「維新の議員もやってるから問題ない」
本来、議員となった者たちが全額自己負担で納付しなければならない国民健康保険料と国民年金。それを、わずかな報酬の社団法人の「理事」に就任することで、安い社会保険料で済ませるという法の抜け穴を使った悪質な手口。
こうした手口を自身の「ビジネス」として作り上げ、宣伝・勧誘していた者も日本維新の会の関係者。自分の支払う社会保険料を減らしたくて、その「理事」に就任していた者も日本維新の会の現職議員。
日本維新の会に浮上した「国保逃れ」について、1月6日の朝日新聞が生々しい記事を掲載している。
大阪府内に住む30代の個人事業主の男性に、スーツ姿の男性が近づき、国民健康保険料(国保料)の話を切り出してきた。
この事業主が男性の名刺に目を落とすと、こんな言葉が躍っていた。
「個人事業主向け社会保険サービス」
「いくら稼ごうが国民保険+国民年金=34000円/月固定」
事業主は普段、上限額いっぱいの国保料を納めている。「正直、国保料は高い」と不満をもっていたが、保険料が低減されるような文言をみて直感的に「ほんまにそんなことができるんか」と怪しんだ。
そんな気持ちを感じ取ったのか、男性はこう語ったという。
「維新の議員さんもやっていますから問題ないですよ」(『朝日新聞』1月6日)
中間報告で議員の「脱法行為」を認定
日本維新の会の所属議員による「国保逃れ」疑惑について、1月7日、同党の藤田文武共同代表と中司宏幹事長は記者会見をおこない、党内調査の中間報告として、現時点で同党所属の4人の地方議員が文字どおりの「国保逃れ」をしていた事実を認めた。
中司幹事長の説明した概要は以下のとおり。なお、問題となったのは一般社団法人「栄響(えいきょう)連盟」である。
②特別党員807名のうち、回答者は803名。(回答していない)入院中の方などについては引き続き党本部でヒアリングをおこなっている。
③首長である知事・市長19人を差し引いたうえで、364名が国民健康保険ではなく社会保険の加入者であった。割合にして45.3%になる。
④(今回、疑惑が指摘された)一般社団法人栄響連盟または類似法人への関与を認めたのは8名。そのうち栄響連盟が4名であった。
⑤栄響連盟の存在を知っていたと回答した者は49名。
⑥「支払う社会保険料の削減」を目的に、栄響連盟または類似の法人に勧誘されたことがあると回答した者が19名。
⑦「維新関係者から勧誘があった」との回答が13名あった。
⑧栄響連盟の理事に就任していたことが確認されたのは、
長崎寛親(兵庫県議)
赤石理生(兵庫県議)
長﨑久美(尼崎市会議員)
南野裕子(神戸市議)
⑨東京維新の会で、昨年7月に元区議会議員が「国保料を下げる提案」をLINEグループ上でおこなっていた事実が確認されている。この件については経緯および内容を現在も調査中。
⑩栄響連盟の4名は「理事として一定の業務をおこなっていた」と主張しているが、現実には、議員報酬よりも著しく低額な役員報酬を基準とした社会保険料しか支払っていなかった。その結果、議員報酬を基準とした国民健康保険料よりも低額な保険料となっており、こうした外形的事情から見て、結果として「応能負担」という現行制度の趣旨を逸脱している。
これは、「国保逃れの脱法的行為と捉えられるもの」であり、国民の納得を得られるものではない。
⑪現時点までの調査では、党の組織が指示をしたという意味での組織的関与を示す事実は確認されていない。
⑫議員の兼職が認められている以上、社会保険への加入自体がただちに問題となるわけではない。しかし、明らかに「制度の趣旨を逸脱する国保逃れのような脱法的行為」は容認できず、関与した者については処分の対象として検討する。
⑬現在も調査を継続しており、最終調査結果を踏まえた上で、対応および判断を順次おこなう。国保逃れの脱法的行為と捉えられる事態を招き、国民の納得を得られない結果となったことについて、心よりお詫び申し上げる。
「自己申告」にすぎない〝調査結果〟
すでに国会でも取り上げられているように、この問題の根深さと悪質さは、そもそも収入に応じて負担すべき社会保険料を減らすことを目的に、一般社団法人が設立されていること。
しかも、その代表者は日本維新の会の衆議院議員の元秘書であり、日本維新の会の公認候補として兵庫県議会選挙にも立候補した人物であること。
こうした〝脱法的な国保逃れスキーム〟を維新の現職議員たちが利用し、勧誘に「維新の議員も多数利用しているから問題はない」という語り口が使われていること。
さらに、関西だけでなく東京でも日本維新の会の元区議が、やはり議員の社会保険料を脱法的に下げることを「業務」とした法人を運営し、その悪質な手口を維新議員らのLINEグループで宣伝して勧誘していることだ。
もはや、個人の起こした不祥事という域を完全に超えて、日本維新の会のなかで〝組織ぐるみ〟の脱法的な「国保逃れ」が常態化していたといって過言ではない。
中司幹事長は、日本維新の会が組織として指示をした事実はないから「組織ぐるみではない」と弁明したが、そんなものは言い訳にもならない。
「身を切る改革」を標榜し、社会保険料の引き下げを〝改革〟とやらの看板にしていた政党の議員たちが、実際には仲間内で手を貸し合い、悪びれもせず身内を勧誘し、自分の払うべき社会保険料だけを脱法的な方法で逃れ、そのツケを国民に回していたのである。
しかも、今や日本維新の会は国政で政権与党なのだ。
自民党の政治資金不記載問題で国民の政治不信が高まり、公明党が自民党との連立に区切りをつけたばかりというのに、新たなパートナーとなった日本維新の会にも重大な「政治とカネ」の不祥事が噴出した。
調査をおこなったといってもアンケートによる「自己申告」に過ぎず、国民健康保険に入っていない364名もの議員1人1人が、「主たる収入」に見合った社会保険に加入しているのかどうかは、まったく明らかではない。
不祥事の絶えない維新の体質
維新内では昨秋以降、政治資金の不適切な支出が相次ぎ発覚するなど、問題が続いている。野党からは「身を切る前に自腹を切れ」と冷ややかな声も上がっている。
維新は、2023年の統一地方選で地方議員を大幅に増やしたものの、その後、不祥事などで離党や議員辞職が相次いだ苦い記憶がある。25年6月には、党内に設置した有識者委員会が、党の統治指針「ガバナンスコード」の制定などを求めたものの、その後の具体化は進んでいない。(『読売新聞』1月8日)
朝日新聞は「維新『国保逃れ』 改革語る資格あるのか」と題した社説を掲載。
維新が今回、全特別党員(国会・地方議員、首長、公認候補予定者)約800人にアンケートをしたところ、半数近い364人が国保ではなく、社保に加入していた。他に脱法的なケースがないか、自己申告に任せず、党として主体的な調査が不可欠だ。(『朝日新聞』1月9日「社説」)
と同党の調査方法の甘さを指摘。
維新をめぐっては、議員倫理に反する言動や党のガバナンスの甘さが、繰り返し指摘されてきた。最近も、藤田文武共同代表が、公設秘書が代表を務める会社に業務を発注し、政党交付金などから支払いをしていたことが「公金の私物化」と批判を浴びた。
今回の国保逃れは、社会保障制度に対する国民の信頼を揺るがしかねない。維新を連立のパートナーに選んだ自民党にとってもひとごとではいられないはずだ。徹底した解明を求めねばならない。(同)
と、不祥事を繰り返す日本維新の会のモラルの低さを厳しく批判している。
産経新聞も「議員の国保逃れ 維新は厳正な処分を下せ」と題する社説を掲載。
改革政党を自任する維新は議員の「身を切る改革」を掲げ、自民党との連立政権のもとで社会保険料の軽減を重要政策としている。
にもかかわらず4人が国保への加入を回避し、自身の保険料納付を大幅に軽くしたことは許されない。(『産経新聞』1月10日「社説」)
繰り返すが、この「4名」というのは、あくまでアンケートに対する自己申告によるものでしかない。政権与党の内部で「国保逃れ」の脱法的な手法が使われ、大胆な勧誘までおこなわれていたのである。
本来なら、国民への説明責任を果たすためにも、残る議員が身の潔白を証明するためにも、第三者機関による徹底した調査が必要なはずだ。
社会保障の持続性向上を公約に掲げながら、自らの負担は回避する。政治家にあるまじき卑劣な振る舞いと言うほかない。
(中略)
調査対象の議員や首長ら約800人のうち、半数近くが社保に加入していた。自己申告によるおざなりな調査で幕引きを急ぐようでは、不信は深まるばかりだ。
維新は与党入り以降も、政治資金の不適切支出などが相次いで発覚している。ガバナンス(組織統治)不全は深刻である。(『毎日新聞』1月11日「社説」)
もちろん、議員が兼職をしていること自体は条件付きながら合法であるし、プライバシーの問題もあるから、個々人がどこからいくらの収入を得て、いくらの社会保険料を支払っているかという具体的事実まで公表しろとは言わない。
だからこそ、党とは利害を共有しない立場の弁護士や税理士など専門家のチームに情報を開示して、4名以外に〝脱法的手口〟を使った者がいるのかいないのか明らかにする責務がある。
1月8日になって吉村洋文代表は自身のXで謝罪の弁を述べたが、「遅すぎる」「時間稼ぎをしているだけではないか」「まともな組織なら会見を開いて謝罪するぞ」といった批判が集まった。
「違法でなければいい」という感覚
これまでも「横領」「買収」「秘書給与詐欺」「暴行傷害」「セクハラ」「パワハラ」「不同意性交」「署名偽造」「請願文書偽造」「公職選挙法違反」「情報漏洩」「道交法違反」など、耳を疑うような不祥事と除名処分が絶えなかった日本維新の会。
日本維新の会の生みの親である橋下徹氏は、1月11日に出演したテレビ番組でこの「国保逃れ」に言及し、次のように話した。
最悪ですね、言語道断。ただ違法ではないんですよ。個人の事業主、世の中の個人の事業主の皆さんがこの手法を使っていることはよくあります。それは違法だということで摘発まではできてないんですよ。
じゃあいいのかってことですよ。維新の今のカネにまつわる問題の根源は、禁止ルールがなければいいんだ、違法でなければいいんだという意識がはびこっていると思う。(フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」1月11日放送)
そして、こうした日本維新の会の体質的問題ともいえる不祥事の連鎖の根源が、吉村代表や藤田共同代表らリーダー自身の倫理観の欠如にあることを批判した。
その根源は、僕がずっと言っていた藤田代表の身内企業への発注問題。藤田さんは代表という立場でありながら、これはどこから見ても適法なんだと。民間だったらいいんですが、政治家とか税金でご飯食べてる立場の人はこういうことをやっちゃいけないと思ってもらわないといけない。
そういうセンサーを持たないといけないんです。それがやっぱり吉村さんも藤田さんも、これはどこからどう見ても適法だと。外から見たら疑われるからやめますとは言ってますけれども、そうじゃなくて根源的にこういうことはダメなんだよということをトップが強烈なメッセージを出さないと。
だから僕は飲み食いについてもずっと文句言ってましたけれども、あれだって違法じゃない、国会議員同士のお金の配り合いも違法じゃない、でもみんなそれは違法じゃないけれどもやっちゃいけないでしょっていうセンサーを働かせないといけないのに、これが弱いというところが維新のこういう問題の元凶だと思いますね。(同)
国民の負担を増やした政党
日本維新の会は、一方でOTC類似薬(薬局で購入できる薬)の保険適用除外を選挙公約に掲げてきた。
患者の自己負担額が急に数倍に増えることになり、さすがに自民党が配慮を主張して、今回は保険適用を続けつつ、処方箋を受けた患者に薬剤費の4分の1の追加負担を求める与党案として2026年の通常国会に出すという。
1月9日、丸山達也・島根県知事は定例会見で、そんな制度を推進する日本維新の会が、一方で「国保逃れ」をしていた事実を厳しく批判した。
維新という政党はですよ、こんなことが起きてるのに何もしてない。自分たちは本当にOTC類似薬の自己負担を増やすという制度をやった政党だという認識はあるのか。高額療養費だって、主導してはいないけど了承した与党としての認識はあるのか。これ予算に反映されてますからね。高額療養費は確か8月から、OTC類似薬は3月から。だから来年度中の話ですよ。
(中略)
国民に「身を切る改革」って言って、国民負担を増やすことをわかってて、こんなことをやってる。政党の代表が辞任するか、もうOTC類似薬やっぱり負担増をやめますとか。
(中略)
申し訳ないけど、普通に考えたら、もうこれで「議員定数の削減」とか通すべきじゃないでしょ。そんなこと言う資格ないでしょ。「身を切る改革」なんて言う資格ないってことですよ。何の責任も取らずに。(「島根県知事 定例記者会見」1月9日)
吉村代表は1月8日に投稿した自身のXで、「現在、最終の事実調査、確認中です。近々、党としての最終の方針、発表をさせて頂きます。」と記した。
この問題が大阪府議会で告発されたのは12月10日であり、すでに1カ月以上も経過している。いつまで時間稼ぎをするつもりなのか。
くれぐれも検証しようのない「自己申告」の結果報告ではなく、第三者による検証を経た調査結果に基づいた発表をすべきである。
それすらできないような政党に「身を切る改革」だの「社会保険改革」だのと語る資格はない。
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