コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第33回 馴染みの酒場のような詩人

作家
村上政彦

 若いころは大人の世界に憧れるもので、僕はホテルのバーのカウンターに坐って寡黙で品のいいバーテンを相手にオンザロックをやったり、白木のカウンターのある小料理屋で熱燗を傾けたりすることを夢見た。
 なんのことはない、僕はアルコールがだめだから、結局、大人になっても馴染みの酒場を持つことはできないでいるのだが、むかしはそういう大人が格好いいと単純におもっていた。
 もっとも「馴染みの酒場」のように、繰り返しドアを開いて訪れる詩人ができた。その1人が黒田三郎だ。 続きを読む

池田SGI会長70年の軌跡(下)――新しい世界を開くための教育

ライター
青山樹人

世界に広がる創価教育

池田SGI会長が創価大学の設立構想を発表したのは、1964年6月30日のことだった。創価学会第3代会長就任からわずか4年。まだ会長が36歳の時である。
そして40歳となった1968年には、創価一貫教育の第一歩となる創価中学・高校が第1回の入学式を迎える。3年後の71年には、創価大学が開学した。
当時、日本も世界も「若者の反乱」の時代だった。国内には大学紛争の過激な嵐が吹き荒れていた。
しかし、会長はこの教育の行き詰まりと混迷を、新たな教育の潮流を開く時代の表徴だと見ていた。 続きを読む

池田SGI会長70年の軌跡(中)――仏法の叡智を人類共有の宝に

ライター
青山樹人

哲学部長の感嘆

1994年5月、池田SGI会長はモスクワ大学で2度目の講演をした。
最初の講演は1975年。まだ東西冷戦の渦中で、とりわけ米中と日中の国交正常化によって、ソ連が国際社会から孤立していた時期だった。
2度目の時にはソ連が崩壊し、ロシアに変わって日の浅い混沌の時期だった。
この講演で、会長は「すべては人間に始まり、人間に帰着する」ことを語り、大乗仏教の精髄の法理を「規範性」「普遍性」「内発性」の3つに即して展開し、トルストイの文学と交錯させながら論じた。 続きを読む

池田SGI会長70年の軌跡(上)――「民衆が世界を変える時代」開く

ライター
青山樹人

はじめに

192ヵ国・地域にひろがる、世界最大の在家仏教教団である創価学会インタナショナル(SGI)。
この地球を包む民衆の連帯をつくりあげた池田大作SGI会長が、19歳で戸田城聖・創価学会第2代会長と出会い、創価の「師弟の道」を歩み始めたのは1947年8月のことである。
終戦からまだ2年の夏。すべては、ここから始まった。
今月で70年の佳節を刻むにあたり、この間に池田会長という一人の人間が何を成し遂げてきたのか。その軌跡を3回にわたって概観したい。 続きを読む

「反戦出版」書評シリーズ③ 『未来につなぐ平和のウムイ』

ジャーナリスト
柳原滋雄

犠牲者20万人の「沖縄戦」の実態

 県民の4分の1が犠牲になったとされる「沖縄戦」――。その凄まじい局地戦において犠牲になったのは、多くが民間人の女性や子どもたちだった。本書は2016年に発刊された、当時、成人に満たなかった女性を中心とする14人による戦争体験集。
 沖縄がこの戦争の本格的な舞台となったのは1945年3月。米軍が本島への大規模攻撃を開始し、6月23日に牛島司令官が自決するまで、苛烈な戦闘が続いた(現在、6月23日は「沖縄慰霊の日」となっている)。 続きを読む