デヴィッド・フォスター・ウォレスという作家は知らなかった。重い精神疾患を患っていて自死したという。その3年前、アメリカのオハイオ州で最古の、ケニオン・カレッジの卒業式に招かれ、20分ほどの短いスピーチをした。
アメリカ、大学の卒業式、スピーチというと、スティーヴ・ジョブズが思い浮かぶ。彼は2005年にスタンフォード大学に招かれ、卒業生にスピーチをした。「Stay hungry. Stay foolish」(ハングリーであれ。愚かであれ)というフレーズは、巷間に広まったものだ。
ウォレスのスピーチは、このジョブズのスピーチを抜いて、2010年の『タイム』誌で全米ナンバー1に選ばれた。僕は大学に入学したものの、卒業していないので、卒業スピーチとは縁がない。
ウォレスが何を話したのか、いろいろ想像を巡らせながら読み始めた。一読して思い出したのは、宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」という文章だった。そういう印象を受けたのはレイアウトの作用が大きいかも知れない。 続きを読む
