物価高騰へ政府の本気――発揮された公明党の底力

ライター
松田 明

物価高対策などに言及する公明党・山口代表(3月9日)

2兆円を超す物価高騰対策

 岸田首相がウクライナを訪問していた3月22日。早朝の7時40分から首相官邸4階にある大会議室で、政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」の第8回会合が開かれた。議題は「物価高克服に向けた追加対策等」。
 この会合で、

①電気料金月額2800円軽減の継続(標準世帯)
②4月からの電気料金を月額820円軽減(標準世帯)
③都市ガス料金900円軽減の継続(標準世帯)
④低所得世帯に一律3万円支給
⑤低所得の子育て世帯に子ども1人当たり5万円支給

などが決定。さらに地方創生臨時交付金を大幅に積み増し、LPガスの料金軽減、学校給食費の軽減が進むようにした。また、輸入小麦の政府売り渡し価格も値上げ幅を抑制。飼料価格も抑制し、食料品価格の高騰を抑制できるようにした。
 公明党の山口那津男代表は25日、この政府の物価高騰対策が2兆2000億円規模になり、28日に閣議決定されると発表した。

 公明党の山口那津男代表は25日、埼玉県内での街頭演説で、政府の物価高対策を巡り、2兆2千億円の規模になるとの見通しを明らかにした。2022年度予算の予備費を充てる予算措置が28日に閣議決定されるとも表明した。(「共同通信」3月25日

 昨年12月2日に、自民党、公明党などの賛成で成立した2022年度第2次補正予算には、「物価高騰・賃上げへの取り組み」として7兆8170億円、妊娠・出産時に支給する10万円相当の経済的支援やスタートアップの育成などに5兆4956億円、新型コロナや物価高への対策などとして4兆7400億円の予備費も計上された。
 なお、この第2次補正予算案に対して立憲民主党や日本維新の会、日本共産党などは「反対」している。

反映された公明党の提言

 この政府の物価高騰対策については、岸田首相から自公両党の政調会長に対して追加策の具体案を出すように求められていた。
 3月15日、公明党の石井啓一幹事長は官邸で岸田首相と会い、公明党としての追加策の提言を申し入れている。
 こうした際に公明党の出す提言はきわめて有効だ。というのも、公明党は会派別で最多の市区町村議員を有するなど全国に約3000人の地方議員のネットワークを持っている。生活者や事業者が何に困っているか、日本の政党のなかで公明党ほど的確に声を拾い、それを政策に結びつけられる政党は他にない。
 また議員の専門性が高く実務能力にたけているので、手の打ち方が手堅い。官僚とのコミュニケーション能力も高い。
 石井幹事長が首相に申し入れた追加策提言の主な柱は、

①地方創生臨時交付金の積み増し
②飼料の価格高騰対策
③中小企業の価格転嫁の把握と賃上げ促進
④全国旅行支援の4月以降の継続

だった。22日に政府が出した追加策には、これら公明党の提言が大きく反映されていたといえる。

「他の政党さんは仕事が遅い」

 公明党が推し進めたもう一つは、「子育て支援」のさまざまな政策拡充だ。
 まず、この4月1日から「こども家庭庁」が発足する。「こどもまんなか社会」の実現を据えて、少子化、虐待、いじめなどの課題に一元的に対応する首相直属の組織だ。
 さらに、妊娠・出産時に計10万円相当の給付をすべての自治体で実施。出産育児一時金も現行の42万円から50万円に引き上げられた。男性の育児休暇取得を促すため、1000人超の企業では育休取得状況を年1回公表することが義務付けられる。
 新たに結婚した夫婦に住居費などを援助する「結婚新生活支援事業」の対象世帯も、年収500万円未満まで緩和される。
 公明党は2022年11月に「子育て応援トータルプラン」を発表した。結婚しやすい環境を作るために若者の経済的基盤の安定を図るところから始まって、「結婚」「妊娠」「出産」「未就園児」「幼児教育・保育」「小中学校」「高校等」「大学等」と、ライフステージや子どもの年齢に応じて切れ目のない支援が盛り込まれている。
 教育行政学が専門で内閣府子供の貧困対策に関する有識者会議構成員などもつとめる末冨芳(すえとみ・かおり)日本大学教授は、講演で次のように語った。

ちなみに、あの今私も研究者なんで、次の統一地方選に向けて、各政党さん何の政策出してくるのか、特に教育子育て関係ですね。注目してるんですけど、全然まだ出てきません。
要するに、他の政党さんは正直仕事が遅いんです。あの、これ本当のことです。私も今か今かと待ってるんですよ。なんですけれども、全然仕事が遅いです。
ところが公明党だけがいち早く、もう11月に子育て応援トータルプランを出して、まず今の国会でですね、児童手当の所得制限の話ばっかり問題になってるじゃないですか。
あるいは育休のリスキリングとか、私もあの新聞とかテレビとかラジオとかから、いっぱいあの取材来て、もううんざりしてるんですね。
その時に申し上げてるのが、公明党の子育て応援トータルプラン見てくださいと。
ここに今の国会で、もうやらなきゃいけないことがもう書いてあると、いう風に申し上げてるぐらいすごいですね。(2023年2月4日埼玉でのスプリングフォーラム

 さらに末冨教授は、この「トータルプラン」が思いつきではなく、2006年の時点で公明党が出した「少子化トータルプラン」を下敷きにしたものであることに言及。他の政党は今頃になって右往左往するだけで、まともなプランも出せていないとして、

今2023年ですよね。この17年ものあいだ、(公明党だけは)一切ブレることなく、子ども真ん中の視点で政策を着実に実現したり、作ってきてくださいました。(同)

と公明党の一貫した政策を評価した。
 少子化対策と子育て支援は、若者や子育て世代以外からは関心を持たれにくいテーマだ。つまり選挙の票にはつながりにくい。だから他の政党は関心がなかった。
 しかし、近い将来に高齢者が人口の4分の1を占める日本社会で、誰がその社会全体を支えるのかを考えると、少子化・子育ては文字どおり国家の存亡にかかわる最大の課題なのだ。公明党だけが17年前からブレずに手を打ち続けてきた。
 政治はパフォーマンスではない。ましてや予算に反対しながら「あれもこれも実現」などと語るのは有権者に対する詐欺に等しい。どの政党が何を見通し、何を練り上げ、どう予算を調整し、何を実現させてきたのか。その国の政治の質は、有権者の眼にふさわしいものにしかならない。

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