都でパートナーシップ制度が開始――「結婚の平等」へ一歩前進

ライター
松田 明

《「東京都にパートナーシップ制度を求める会」山本代表と懇談する都議会公明党の高倉氏ら(2021年6月8日付「公明ニュース」より)》

全国初、オンラインでの申請と発行

 11月1日、東京都は「パートナーシップ宣誓制度」を開始した。
 この制度は、LGBTQなど性的マイノリティのパートナーシップ関係を東京都が公認するもの。
 対象となるのは、以下の要件をすべて満たしているケースで、国籍は問わない。

●「双方又はいずれか一方が性的マイノリティであり、互いを人生のパートナーとして、相互の人権を尊重し、日常の生活において継続的に協力し合うことを約した二者である」と宣誓したこと。
● 双方が成年に達していること。
● 双方に配偶者(事実婚を含む)がいないこと、かつ、双方以外の者とパートナーシップ関係にないこと。
● 直系血族、三親等内の傍系血族又は直系姻族の関係にないこと(パートナーシップ関係に基づく養子縁組により当該関係に該当する場合を除く)。
● 双方又はいずれか一方が「都内在住、在勤又は在学」であること(都内在住については、双方又はいずれか一方が届出の日から3か月以内に都内への転入を予定している場合を含む)。

 申請から受理証明書の発行まで、全国で初めてオンラインで可能となった。すでに10月11日から申請受付が始まり、制度開始の11月1日時点で177組が申請したという。

制度によって可能になること

 では、この「受理証明書」が発行されるとどのようなことが可能になるのか。
 まず住宅関連では、都営住宅、都民住宅、公社住宅などへの入居申請がパートナーとしてできるようになった。
 医療関係では、東京消防庁がおこなう「死者に関する情報提供制度」「搬送先医療機関に関する情報提供制度」の対象として、それらの情報提供を受けることができる。また、都立病院でのインフォームド・コンセント(患者・家族と医療者が病状や治療について十分な情報を得たうえで合意すること)の理念に基づく診療情報の提供は、必ずしも証明書の提示を必要とはしないが、証明書によってより円滑になると期待される。
 ほかに、里親の認定登録、犯罪被害者遺族への見舞金給付、各種カウンセリング、霊園貸付事業などが受けられるようになった(「東京都パートナーシップ宣誓制度受理証明書等により利用可能となる施策・事業一覧(都事業等)」)。
 さらに民間の事業では、この証明書によって複数の保険会社が生命保険、損害保険、自動車保険などで、同性パートナーを従来の「配偶者」として取り扱う。銀行や携帯電話会社のなかにも、住宅ローンの連帯債務型借り入れや家族割の適用を認めるところがある(「同(民間事業)」)。
 もちろん、パートナー関係を解消した場合や、転居・転職・卒業などで先に挙げた要件を満たさなくなった場合は、都に届け出なければならない(いずれか一方からの届け出で可能)。

すべての人に関わる問題

 この「パートナーシップ宣誓制度」が開始された11月1日は、社会に広く啓蒙する意味を込めて都庁とレインボーブリッジが、レインボーカラーにライトアップされた。
 すでに先進主要7カ国(G7)のうち、日本以外の国では同性婚が認められている。世界全体では31カ国・地域(2022年10月時点)で実現しており、アジアでも2019年に台湾で実現した。
 この間、とくに欧米諸国では同性婚(same-sex marriage)という概念から「結婚の平等」(marriage equality)という考え方にシフトしてきた。〝同性同士の結婚〟を認めるか否かという議論ではなく、すべての人が平等に結婚の権利を得られて当然だという考え方だ。
 2021年3月の朝日新聞の電話世論調査では、日本でも同性婚を認めるべきと答えた人が全体で65%に達し(認めるべきでないは22%)、18歳から29歳では86%にのぼっている。自民党支持層でも57%が認めるべきと回答した。
 さらに「異性愛者」「性的少数者」という二分法的な捉え方ではなく、近年ではSOGI(Sexual Orientation & Gender Identity)という考え方が世界的に定着しつつある。性的指向(好きになる性)と性自認(心の性)は異性愛者も含めたすべての人に関わる属性であり、それらは個々人ごとに多様なグラデーションにあるという見方だ。
 だからこそ「結婚の平等」がすべての人に認められない社会であってはならないとして、先進諸国では同性婚を実現する流れが加速している。
 世界の人権意識の潮流、経済活動のグローバル化からすれば、先進国のなかで日本だけが同性婚を認めていない状況は、いつまでも許容されるものではないだろう。
 国民として同じように納税の義務を果たしながら、一部の人だけが婚姻の権利を得られず、財産の相続やパートナーの子どもに対する親権を持てない。パートナーが生死にかかわる重大な医療行為の必要に迫られた際にも家族としてサインや面会もできない。事故等で救急搬送されても、搬送先さえ教えてもらえないというのが現状なのだ。
 今回の東京都の制度で、都としてそこにようやく風穴を開けることができた。米国でも、国に先んじて自治体がパートナーシップ制度を作ってきた歴史がある。

制度実現をリードした公明党

 じつは東京都で「パートナーシップ宣誓制度」の制定を一貫してリードしてきたのが都議会公明党だった。高倉良生議員を座長とするプロジェクトチームを早くから設置し、当事者の声をきめ細かく受け止めて議会に届けてきた。
 昨年6月の都議会例会でも、高倉議員は次のように制度の実現を小池知事に迫っている。

 都には、オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現を目指す条例があります。
 都議会公明党は、この条例に魂を入れる取り組みとして、同性パートナーシップ制度の実現を本会議や予算特別委員会で主張してきました。
 五月三十一日の総務委員会で、我が党議員が紹介議員となった請願が趣旨採択されました。
都はこれを踏まえ、制度創設に踏み出すべきと考えますが、知事に見解を求めます。
都議会「第2回定例会」議事録 2021年6月2日

 これに対し小池知事は、

都としての同性パートナーシップ制度の検討を進めてまいります。(同)

と明確に答弁した。
 この知事答弁を得られたことについて、公明党に相談を寄せてきた「東京都にパートナーシップ制度を求める会」の山本そよか代表は、

公明党が相談に乗ってくれたおかげで、パートナーシップ制度の実現へ大きく前進できた。本当にありがたい。(「公明ニュース」2021年6月8日

と述べている。
 公明党の取り組みについては、超党派の団体であるLGBT法連合会の神谷悠一事務局長も、

地方で公明党がキーになって動いたことで、パートナーシップ制度や指針ができたという声は本当に多く耳にします。(『第三文明』2020年2月号)

性的マイノリティーの問題を改善するにあたり、公明党はこれまでも重要な役割を果たしてきました。(『第三文明』2021年12月号)

と率直な評価を寄せている。
 今回、首都である東京都でパートナーシップ制度が実現したことは、すべての人が輝く社会の実現に向けた大きな一歩だ。同時に、この制度では依然として婚姻に伴う諸権利を得ることができない。
 国政でも地方議会でも、公明党は〝人権の党〟であり、与党とも野党とも行政とも話ができる政党だ。誰ひとり取り残されない社会の実現へ、さらに力を発揮してもらいたい。

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