2021年「永田町の通信簿」②――広がった日本共産党への疑念

ライター
松田 明

「国際共産党日本支部」

 日本共産党は2022年で創立100周年を迎える。現存する国政政党としては一番歴史が古い。
 ただし、その出発がコミンテルン(共産主義インターナショナル)日本支部だったということを知っている人はあまり多くないだろう。

戦前の「赤旗」――創刊当初はアカハタではなくセッキと音読みで読んでいました――にも、発行元は「国際共産党日本支部」であるとちゃんと書かれています。(佐藤優・池上彰『真説 日本左翼史 戦後左派の源流1945-1960』講談社)

 ソ連は世界各地での共産革命化を図ったが、国家がそれをやれば主権の侵害、内政干渉になる。そこで建前としてはソ連政府と関係のないコミンテルンという国際組織が各国の支部を指導するという体裁にしたわけだ。
 戦後は連合国軍総司令部によって非合法を解かれたものの、日本国憲法が帝国議会で審議された際、政党として唯一、この日本国憲法に「反対」したのが日本共産党だった。
 日本共産党が党綱領から「君主制の廃止」を削除し、ようやく日本国憲法の全体を容認したのは2004年1月のことだ。もちろん、今も象徴天皇制に反対する姿勢は崩していない。
 近年ソフト路線を掲げ、あたかも「護憲の党」「平和の党」であるかのように宣伝しているが、日本共産党は日本国憲法の制定に反対した唯一の政党であり、今も綱領に日本国憲法とは異なる「社会主義・共産主義の社会」の実現を掲げる革命政党だ。国政政党のなかで日本の〝体制の転換〟をめざしているのも日本共産党だけ。
 しかし創立99周年となった2021年は、さまざまな意味で日本共産党のこうした〝素顔〟が多くの国民に知られる1年となった。

コロナ対策に徹底して反対

 まず衝撃的だったのは3月に大阪で起きた「偽装ファックス」事件。大阪府と大阪市の広域行政一元化をめざす条例案をめぐり、公明党大阪市議団の十数人の議員のもとに「40年来の支持者」を名乗る匿名の人物から「賛成したら、今後一切投票しません」という脅迫のファックスが届いた。
 印字されていた発信元は日本共産党の阪南地区委員会。動かぬ証拠がマスコミに知られると、日本共産党は送信者が同委員会の副委員長だったことを明らかにした。この人物は過去に3度連続、日本共産党公認候補として衆議院選挙に出馬している。
 新型コロナウイルスのパンデミックのなかで、これまで対策の優等生といわれてきた韓国でも過去最多の重症者数が続いており、中国でも12月23日に人口1300万人の西安でロックダウンが実施された。英国やフランスではクリスマスを過ぎても1日10万人を超す新規陽性者が続いている。
 日本が現時点で感染再拡大を遅らせることができているのは、国民の行動抑制とG7でもっとも高いワクチン接種率の相乗効果ではないかという見方が多い。
 コロナ禍で国民の不安と不満が高まったこの2年、日本共産党にとって政権に打撃を与える絶好のチャンスだった。同党は、政権与党が打つコロナ対策にあれこれ口実をつけては足を引っ張った。
 海外メーカーのワクチン確保には、公明党の提案で2020年度第2次補正予算の予備費が使われたが、この予備費をやり玉に挙げて第2次補正予算に反対したのが日本共産党だった。
 ちなみに持続化給付金予算の積み増しや家賃補助制度創設の費用も、この第2次補正予算に含まれている。立憲民主党、国民民主党、社民党は賛成したが、日本共産党はこれに反対した。
 さらに、注射器の買い上げやワクチン無料接種、検査体制拡充の費用を盛り込んだ第3次補正予算にも日本共産党は反対した。
 また、海外の臨床試験データに基づいて政府がワクチンの特例承認をしようとした際も、立憲民主党と日本共産党はこれに猛反対。

こうした野党の強い反発などもあり、政府は「特例承認制度」の活用を断念。承認にかなり時間を要することとなった。それが尾を引き、日本の接種開始時期はイギリスが世界で最初に承認した時期から約3カ月遅れとなった。その時はすでに70を超える国や地域で接種が進められていた。G7の中でも最も遅い接種開始となったのである。

しかし、ワクチン慎重派だった立憲や共産党はその後、国会で豹変し、菅政権のワクチン接種の遅れを舌鋒鋭く追及した。(「AERAドットコム」6月17日

命取りとなった「閣外協力」

 総選挙が近づくと、日本共産党は2015年以来唱え続けてきた「野党連合政権」樹立へ、立憲民主党に「政権協力」の言質を迫る。菅内閣の支持率が上がらない様子に、いよいよ政権交代が視野に入ったと考えたのだろう。
 公安調査庁は日本共産党を、〝革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し、暴力革命の可能性を否定することなく現在に至っている〟と認定(公安調査庁HP)。現在も一貫して「破防法に基づく調査対象団体」にしている。
 このことが徐々に多くの国民の知るところとなると、日本共産党は9月8日の第3回中央委員会総会で「敵の出方論」という表現を今後は使わないと決めた。理念を捨てたのではなく、あくまで〝表現を使わない〟ことにしたのだ。
 しかし、日本共産党が1951年に武装闘争路線をとって国内各地で殺人やテロ、暴動を起こし、それが契機となって52年に破壊活動防止法が制定され、公安調査庁が発足したことはまぎれもない歴史的事実である(参考記事:「日本共産党と『暴力革命』――政府が警戒を解かない理由」)
 9月30日の党首会談で、立憲民主党が政権を獲った際に日本共産党が「閣外協力」すると合意された。
 この異常な事態に、これまで立憲民主党を支持してきた連合などが猛反発。結局、総選挙では立憲民主党と日本共産党だけが議席を減らし、立憲民主党は党創設メンバーが執行部を辞任する最悪の結末となった。
 比例票850万を目標にしていた日本共産党も、4年前の440万票から416万票に減らす大敗北。
 結党99年にして初めて野党第一党から「閣外協力」の言質を得て高揚感の絶頂にあった日本共産党にとっては、〝天国から地獄へ〟を絵に描いたような2021年となった。
 しかし執行部が責任を問われるわけでもなく、日本共産党はあくまで「革命」に向けて進むつもりだ。2022年は参院選のほか、沖縄県知事選、名護市長選、宜野湾市長選、那覇市長選などが続く。
 社会を分断し、人々の負の感情を求心力にして勢力拡大を図る同党の動きに、これまで以上に警戒心をもっていきたい。

2021年「永田町の通信簿」:
2021年「永田町の通信簿」① 信頼失った立憲民主党
2021年「永田町の通信簿」② 広がった日本共産党への疑念
2021年「永田町の通信簿」③ 真価を発揮した公明党

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