、今回の都議選はきわめて重要なステップとなるのだ。
 4月21日の「東京オンライン演説会」に登壇した志位委員長は、いつものようにありもしない〝共産党都議団の実績〟を並べ、最後にこう締めくくった。

都議会議員選挙で、首都・東京から、日本共産党躍進をかちとり、続く総選挙で、政権交代を実現し、新しい政権――野党連合政権をつくろうではありませんか。(『しんぶん赤旗』4月23日)

 社会の混乱に乗じ、人々の不安と不満、憎悪、排外的なナショナリズムを煽り立てて党勢拡大を図る政党。その政党が、都議選から衆議院選へ、今や巧妙な方法で〝統一戦線の政府〟樹立への足場を固めている。
 公安調査庁が「破防法に基づく調査対象団体」にしている日本共産党の特殊性と危うさを、有権者はもっと直視すべきである。

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