公明党〝強さ〟の秘密――庶民の意思が議員を育てる

ライター
松田 明

得票率50・15%の島

 先ごろおこなわれた第49回衆議院選で、自民党がわずかに議席を減らした一方、連立与党の公明党は9つの小選挙区で完勝。比例区の得票数も2017年の697万7712票から711万4282票に増えた。
 比例区では各ブロックすべてで議席を獲得し、北関東、中部、九州では前回よりも議席を伸ばした。
 とくに3議席から4議席に増えた九州ブロックでは、元沖縄県議会議員の金城泰邦氏が当選。公明党として16年ぶりに沖縄出身者の国会議員を誕生させた。
 沖縄県全体での比例票は前回選挙から2万865票の増加。過去最高を記録した。

得票率は20・86%に上り、都道府県別で日本一を達成。県内41市町村のうち18市町村が「比例第1党」となった。
中でも、北大東島(北大東村、当日有権者447人)は得票率が50・15%で市町村別の日本一に輝いた。(「公明ニュース」11月17日

 北大東島は沖縄本島から360キロ東に位置する。村議会は5人の議員で構成されているが、公明党の所属議員はいない。その〝空白区〟で5割を超す得票が集まったのは、公明党議員が島に足を運び、災害対策などに地道に活動していることを島民が知っているからだという。
 沖縄出身の候補者を当選させたいという公明党支持者の熱の入り方も強く、沖縄県での得票率は、「オール沖縄」勢力の立憲民主党(20・16%)や共産党(9・69%)などを上回っている。
 公明党は全国におよそ3000人の地方議員がおり、市区町村議員の数では各党のなかで公明党が一番多い2706人(令和2年12月31日現在/総務省「報道資料」令和3年3月30日)。
 しかも、他党と違って公明党は国会議員を含むすべての議員が互いを「さん付け」で呼び合うフラットな関係で、案件ごとに都道府県会議員や国会議員と連携。異なる地域の議員同士が連動して課題解決にあたることも珍しくない。
「チーム3000」と呼ばれるネットワーク政党としての機能は、公明党だけがもつ強みだ。しかも、国政だけでなくほとんどの地方議会でも与党だから政策実現力がある。

公明党が「完勝」めざす理由

 毎回の選挙では、ほぼ毎回、公明党が候補者を「完勝」させることがメディアでも話題になる。
 他党では落選者がそれなりに出るのに対し、公明党の完勝率はきわめて高い。
 その理由が理解できていないためか、一部には最大の支持母体である創価学会にからめた低次元な揶揄や批判もある。
 今日では創価学会員の社会的属性はじつに多様化しており、信仰する動機も政治への関心も個々人によって違う。
 創価学会における支援活動の第一歩は、なぜ公明党を支援するのかを会員自身に理解・納得してもらうことからはじまる。あたりまえの話だが、誰だろうと理解や納得がないまま友人や知人に支援を依頼することなどできるはずもない。
 学会員の世代や属性がさまざまということは、利害においても必ずしも皆が一致しないということ。この点は労組など特定の団体とは事情が異なる。公明党が党員や支持者にきわめて丁寧に政策理解への努力をしていることは、もっと知られてよいだろう。
 では、なぜ「完勝」をめざす選挙戦をするか。それは「当選」がゴールではないからだ。
 議員として国や地域の課題に本気で貢献しようと思えば、数多くの現場に足を運び、当事者の声を聞き、他会派や行政府と合意形成する能力を磨き、さまざまな民間団体などと信頼関係を築く必要がある。
 そのためには継続して任期を重ね、議員として経験と実績を重ねていくことが重要だ。
 公明党の支持者たちは、自分の利害に関係なく手弁当で候補者を支援し、当選させてから先、議員として立派に育てていくことに主眼を置いている。
 街場の庶民が意思をもって、市区町村から国政のレベルまで議員を育てる。そういうことを半世紀以上も継続してきた。これは日本では他にあまり見られない、民主主義のひとつの理想的な姿だといえる。
 だからこそ、「出たい人」ではなく「出したい人」を候補者として擁立するし、擁立したかぎりは当選させるべく支持する側も真剣に支援する。仮にも信頼を損なうことがあれば、二度と政治家にはしない。
 この点、自分の当選が目的で所属政党を渡り歩く議員や、当選する見込みもないのに党勢維持のためだけに候補者を乱立させるような政党とは、根本的に発想が異なっている。

ダイレクトに声を伝える力を

 日本若者協議会の室橋祐貴代表理事は、主権者教育の質的改善や、オンラインによる双方向のコミュニケーションが進みつつあることなどで、今後は新しい政治リテラシーをもった世代が増えてくるのではないかと予測している。
 また、政党ラベルではなく政治家個人の評価に有権者の判断がシフトする傾向が、今回の衆院選でもすでに見られたと述べている(「Yahoo!JAPANニュース」11月7日)。
 一方、各政党の「若者の声を聞く力」について述べたインタビューでは、

他の政党と比べても公明党が若者の声を一番聞いているのは間違いありません。

ユーストークミーティングをほぼ毎週やっていたり、インターネットで若者の声を集めて総理大臣に要望書を提出する取り組みも毎年やっています。こうしたことをきちんとやっているのは公明党だけです。(「withnews」10月18日

と評価を寄せている。
 公明党には全国に多くの青年党員がいるし、SNSやYouTubeの活用などさまざまな新しい取り組みにも力を入れている。若者の声を政治に反映させている点で、公明党は群を抜いている。
 そのうえで今後は、本来なら公明党の政策や実績に共感できるはずの無党派層や若者に、(党員や支持者を介するルート以外に)ダイレクトにメッセージを届けていく力が、党にも個々の議員にもより一層期待されるだろう。
 有権者の政治リテラシーが変わりはじめているのなら、政党・政治家の側にもコミュニケーションの新しい力が必要だ。
 企業でも率直にメッセージを発信し〝顔が見える〟ブランドは信頼され愛される。人々は、そこに掲げられ実践されている唯一無二の価値観に〝共感〟することでファンになる。
 公明党とはどういう政党なのか。なぜ日本の政治に公明党が必要なのか。何を考え、どのような社会をめざそうとしているのか。自分は議員として何を考えているのか。
 たとえば街を歩いている18歳の若者に「公明党とはどういう党?」と尋ねたときに、どんな答えが返ってくるだろうか。
 有権者ひとりひとりを信頼して、どのように新たな共感層を自力で広げていけるか。「若者の声を聞く力」がある党だからこそ、「若者に声を届ける力」を磨いていってほしい。

関連記事:
菅政権この1年の成果――圧倒的に実績残した政権
公明党はなぜ完勝したか――2021都議選の結果
都議会公明党が重要なわけ――政策目標「チャレンジ8」
都議会公明党のコロナ対応――ネットワーク政党の強み
ワクチンの円滑な接種へ――公明党が果たしてきた役割
公明党が果たす役割――地方でも国政でも重要な存在
広島に「人間主義」の勝利を――政治腐敗と訣別する戦い