「家賃支援」申請開始へ――フリーランスにも給付金支給

フリーライター
松田 明

公明の提言が実った「家賃支援」

 新型コロナウイルス感染拡大で経営の危機に瀕している法人などを対象とした「家賃支援給付金」の実施が決定し、7月中旬からオンライン申請の受付がはじまる。
 法人対象としては、月額75万円の家賃までは3分の2を半年分一括で給付。75万円を超える月額家賃の部分は、超過分の家賃の3分の1(合計で月額上限100万円)が半年分支給される。
 最大で600万円となり、個人事業主にはその半額で最大300万円が給付される。
 じつは、「家賃支援」をめぐっては、与党内でも自民党と公明党で意見のズレがあった。
 当初、自民党は金融機関の融資と財政支援を組み合わせた形での制度を提案。

これに対し、公明側は現行制度や30日に成立した補正予算に盛り込まれた緊急経済対策でできる支援策の活用を優先し、家賃支援に取り組んでいる地方自治体を財政支援する案を示した。(「朝日新聞デジタル」5月1日


 野党からも公明党案を評価する声があがるなか、公明党は第2次補正予算案で地方自治体向けの「地方創生臨時交付金」を新たに3兆円計上し、そのうち1兆円を事業者向けの家賃支援に特化した交付金とする提言をまとめた。

事業者家賃支援交付金「1兆円」 公明が提言案(「朝日新聞デジタル」5月21日

 その後、自公で協議を重ね、当初は公明党案の一括給付に難色を示していた自民党も、公明党案のほうがスピードが速いという結論に達する。

政府・与党内の調整で、自民党は「他の目的に使われる可能性がある」と慎重姿勢だったが、家賃の支払い実績を申請時に証明することを条件に受け入れた。与党間で基本方針が決まったことで、来月から支給が始まる見込みだ。(「朝日新聞デジタル」6月19日

 冒頭に紹介したように国が事業者に給付をおこなうと同時に、第2次補正予算に計上した「地方創成臨時交付金」の増額分2兆円のうちの1兆円を、各自治体の自由裁量に委ねて家賃支援を含む事業継続や雇用維持の単独事業財源に活用する。
 一方、これまで中小企業や個人事業主に支払われてきた「持続化給付金」の対象も拡大し、フリーランスや2020年1月から3月に創業した企業も、新たに対象となった。
 これも公明党議員の粘り強い国会質問や、第2次補正予算案に対する公明党の提言が実った形だ。

政府は丁寧な対応をすべき

 ところで、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の「廃止」が、24日夕に西村康稔経済再生担当相から唐突に発表されたことについて、与野党から苦言や批判が相次いだ。

専門家会議は公明党が政府に提言して設置された経緯がある。同党の高木美智代政調会長代理は終了後、記者団に「事前にちゃんと説明してほしかった。与党の了解のうえでやってもらいたい」と語った。(『日本経済新聞』6月26日

自民党議員は「事前に聞いていなかった」と不満を漏らし、公明党の高木美智代氏は記者団に「専門家会議の設置は公明党が(安倍晋三)首相に提言して実現した。改編するなら目的は何なのか、ちゃんと示してもらいたい」と不快感をあらわにした。(『毎日新聞』6月26日

 感染症の専門家を中心とした専門家会議は、当然ながら科学者の立場と知見から感染拡大防止に焦点を当てて政府に提言をしてきた。
 だが、政府としてはリスクとのバランスを勘案しながら、社会経済活動の再開を進めなければならない。
 専門家会議は未曽有の緊急事態を前に、専門家たちが手弁当で尽力してきたもの。
 政府は今後、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「新型コロナウイルス感染症対策分科会」に改編する方針で、その意向自体は専門家会議のメンバーも共有していた。
 問題は与党への説明もしないまま「廃止」という違和感のある強い言葉で唐突に発表したことだ。
 批判を浴びた西村大臣は28日になって、

「私が『廃止』と強く言い過ぎ、専門家会議の皆さんを排除するように取られてしまった。反省している」と述べた。(「時事ドットコム」6月28日

 専門家会議メンバーの何人かにも分科会に入ってもらう意向をあらためて表明した。
 日本が第一波を乗り越えられたのは、国民の多くが専門家会議の知見に信頼を寄せ、行動変容に取り組んだことが大きい。
 必ずやってくると言われている第二波、第三波に備える意味でも、政府はもう少し関係者への敬意と丁寧さをもったコミュニケーションを心がけるべきだろう。

炎上した「女性蔑視」ツイート

 東京都知事選挙にからんで、共産党の小池晃書記局長の下品なツイートが〝炎上〟し、同氏はあわててこれを削除した。

「オーバーシュートをロックダウンでアウフヘーベン(止揚)しましたの。オホホ」――。共産党の小池晃書記局長は26日、こう書き込んだ、小池百合子東京都知事をやゆするツイートを削除した。(『毎日新聞』6月26日

小池書記局長は「オホホ」に続き、「東京アラートはレインボーブリッジをレッドにするだけだったから、排除いたします。これからはウイズコロナで自衛お願いね。ゆりこと一緒にベストミックスなワイズ・スペンディングでグレーター東京つくりましょ。てか」とも書き込んでいたが、これも削除した。(同)

 都知事選で共産党は立憲民主党などとともに宇都宮健児候補を支援している。ツイートはライバルである現職の小池百合子候補を批判するため、都知事がしばしば〝カタカナ言葉〟を多用することを揶揄して、東京都で感染が収束しないことをからかったもの。
 しかし、公党のナンバー2が、「オホホ」などとわざとらしい〝女言葉〟を書き連ねて相手候補を揶揄したことに、「女性蔑視」「下品」という批判が相次いだ。
 宇都宮陣営支持者のなかからも「さすがにこれは品性に欠ける」「共産党の見識を疑う」「前回選挙で〝大年増の厚化粧〟と中傷した石原元知事と変わらない」といった厳しい批判が出ている。
 2020年1月の第28回党大会で採択された日本共産党の「改定綱領」には、

ジェンダー平等社会をつくる。男女の平等、同権をあらゆる分野で擁護し、保障する。女性の独立した人格を尊重し、女性の社会的、法的な地位を高める。女性の社会的進出・貢献を妨げている障害を取り除く。性的指向と性自認を理由とする差別をなくす。

と明記されている。
 本人もマズいと思ったから数時間で削除したのだろうが、綱領の美しい文言とは裏腹に、同党の首脳がどのような人権感覚を持っているのか、図らずも露呈することとなった。

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