醜聞と不祥事が続く立憲民主党――共産との政権協力は白紙

ライター
松田 明

袖にされた日本共産党

 今夏の参院選について、立憲民主党は日本共産党との「政権協力」合意は見送り、1人区での候補者一本化も〝限定的〟におこなうことを決めた。
 両党は昨年の衆院選を前に、もし立憲民主党が過半数を獲得した場合の政権について、日本共産党と〝限定的な閣外協力〟をすることを党首間で合意していた。
 だが、野党第一党が国家観も憲法観も安全保障政策も異なる日本共産党と「政権協力」まで至ったことに有権者は失望。その結果、立憲民主党と日本共産党がそろって議席を減らし、立憲民主党は党創設の執行部が退陣する最悪の事態となった。
 新執行部を率いることになった泉健太代表は、共産党との「政権協力」は衆院選で終わった話という認識を示し、本年1月のNHK番組でも、

立民の政権を構成する政党には共産党は想定にない(「日本経済新聞電子版」1月9日

と明言。「政権協力」は既に存在しないという就任以来の見解を重ねて示した。
 これに対し、日本共産党の志位和夫委員長は、

公党間の公式の合意であり、国民への公約(『しんぶん赤旗』2月6日

と、参院選でも「政権協力」の合意のもとで共闘しなければならないという一方的な主張をなおも続けてきた。
 しかし、各種世論調査でも両党の支持率は振るわず、5月9日の幹事長・書記局長会談で、両党で見解が食い違う「政権協力」は議論を棚上げすることとした。
 日本共産党の小池書記局長は記者会見で、未練がましくこう語った。

日本共産党は維持・発展させるべきと主張したが、合意に至らなかった。さらに、これまでの国政選挙前の政策合意では党首が参加し署名してきたが、今回は書記局長、幹事長による口頭での合意となることも残念だ(中略)1人区での候補者一本化も限定された選挙区で行うことになる(『しんぶん赤旗』5月10日

「政権協力」の合意もかなわず、「政策合意」すら格落ちしたものになり、候補者一本化さえも限定的な範囲にとどまったのだ。
 わずか1年足らず前は「政権協力」合意に大はしゃぎし、野党の盟主のように振る舞っていた日本共産党だったが、わびしく党創立100周年を迎えることになりそうだ。

詐欺で逮捕された県連常任顧問

 一方、立憲民主党には耳を疑うような不祥事や醜聞が噴出している。
 まず、憲法記念日の5月3日、都内で開催された護憲派の集会に、日本共産党は志位和夫委員長、社民党は福島瑞穂党首が出席したが、立憲民主党は首脳陣の参加を見送り、衆院憲法審査会の野党筆頭幹事を務める奥野総一郎衆院議員の出席にとどめた。
 ところが、この奥野氏があいさつの中でウクライナ情勢に触れたあと「ロシアよりも許せないのが今の与党だ。どさくさ紛れに、ウクライナの問題をだしにして、改憲に突き進もうという姿勢は許すわけにいかない」などと発言したのだ。
 ロシアの軍事侵攻を容認するかのようなメッセージとも受け取られかねない軽率な発言である。
 奥野氏は同日夜のBSフジの番組内で「エキサイトした」「言い過ぎた。申し訳ない」などと陳謝して、お粗末な与党批判発言の一部を撤回する羽目になった。
 5日後の5月8日、今度は元参院議員で立憲民主党岐阜県連の常任顧問・山下八洲夫容疑者が詐欺と有印私文書偽造で逮捕された。
 あきれたことに、現職の国会議員になりすまして偽造した「国会議員指定席・寝台申込書」を使用。新幹線の特急券とグリーン券をだまし取っていたことが発覚したのだ。
 山下容疑者は1983年の衆議院選挙に日本社会党から立候補して初当選。その後、1997年に民主党に入り翌年の参院選で当選。これまで衆議院議員を4期、参議院議員を2期務め、2018年に立憲民主党の岐阜県連を立ち上げて常任顧問に就いていた。
 警察の調べに対し、2010年に落選したあとも継続的に期限切れの議員パス(鉄道乗車証)を返納せず不正使用していたことを認め、「昔が忘れられなかった」などと供述しているという。
 立憲民主党は翌9日に山下容疑者を除籍処分とし、泉代表が自身のツイッターや党執行役員会などで謝罪した。

辞職した元議員が〝暴露〟手記を発表

 しかし、立憲民主党の醜聞はさらに続く。
 山下容疑者を除籍した翌日の5月10日。今度は小熊慎司・幹事長代理がゴールデンウィーク中に、国会の許可を得ないままウクライナに入国していたことが発覚したのだ。
 外務省はウクライナ全土を「レベル4」の「退避勧告」に指定している。小熊議員はポーランドなど4カ国への渡航許可を衆議院本会議で取ったものの、許可を取っていない(許可されるはずもない)ウクライナ西部のリビウに入って、その様子を自身のフェイスブックなどでアピールしていた。
 立憲民主党は幹事長名で小熊氏を注意し、1カ月の役職停止処分とした。

小熊氏は「見てこなければいけないという義憤にかられ、計画にはなかったが赴いた」「軽率だった。申し訳ない」などと話しているという。(「時事ドットコム」5月10日

 同じく5月10日、昨年、「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」などと発言したことが問題視され、立憲民主党からの離党と議員辞職に追い込まれた元衆議院議員・本多平直氏が『文藝春秋』に手記を発表した。
 問題とされた「発言」が立憲民主党内で〝捏造〟され外部に流出したものだったという経緯を公表したのだ。
 この手記の中で本多氏は、立憲民主党の「性犯罪刑法改正に関するワーキングチーム」座長の寺田学議員の名前を挙げ、寺田氏が虚偽の発言を捏造して流出させたと告発している。

寺田座長は、私と同様の主張をしていた他の議員の発言についても、勝手に 悪意ある要約をしてネットに掲載するなどしていた。(note「文藝春秋デジタル」5月10日

 さらに本多氏は、当時の福山哲郎幹事長から「言った、言わない、の議論になれば、あなたが不利だよ」と、「発言」を認めて謝罪するよう指示されたこと。それであれば釈明のための記者会見を開きたいと要求したが、福山幹事長から「火に油を注ぐのでやめたほうがいい。どうせ本多さんは、何でも反論するでしょう」と阻止されたことを暴露している。
 旧民主党勢力はともかく合意形成ができない。政権を獲るなり内紛を繰り返した。政権の座から滑り落ちたあとは、さらにエキセントリックさを募らせ、分裂と野合を延々と繰り返してきた。
 今回の本多氏の暴露手記は、立憲民主党が党内の意見の対立さえ収拾できず、意見の異なる者には謀略を仕掛けてでも追い落とす実態を糾弾したものだ。
 わずか1週間のうちに4つもの不祥事と醜聞が噴出した立憲民主党。もはや単なる選挙互助会であり、政党の体さえなしていない末期的状態だというほかはない。

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