2月8日投開票となる総選挙がいよいよ始まりました。
2月1日発売『第三文明』3月号からNPO法人ほっとプラス理事・藤田孝典氏の記事を先行配信します。
福祉現場で奔走する藤田孝典氏に、衆議院総選挙と中道改革連合について聞いた。
現政権による無責任な解散総選挙
昨年12月、埼玉県川口市で開催した「なんでも相談会」には、約290件の相談が寄せられました。例年、この時期の相談会では苦境を打ち明ける方が多くいらっしゃいますが、「貯金も底を尽き、もう生きていくすべが見つからない」など、今回は特に悲痛な声が聞かれました。
こうして苦しんでいる人々に対して手を差し伸べるのが政治の役割ですが、果たして現在の政府・与党はその責任を果たしているといえるでしょうか。株価高騰など経済の好調が喧伝される一方で、年金や生活保護といったセーフティーネットは物価高に追いつかず、生活の基盤は確実にやせ細っています。
そして、庶民の暮らしが圧迫され続ければ、人々の心の余裕は失われ、怒りや不満の矛先が高齢者や障害者など、より弱い立場の人々へ向かいやすくなる。そうなれば、社会が一層荒廃するのは避けられないでしょう。
当然、政治の急務は物価高対策であるべきですが、高市早苗政権の選択は、衆議院の解散総選挙という判断でした。国民から託された4年の任期をまっとうせず、生活の困窮が深まるさなかで政局を優先する姿勢は、無責任と言わざるを得ません。
さらに現政権は、解散前に過去最大となる122兆3092億円の来年度予算案を閣議決定しました。しかし、暮らしに直結する分野への配分はさほど増えていないどころか、政府支出拡大が市場に懸念され、円安の進行と長期金利の上昇を招き、国民生活に影響を与えています。そして、この暮らしに直結する予算の年度内成立すら、総選挙の実施で置き去りにしたのです。
民主主義の根幹を成す社会福祉
では、いま政治がふさぐべき「社会の穴」とは何でしょうか。一言で言えば、過剰に市場原理に委ねられた人々の生活の基礎を取り戻すことだと考えます。
私は、その方向性を生活の脱商品化、いわゆる「ベーシックサービス」の提供という言葉で表現しています。教育住宅・医療・介護といった、人間の生活基盤や尊厳に関わるものは、景気動向にかかわらず、誰に対しても無条件に提供されるべきです。
ところが現実には、塾、家賃、医療保険、老後の備えなど、あらゆるものが商品化され、「お金を出せる人だけが安心を得られる」という構造ができ上がっています。さらに深刻なのは、福祉政策、もっといえば社会福祉全体に対する理解が希薄になっていると感じられる点です。
私は最近、社会福祉士として「津久井やまゆり園事件」に関する取材を受けました。この事件は2016年7月、神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で発生した大量殺人で、障害者への差別意識が犯行の原因とされています。残念ながら事件から約10年が経過した現在も、社会はその教訓を十分に生かしているとはいえません。むしろ外国人などに差別の範囲を広げ、「排外主義」を煽るような政治勢力が台頭している状況です。
こうした点を踏まえ、いま最も必要だと感じるのは、社会福祉の理念を再び社会の中心に据え直すことです。本来、福祉とは単に弱い立場の人を救う施策ではありません。「どんな人でも存在そのものに価値がある」との根源的理念を、現実の社会制度として実装する「装置」なのです。
そして、この装置には先人らの強い思い、すなわち国籍・年齢・能力・障害の有無といった条件で人を選別し、排除することを拒絶する強靱な意志が込められています。その意味で社会福祉は、市民が主体者たる民主主義の根幹を成す仕組みといえます。
ベーシックサービスという「思想戦」
福祉の価値が軽視されがちな時代にあって、人間主義を掲げてきた公明党の役割は小さくありません。先般の連立政権離脱についても、私は好意的に受け止めています。思想的・政策的に相反する相手と無理に政権を維持するより、自由な立場に立ち戻り、本来、党が目指してきた「大衆福祉の実現」に全力投球する好機だからです。
今般の新党「中道改革連合」結成も同様です。SNS上では「選挙目当ての野合だ」といった批判も見られますが、表層的な主張に過ぎません。これまで私は、公明党が与野党を問わず、政策連携や合意形成に汗をかく姿を見聞きしてきました。その姿勢があれ、こそ、立憲民主党も本気で動いたのでしょうし、自民党内にもシンパシーを感じる少なくないのではないかと思っています。
成り立ちも支持基盤も異なる勢力が合流する以上、さまざまな課題も生じるでしょう。しかし、福祉の理念を社会の中心に据え直すための「政治の器」をつくる試みとして、今回の新党結成は極めて大きな意味を持っています。恐らく今回の決断は、のちに「歴史的な大仕事」として評価されるはずです。
私が、新党に託したい政策の核心は、やはりベーシッサービスの実現です。昨秋公明党は中道改革の5本柱の1つに、「現役世代も安心できる新たな社会保障モデルの構築」を掲げ、ベーシックサービスの考え方を踏まえた社会づくりを提唱されました。そして今回の新党が、この5本柱に賛同する人々が集まって設立されると聞き、心強く感じています。
ベーシックサービスという言葉自体、まだ十分に認知されていません。むしろ、「うさんくさいバラマキでは」といった誤解が根強い。その背景には、自己責任論の下で「他人や制度に頼ってはいけない」と刷り込まれてきた政治や社会への不信、そして諦めがあります。しかし、ベーシッサービスの本質は、高齢者、障害者、生活困窮者、外国人など、あらゆる人がこの社会の担い手であり、「あなたの苦境を人ごとにしない。政治と社会で何とかする」と明確に伝える仕組みです。
公明党の最大の強みは、たたかれても諦めず、粘り強く前進してきた打たれ強さ”にあると感じています。実現まで長い時間を要すると考えていた給食費の無償化が、加速度的に進んだことはその良い事例です。「子育ては親の責任」という自己責任論に対して、公明党は「子どもは社会の担い手。その子どもに資する給食は社会で支えるべき」と忍耐強く主張してきました。いわば、政治における「思想戦」を展開してきたのです。
ベーシックサービスという社会福祉の一大転換も、まさにこの「思想戦」になることでしょう。ゆえに中道改革連合の皆さんには、その理念を強力に発信してほしいと期待しています。





