混迷する現代政治において、公明党が果たすべき役割は何か――。月刊誌『第三文明』7月号に掲載された日本大学・末富芳教授のインタビューを掲載します。
温かく迅速で毅然とした行動
――公明党と接点を持つようになったきっかけは?
末富芳 2019年、政府が幼児教育・保育の無償化を導入するにあたり、公明新聞の取材を受けたのが始まりです。当時、所得制限を設けるか否かが議論の的になっていました。そこで私は、「保育・教育を受ける権利は子ども自身のもので、保護者の所得で差別されるべきではない」と述べたのですが、公明党の奮闘によって3~5歳児は所得制限なし、0~2歳児は住民税非課税世帯を対象とするもの、今後対象の拡大を目指していくという形で無償化がスタートしたのです。
この時、すべての子どものための活動に「頼りになる政党だな」との印象を抱き、その後、さまざまな相談をするようになりました。
例えば生活保護世帯のお子さんで、熱心に勉強した結果、海外研修に行けることになったものの、それが贅沢に当たるとされ、生活保護費を減額すると告げられたケースがありました。こんな理不尽なことはないと、すぐさま古屋範子さん(前衆議院議員。当時は厚生労働副大臣)に相談。すると直ちに厚労省の担当者につないでいただき、「海外研修の参加は、子どもの自立支援という意味で生活保護法の理念にかなうもの。減額はあり得ないはず」と確認を取ってくれ、事態があっという間に解決したのです。
また同時期、国レベルでは大学入試共通テストへの民間英語試験導入計画が持ち上がっていました。私たち学識者や子ども支援者団体は、「改革の理念は重要だが、学習・受験費用の負担など経済的に厳しい家庭ほど不利になる制度だ」と憂慮しました。そこで浮島智子さん(衆議院議員。党文部科学部会長)に相談したところ、すぐにヒアリングの場を設けていただき、結果として導入が見送られることになったのです。
2つの事例は、困っている人に温かく寄り添い、迅速かつ毅然とした態度で行動する公明党の持ち味が発揮された好例であると感じています。
――国と地方のネットワーク力にも注目してこられました。
末富 最近それを象徴する出来事がありました。実は、私の遠縁の女性が2人の子を抱えてシングルマザーになったのです。そこで児童扶養手当の手続きに行ったのですが、冷たい態度で「支給開始は最速で3カ月後」と言われてしまった。家計にとっては死活問題なので、公明党の国会議員事務所に相談したところ、すぐに当該自治体の地方議員を紹介してくれました。
すると、その議員さんはすぐに彼女のもとに駆け付け苦境や心情を丁寧にくみ取り、寄り添ってくれたといいます。また、翌日には役所へ行って責任者に状況を説明してくださり、本来の翌月支給となったのです。彼女は「こんないい人に出会ったことはない」と、その議員さんを絶賛していました。困っている人に寄り添う姿勢が地方議員にも貫かれている。どの地域にもこんな議員がいてくれたら、どんなに安心なことでしょう。
座談会で感じた議員たちの原点
――これまで公明党議員や支持者に接してこられて、どのような印象をお持ちですか。
末富 少し角度を変えてお答えしますが、実は最近、公明党の講演会で石川県を訪れた際、誘いを受けて創価学会の座談会に参加しました。というのも、公明党の議員や支持者の皆さんと語らう中で感じてきた他者への温かなまなざしや社会変革への熱意、人間的な優しさや強さがどこから来ているのか、研究者として興味を抱いていたのです。そして、そのヒントが支持母体である創価学会の活動の中にあるかもしれないと考え、参加させてもらいました。
座談会では老若男女さまざまな世代が一堂に会し、率直に語り合っていました。そして語らいには、相手に共感しながら話を聞く「傾聴」の姿勢が常にあったのです。また、印象的だったのが「励まし」です。それぞれが悩みを打ち明け、みなで励まし合っていた。この事実に触れた時、議員・支持者の皆さんの常に優しく温かく、時に毅然として強い人柄、そして、どんな人とも語り合えるコミュニケーション能力の原点が、ここにあるのだと分かりました。
公明党が減税を実現
――昨今、自公政権の文脈で「公明党らしさがなくなった」との批判が一部で聞かれます。
末富 まず、厳しい声は期待の裏返しではないかと考えています。実際、私が見聞きしている政界の本音と、世論とでは隔たりがあるように感じています。率直に言うと、連立政権入りを取りざたされているいくつかの野党も、「公明党のいない連立政権は組めない」と考えているはずです。
今国会で高額療養費制度引き上げが見送りになったことは、記憶に新しいところです。これは公明党が自民党を説得し、予算案を再修正させてまで見送りを実現しました。当事者団体である全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長が公明新聞紙上で、「公明党の働き掛けがなければ今回の修正に至っていないのは間違いない」と語っているとおりです。まさに人の命を何よりも大事にする公明党だからこその対応であったと考えます。この時、ある野党議員は「公明党が動いてくれてよかった。(公明党に)感謝したい」と私に連絡をくれました。
昨今の「年収の壁」引き上げも、言い出したのは国民民主党ですが、実際に政府・自民党を説得し、160万円まで引き上げたのは公明党です。これにより、いずれの所得層でも1人当たり年2万~4万円の減税が受けられるようになりました。国民の玉木雄一郎代表も「1.2兆円もの減税を政府・自民党から引き出してくれた公明党さんには感謝しています」とXに投稿しています。ゆえに、「今回の減税は公明党の力で実現した」と断言してよいのです。
――最後に、公明党に今後どのようなことを期待しますか。
末富 昨年1月、池田大作(創価学会第3代)会長の「お別れの会」に参加しました。そこで池田会長の足跡を振り返る展示を拝見したのですが、そこには宗教や文化の違うリーダーたちと対話する姿とともに、子どもたちと真摯に向き合う写真があったことが心に残っています。そのまなざしから、子どもたちに寄せる温かな思いや未来の社会の担い手としての期待を感じるとともに、公明党が子ども・若者政策を中心に置いている理由を見た思いがしました。
「こどもまんなか社会」への道は緒(しょ)に就いたばかりであり、すべての子どもと家族の安心・幸福を築く政治こそ、日本存続の道だと信じます。公明党の皆さんには、これからもその道をまっすぐ進んでほしいと心から願っています。
<月刊誌『第三文明』2025年7月号より転載(WEB向けに一部再編集しています)>
「特集 未来につながる政治」:
①大衆福祉を貫く公明党への期待(日本大学教授 末冨芳)
②東京の〝現在〟と〝未来〟を守る 都議会公明党の施策1(ライター 松田明)
③東京の〝現在〟と〝未来〟を守る 都議会公明党の施策2(東京都議会議員/都議会公明党幹事長 東村くにひろ)
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