仏教」タグアーカイブ

葦の髄から時評vol.12 敦煌莫高窟――記憶の古層に広がる「壮大な思想」

ジャーナリスト/編集者
東 晋平

忘れられた〝最先端の街〟

「それでは、中に入りましょう」
 若い係官は日本語でそう言うと、持っていた鍵の束で厳重な錠を開けた。
「足もとに注意してください」
 狭い入口から、彼が手にしている小さな懐中電灯に導かれて、私たちは薄暗い石窟の中へと足を踏み入れた。 続きを読む

葦の髄から時評vol.4 アショーカ王の獅子――インドの国旗と国章に込められたメッセージ

ジャーナリスト/編集者
東 晋平

サルナートの獅子柱頭

 デリーから1時間ほど国内線に乗って、ガンジスの街・バナラシに着いた。
 着陸態勢に入った飛行機の窓からは、収穫期を迎えた一面の小麦畑の中に、白い煙をたなびかせるいくつもの簡素な煙突が見えた。刈り取った藁を焼いて肥料にするための炉だと、あとから知った。 続きを読む

「葦の髄から時評」Vol.2 ブッダの思想――1人の思想と言動が、なぜ世界に分かち合われたのか

ジャーナリスト/編集者
東 晋平

世界の中心軸へと発展するインド

 インドには「乾季」「暑季」「雨季」という3つの季節がある。南北3200kmを超す大きな国土だけに一概ではないが、11月から3月までが乾季、4月から5月が気温のもっとも高くなる暑季、6月から10月が雨季になる。 続きを読む

深い信頼と友情を結ぶために――折伏から対話へ

宗教人類学者
山形孝夫

既成仏教と創価学会の戦い

――「折伏から対話へ」というテーマでお話をお聞かせください。

山形 私が東北大学の学生だったころの話です。私の恩師の日本宗教史講座担当であられた堀一郎先生は、当時世間を騒がせていた「折伏」について、

「それは新しい宗教が旧体制の宗教に論争を挑むための基本的話法です。それに勝利することなしに、新しい価値の創造はないですね。300年かかるか、500年かかるか、価値観の転換とはそのようなものです」

と話されていたことが、今も私の耳の底に残っています。 続きを読む

【コラム】「墓」のウェアラブル(身体装着)化が始まった――遺灰から人造ダイヤモンドを作る人々

ライター
青山樹人

〝墓参り〟が困難になった時代

 昨年(2013年)11月、宮内庁は「今後の陵と葬儀のあり方」を発表し、1680年の後水尾天皇から続いていた天皇・皇后の土葬を、4世紀ぶりに火葬にあらためるとした。歴史的ともいえる変更は天皇・皇后両陛下の意向を受けたもので、日本社会で火葬が一般的になったことと、陵墓を少しでも簡素化するためというのが理由であった。 続きを読む