ワクチン対策を牽引する公明党――GAVIが謝意を表明

ライター
松田 明

研究開発を「加速」させてきた

 日本経済団体連合会(経団連)は10月13日に「主要政党の政策評価2020」を発表した。
 ここでは、

 自由民主党を中心とする与党は、緊急事態宣言の発令等により国内での新型コロナウイルスの爆発的拡大を防ぐとともに、二次にわたる補正予算を成立させるなどした上で、感染症対策と経済回復の両立に取り組んでいる。さらに、ポストコロナ時代の新しい経済社会を見据え、デジタルトランスフォーメーション(DX)、テレワーク等の新しい働き方の定着等を推進しており、高く評価できる。

としたうえで、公明党の取り組み実績のひとつとして、

 治療薬・ワクチンの研究開発の加速、あらゆる事態に備えた医療提供体制の整備

を挙げた。
 感染拡大防止と社会経済活動の再開を両立させるためにも、治療薬とワクチンの開発、そして供給は必須となる。
 じつは今般の新型コロナウイルス感染症対策のなかで、公明党は一貫して「治療薬・ワクチン研究開発」の〝加速〟に大きな役割を果たしてきた。
 まず緊急事態宣言が発令された翌4月8日には、与党の「ワクチン予防議員連盟」として、治療法とワクチンの開発などを国際協調のもとで進めるよう厚生労働大臣に提言。

 提言は、治療薬やワクチンの国内研究開発を支援し加速化するよう要請するとともに、国際支援団体「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」に政府が支出を行い、国際的取り組みによるワクチン開発を支援するよう求めた。
 また、世界的まん延の防止などの観点から、発展途上国の子どもへのワクチン接種を進める国際団体「Gaviワクチンアライアンス」を支援することも訴えた。(『公明新聞』2020年4月9日

財源確保の突破口を開く

 5月28日には、公明党内に「新型コロナウイルス感染症ワクチン・治療薬開発推進PT(プロジェクトチーム)」を設置。日本の政党で、この分野のプロジェクトチームを組んだのは公明党だけである。
 PT座長には高木美智代・厚生労働部会長、事務局長には医師である秋野公造・厚労副部会長が就いた。秋野議員は厚生労働省に勤務していた2009年、羽田空港検疫所支所長として新型インフルエンザの防疫・感染拡大防止に従事したスペシャリストだ。
 7月16日の参議院予算委員会で、秋野議員がワクチン確保に向けた予算対応を厚労省に促し、稲津久・厚労副大臣(当時)から「予備費の活用も含めて、対策を果断に進める」との答弁を引き出した(関連記事)。
 新型コロナウイルスに対するワクチンは、英国や米国などで研究開発が進んでいるものの、世界中で争奪戦がはじまる状況下で日本政府の対応は出遅れていた。その最大の要因は財源が確保できていないことだった。
 参院予算委での秋野議員の質問と稲津副大臣の答弁によって、この財源の問題に突破口が開いた。
 さらに7月20日に、公明党の新型コロナウイルス感染症対策本部と同感染症ワクチン・治療薬開発推進プロジェクトチームが、加藤勝信厚労大臣(当時)と稲津副大臣に、「ワクチン・治療薬確保に向けた緊急提言」を申し入れ。
 この提言を受けて国が態勢を整えた結果、アストラゼネカ(英国)から1億2000万回分、ファイザー(米国)から2回接種で6000万人分、いずれも開発が成功した場合に日本が提供を受けられることで合意を見た。

日本のCOVAX参加を促す

 8月に入ると、公明党はさらなる具体策を出して国を動かす。
 言うまでもなくワクチンでは安全性と有効性が大きな課題となる。万が一、上記2社のワクチンで重い副反応などが出た場合なども想定すると、確保の範囲はさらに広げておく必要がある。
 また一方で、世界中がワクチンを必要としている現状では、富裕国だけがワクチンを独占しかねない。

 公明党の斉藤鉄夫幹事長は18日、財務省で遠山清彦財務副大臣と会い、新型コロナウイルスのワクチンの買い付けに関する提言を手渡した。日本政府と英国などが共同で買い付ける「COVAXファシリティー」という枠組みの活用を推進するよう求めた。(『日本経済新聞』電子版/8月18日

 山口那津男代表は同日の記者会見で「提言を政府はしっかり受け止めて、もう一段の手を打って社会経済活動の両立をいち早く確立すべきだ」と述べた。(同)

 COVAXファシリティーは、GAVIアライアンス(旧称:ワクチンと予防接種のための世界同盟)、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)、WHO(世界保健機構)が主導して、新型コロナウイルス感染症ワクチンの公平な普及のために立ち上げたもの。
 高所得国、中所得国が資金を拠出し合い、複数の製薬会社と事前契約を結ぶことで幅広いワクチン開発を支援し、共同購入する仕組みだ。
 資金を拠出した国は人口の20%を上限に自国用にワクチンを購入できる。一方、こうした国々や団体から寄付された資金で、途上国へのワクチン供給をおこなう。
 2021年末までに、規制当局の承認やWHOの事前承認を受けた20億回分の安全で効果的なワクチンを提供することと同時に、参加国の20%を占める貧困国の弱者に対して、収入レベルにかかわらずワクチンの平等な分配を実現することを目標としている。

 公明党の山口那津男代表は27日の中央幹事会で、新型コロナウイルスのワクチン開発に各国が共同出資する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」に日本が参加する必要性を訴えた。(「SANKEIBIZ」8月27日

 政府は9月15日、この公明党の提言を受けてCOVAXファシリティー参加に必要な予備費の使用について閣議決定。
 このほど、GAVIアライアンスのセス・バークレーCEO(最高経営責任者)から、日本のCOVAX参加と、そこに至る公明党の努力に感謝する寄稿が届いた。

 セス氏は、COVAXには現在170カ国以上が参加し、世界の人口の70%をカバーするとして「日本は最初に署名し、他の国にも参加を促してくれた」との認識を表明。その上で「各国がワクチン争奪戦を繰り広げる中、日本のような国がCOVAXに率先して参加することは、裕福な国々がワクチンを独り占めする弊害を防ぎ、低所得国の人々が取り残されてしまう悲劇を防ぐことができると考えている」と指摘し、「正式参加に当たっては公明党から多大なお力添えをいただいた」と強調した。
 さらに、公明党が5月に新型コロナウイルス感染症ワクチン・治療薬開発推進プロジェクトチーム(座長=高木美智代衆院議員)を立ち上げ、有識者へのヒアリングを行うなど、コロナに関する研究開発の推進へ、いち早く取り組んできた経緯に言及し「ワクチン調達に関する提言書を党として厚生労働省に提出するなどの働き掛けをしてくれたことが、COVAXへの正式参加と(資金)拠出につながった」と表明した。(『公明新聞』10月17日

関連記事:
菅内閣が始動――公明党が政権を担える理由
安倍政権の7年8カ月――国際社会はどう見たのか
具体的提案で国を動かす公明党――「骨太方針」「ワクチン緊急提言」
「家賃支援」申請開始へ――フリーランスにも給付金支給

新型コロナウイルス特集:
①「日本型対策」の成果は? ②〝陰謀論〟を語る人々 ③公明党の対応が光る ④「緊急事態宣言」が発令 ⑤本領を発揮する公明党 ⑥一律10万円の現金給付へ ⑦さらなる支援策の強化を ⑧国民が見ているのは「実現力」