7連敗した「オール沖縄」――離反者が止まらない実態

ライター
松田 明

現役世代は過半数が知念氏に投票

 10月23日に投開票がおこなわれた那覇市長選挙で、自民・公明が推薦する知念覚氏が当選した。城間幹子・元市長の任期満了に伴う選挙。玉城デニー知事ら「オール沖縄」勢力が支援した翁長雄治氏は約1万票差で敗れた。

 復帰50年の「選挙イヤー」は七つの市長選全てでオール沖縄が敗れる結果となった。オール沖縄にとって県都を落とした影響は計り知れない。(「沖縄タイムスプラス」10月24日

「オール沖縄」勢力は、7月の参院選と9月の知事選には勝ったものの、名護市、南城市、石垣市、沖縄市、宜野湾市、豊見城市、那覇市と、今年おこなわれた市長選でことごとく敗北したことになる。
 この勝敗の構図は、県民が基地問題の解消を願いつつも、暮らしの向上を最重視していることを示している。沖縄タイムスが那覇市民に実施したアンケートでも、市民が一番重視したのは「経済振興」で34%。「基地問題」は17%にとどまった。

「経済重視」の民意は新型コロナウイルス禍で加速した。22年の選挙では、基地問題を軸に国との関係を問う参院選と知事選でオール沖縄が連勝した一方、足元の暮らしへの関心が高い首長選は7つの市長選の全てで自民、公明両党が推す候補に軍配が上がった。(『日本経済新聞』10月24日

 沖縄県と国が対峙する国政選挙や知事選挙では「辺野古移設」が最大の関心事になったが、より暮らしに直結する市長選挙では、有権者は経済政策の能力を優先したのだ。
 このことは、NHKが集計した年代別の投票行動にもあらわれている。10代から50代までの現役世代では、すべての年代別で知念氏が過半数を獲得。とくに30代では約70%が知念氏に投票した。
 一方、60代と70代以上では過半数が翁長氏に投票。70代以上では約60%が翁長氏を支持している。
 これは2021年の衆議院選挙で全国的に見られた傾向と同じ。現役世代は過半数が与党を支持し、60代以上になると立憲民主党と日本共産党への支持が過半数を占める。
 仕事や子育てに直面する世代は経済や教育、社会保障政策を重視して自民・公明を支持。高齢世代になるほどイデオロギー的な政策を重視して立民・共産を支持する。

すっかり変質した「オール沖縄」

 今回の那覇市長選は、「オール沖縄」の内実を厳しく問う結果にもなった。
 そもそも「オール沖縄」とは、辺野古移設新基地などをめぐって那覇市長(当時)だった翁長雄志氏が2012年頃から提唱したもの。自民党県議から那覇市長になった保守政治家の翁長氏は、基地問題に対して〝保革を越えた沖縄〟を掲げて2014年には県知事となった。
 しかし、その〝保革を越えた〟はずの「オール沖縄」が、実際には日本共産党など革新勢力に牛耳られていく。沖縄経済界の中心者として翁長氏の「オール沖縄」を支えた平良朝敬氏(かりゆしグループ会長)は、その実態に絶望して2018年に「オール沖縄」から離れた。

共産党が主導権を握る革新陣営は沖縄の発展や県民の暮らしなどは考えず、基地問題だけに固執しています。(『第三文明』9月号)

 今回、その「オール沖縄」は故・翁長雄志知事の息子である翁長雄治氏を候補者に担ぎ出した。
 ところが告示4日前の10月12日、翁長雄志氏の後継として「オール沖縄」の支援で那覇市長を2期つとめてきた城間幹子・現市長が、自公の推薦する知念覚氏への支持を表明する。

自身を「保守中道」と位置づける城間氏は、革新色が強まるオール沖縄に懸念を抱いていた。知念氏の事務所を訪ねた12日には「オール沖縄を形成して出発したあの時に戻りたい」と語った。(『日本経済新聞』10月24日

「オール沖縄」が、出発点であった故・翁長雄志知事の掲げた理想と乖離し、日本共産党に引きずられて基地問題だけを争点化する現実に、内部からの離反が止まらなくなってきたのだ。

揺らぐ玉城デニー県政の足元

 事実、投票日前日も日本共産党の志位和夫委員長はツイッターに那覇市長選に関するメッセージ動画を投稿したが、語られていたのは辺野古新基地の話のみ。「辺野古の問題は沖縄全部の問題です。県都那覇の問題です」(志位委員長、『しんぶん赤旗』10月22日)という理屈だった。
 知念氏の勝因について地元紙『沖縄タイムス』は、

 翁長雄志県政で副知事として「オール沖縄」側に身を置いた浦崎唯昭、安慶田光男両氏、城間市政で副市長を務めた久高将光氏らの支援を取り付けたことも大きかった。経済界も一枚岩となり、かつて自公と対立した金秀グループの呉屋守将会長、かりゆしグループの平良朝敬会長も支援に回った。さらには市議会で是々非々だった中立市議らも水面下で知念氏を応援した。
 革新地盤とされる首里地域でも、首里出身の知念氏の同級生らが積極支援する動きが見られた。(「沖縄タイムスプラス」10月24日

と報じている。
 要するに、これまで「オール沖縄」の側にいた翁長県政時代の副知事らも、翁長氏の後継市長である城間市長も、その副市長も、かつては自公と対立していた沖縄経済界も、那覇市議会の中立勢力も、那覇市内で革新地盤とされた地域も、すべてが「オール沖縄」から離反した結果なのだ。
 故・翁長知事の掲げた理想とは正反対に、日本共産党に引きずられてイデオロギー色を強め、〝国との対決〟だけに県民を動員しようとする「オール沖縄」。今回の那覇市長選は、その「オール沖縄」の変質と瓦解を象徴するものになった。
 9月に再選された玉城デニー知事だが、県下11市のうち10市まで「オール沖縄」が敗北したことで、その足元は大きく揺らいでいる。

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