「共産党偽装FAX」その後―浮き彫りになった体質

ライター
松田 明

ピタリと止まった意見FAX

 日本共産党の大阪府幹部(阪南地区委員会副委員長)が、公明党支持者に成りすまして10数人の公明党大阪市議に「広域行政一元化条例への反対」を要求する偽装FAXを送り付けていた事件。
 公明党市議がツイッターに現物の画像をアップし、波紋が広がりはじめると、共産党阪南地区委員会はホームページ上に〈公明党大阪市議への「要望書」の送付について〉(3月21日)という「声明」を発表。この偽装工作をやったのが矢野忠重副委員長(当時)であることを認めた。
 この矢野忠重氏は過去25年間、泉大津市長選挙、大阪府議会議員選挙、3回の衆議院議員選挙に、いずれも共産党の推薦/公認として立候補している人物。
 ことと次第では衆議院議員になっていた共産党の地元の〝大物〟が、他党の「40年来の支持者」を詐称し、10数人の議員に宛てて〝賛成したら今後一切投票しない〟と脅して、議会での採決を曲げるように迫っていたわけである。
 広域行政一元化条例は、大阪府議会(3月24日)に続き大阪市議会(3月26日)でも可決成立した。
 ただ、議論の過程では「反対」や「不安」を表明する電話やFAX、SNSなどが、公明党大阪府本部などにも寄せられており、同本部では貴重な意見としてすべて記録してきた。
 複数の匿名者から、条例への反対を求める電話を受けた公明党大阪市議もいる。
 ところが、共産党による偽装工作が3月21日に各マスコミで報道されると、なぜか奇妙な現象が起きた。

不思議ですが、この報道以降、大阪府本部への今条例案についてのFAXは0件です。(公明党大阪府本部スタッフのツイート/3月23日

自宅ポストに投げ込まれた「謝罪」

 公党の役職者が〝偽メール〟ならぬ〝偽FAX〟で採決を曲げるよう脅迫してきたという点だけでも看過できない事件である。
 だが、それにも増して容認しがたいのは、日本共産党の対応であろう。
 徹底した上意下達の政党である共産党にあって、公明党やマスコミに宛てた〝謝罪〟が上層部を介さず当該の地区だけの判断でおこなわれることなどあり得ない。また、ことの重大さを考えれば、どの党であれあり得ないことだ。
 ところが、共産党はこの偽装事件が大きく報道されても、党中央はもちろん、大阪府本部さえ公式コメントをせず黙殺を続けている。
 先に阪南地区委員会が発表した「声明」には、

地区常任委員会は、ただちに矢野忠重を副委員長から解任するとともに、公明党市会議員団への謝罪文(別紙参照)を出しました。文書は、20日に届けましたが、直接お会いすることは出来ていません。

とある。
 常識的に考えれば、相応の責任ある立場の人間が、公明党大阪府本部なり市議団の控室なりを訪問して、謝罪文を手渡すのが公党としてのモラルだろう。
 コロナ禍とはいえ、国会でも地方議会でも、種々の申し入れや会談は対面でおこなわれている。
 だが、共産党の謝罪のしかたは非常識きわまりないものだったようだ。

公明市議団の小笹正博団長の自宅には「とりあえず謝罪文をお届けします」との手書きのメモが入れられていた。(「公明ニュース」3月23日

「謝罪と言っても、ポストに謝罪文が投げ込まれていただけ」と聞いています。

「日本共産党 大阪府委員会にも連絡をいれたが、悪いことをしたとか、反省するそぶりはまったくと言っていいほどなかった」とは、大阪の報道関係者から。

大阪府本部で知りえている情報は以上のみです。(公明党大阪府本部のツイート/3月23日

 言うまでもないが、個人に責任を押しつけて、共産党が逃げてよい話ではない。あるいは、

公明党市会議員・団にも不快な思いをさせた(前述の阪南地区委員会「声明」)

などと意図的に事件の性質を矮小化すべきでもない。
 3度も衆議院議員候補に擁立された幹部が、悪質な偽装工作で議会の採決を曲げようとしたのだ。民主主義を揺るがす話であり、しかるべき責任者が国民の前に出て謝罪をするのが公党としての当然の姿であろう。
 しかし、共産党はそれをしない。

「国民が知る努力が必要」

 折しも、ツイッター上では「#国民が日本共産党を知る努力が必要」なるハッシュタグが広がった。もともとは同党の支持者が、日本共産党は独裁ではないと擁護するツイートのなかで「国民が日本共産党を知る努力が必要だと思います」と述べたのがきっかけだ。
 だが皮肉なことに、このハッシュタグには共産党がこれまでおこなってきたさまざまな忌まわしい事案が投稿されるようになった。
 さる2月26日に「日本共産党と破壊活動防止法について」の質問主意書を提出した鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)に対し、政府は、

日本共産党は現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である。(答弁書 令和3年3月9日

との答弁書を出した。
 鈴木氏は自身のブログに、

破壊活動防止法の調査対象団体である共産党はメディアを通じ、ソフト路線、柔軟路線を打ち出しているが、公安当局は今もって警戒している。この事実を国民は広く知らなければならない。(「ムネオ オフィシャルブログ」3月10日

と綴っている。たしかに、国民が日本共産党の本質を知る努力はもっと必要だろう。

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