ワクチン接種の足を引っ張る野党――立憲と共産の迷走

ライター
松田 明

切り札はワクチンしかない

 立憲民主党の枝野幸男代表が、5月26日のラジオ番組で、

菅義偉首相はワクチン頼みだ。ワクチン頼みでない抑え込みにかじを切らないとだめだ(「日本経済新聞電子版」5月26日

などと発言したことに対し、さすがに失望の声と批判が相次いでいる。
 新型コロナウイルスの感染拡大が全米で最も深刻だったニューヨーク市では、これまでに人口の1割以上が感染し、3万人以上が亡くなっている。ピーク時には1日の感染者数が約8000人にのぼった。
 だがワクチン接種の普及によって状況は一転。5月19日からは飲食店の店内での人数制限も原則なくなるなど、日常を取り戻しつつある。
 一方、およそ1年以上にわたって世界でもっとも感染対策に成功してきたとまでいわれてきた台湾は、その安心感もあってワクチン接種率が1%程度にとどまっていた。
 5月に入って域内での感染者数が急増し、6月半ばまで警戒レベル「3」を継続。学校や娯楽施設の閉鎖、人々が集まる人数の制限も続くという。
 日本でのワクチン接種は各自治体ではじまっているが、接種を加速化するため、政府は自衛隊に要請し5月24日から東京と大阪で大規模接種を開始した。
 コロナ対策の〝切り札〟はワクチンしかないというのが世界共通の認識だ。日本政府と各自治体は接種に全力を挙げており、5月25日には国内の接種回数の累計が1000万回を超えた(首相官邸HP「これまでのワクチン総接種回数」)

「PCR全員陰性」でも発症

 立憲民主党は以前から、なぜかワクチンよりPCR検査にこだわっており、政府が大規模接種センター開設を発表した際も枝野代表は、

国が直接乗り出すならば、むしろ検査の拡大に乗り出すべき(4月28日定例会見

などと発言してきた。
 PCR検査は、検体採取の巧拙によっても精度にバラつきがあり、検査の帰り道に感染してしまったらそれまでである。感染の有無を調べるうえで一定の確率で有用性が望めても、そもそも感染を防ぐ万能薬でも特効薬でもない。
 皮肉にも枝野氏の会見の翌日、4月29日に横浜港を出港したクルーズ船内で陽性者が発生し、ツアーを中止して引き返す騒動があった。このときも乗船者は1週間前にPCR検査を受けて「全員の陰性」を確認していた。
 野党第一党の党首がここにきてなお、政府のワクチン接種推進に疑問を呈し、むしろ検査の拡大をという独自の主張を繰り返す異常な姿。コロナ禍が民主党政権で起きていなくてよかったと思う国民は少なくないだろう。

ワクチン確保への転換点

 日本では、過去に予防接種をめぐる裁判で国の敗訴が連続したことなどもあり、ワクチン開発が進んでこなかった。子宮頸がん予防のためのHPVワクチンの副反応を過度に主張する〝ワクチン忌避〟言説が、一部マスメディアなどでも盛んに流布されている影響も大きい。
 2009年から10年に新型インフルエンザが世界規模で大流行し、国内で約2000万人が感染したが、当時の民主党政権は有識者会議の提言を受け止めなかった。

政府の有識者会議は報告書で、「国家の安全保障という観点から」としたうえで、ワクチン製造業者の支援や開発の推進、生産体制の強化を提言した。
しかし、政府はこの提言を生かせなかった。(「読売新聞オンライン」4月18日

 これは、当時の民主党政権のことを指した記事である。
 昨年7月、各国のワクチン争奪が報じられた際、日本が海外ワクチン確保への交渉に出遅れている理由が「予算の未確保」にあることを突き止めたのは、公明党のワクチン・プロジェクトチームだった。
 7月16日の参議院予算委員会で、医師でもある公明党の秋野公造議員が海外ワクチン確保と国内生産の加速へ予算確保を政府に促した。
 答弁に立った厚労省は、当時の稲津久・厚労副大臣(公明党)が第二次補正予算の「予備費の活用」を明言。ここから日本政府と海外製薬メーカーとの交渉が具体化したのである。
 ファイザー社製のワクチンの第1便が日本に到着したのは2月12日。
 さる5月6日にEU(欧州連合)は、45カ国・地域へ計1億7800万回分のワクチン輸出を承認した。このうちの4割に当たる7200万回分は日本向けだ。

予算に反対した日本共産党

 一方、このワクチン確保の決定打となった第二次補正予算の予備費に、〝反対〟したのが日本共産党だった。
 さらに今年になっても日本共産党の志位和夫委員長は会見で、

ワクチンは感染収束への有力な手段ですが、未知の問題を多く抱えています。(「しんぶん赤旗電子版」2月19日

「ワクチン頼み」になって、感染対策の基本的取り組みがおろそかになったら、大きな失敗に陥ることになります。(同)

などと発言していた。
 日本共産党のワクチン不安を煽り忌避する傾向は顕著だ。
 たとえば2019年7月に一般社団法人「予防医療普及協会」が参議院選挙立候補者に「HPVワクチンの積極的勧奨を早期に再開するべきか」の立場を問うアンケートを実施した際、共産党は32人の回答者全員が「再開すべきでない」と答えている。
 日本共産党は今頃になって、「ワクチンの安全・迅速な接種に国の責任を果たせ」などと上から目線の「緊急要請」なるものを出している。
 今、日本全国で全力を挙げて接種が進んでいるワクチンは、日本共産党が〝反対〟した第二次補正予算の「予備費」で確保されたものだ。
 まったく、どの口が言うのか。日本共産党に、ワクチンについて語る資格などない。

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