日本共産党を悩ます〝醜聞〟――相次ぐ性犯罪と執行部批判

ライター
松田 明

性犯罪で〝再逮捕〟の衝撃

 日本共産党が「醜聞」で揺れている。
 さる1月12日、日本共産党千葉県委員会・書記長だった大西航容疑者が、駅の女子トイレに侵入し、個室を使用していた女子高生をスマートフォンで盗撮をした容疑で逮捕された。容疑を認めているという。
 大西容疑者は千葉県共産党のナンバー2の立場にいた人物。2017年の衆議院選挙で千葉12区の公認候補になっている。

大西容疑者は昨年11月21日にJR千葉駅で女性の後ろ姿を盗撮したところを目撃者に110番通報された。そこでスマートフォンから今回の事件の動画が見つかり、被害者の特定などを経て逮捕に至ったという。同署は余罪もあるとみて捜査を進める。(『産経新聞』1月12日

 あきれたことに大西容疑者は在職中、女性の尊重や性犯罪撲滅を繰り返し訴えていた。SNSでも「女性蔑視は、安倍政権の政策にもよくあらわれている」(2014年6月20日のツイート/現在はアカウントを削除)などと投稿。
 2021年の総選挙投票日の前日には、「女性に対する暴力をなくす」という日本共産党の政策リンクを貼り、「痴漢ゼロの実現へ」「何より政治がこの問題を真剣に取り上げること自体が、痴漢や性犯罪を許さない社会意識の一歩になるはず」(2021年10月30日のツイート)と投稿していた。
 その大西容疑者が3月8日、今度は「脅迫」と「器物損壊」容疑で再び逮捕されたのだ。

大西容疑者は昨年10月20日午後3時半~翌21日午前0時15分頃、市川市のJR市川大野駅の駐輪場で、同市の女子大学生の自転車前かごに、危害を加える趣旨の脅迫文を置き、サドルに体液のようなものを付着させた疑い。2人は顔見知りではなく、大西容疑者は「びっくりさせたかった」と容疑を認めているという。(『読売新聞』3月8日

〝性犯罪を許さない社会〟を訴えていた共産党の千葉県ナンバー2が、実際には卑劣な性犯罪の常習犯だったことが明らかになった。
 共産党地方議員による性犯罪の再逮捕は過去にも起きている。2018年6月、日本共産党の長野市議(当時)が強制わいせつと器物損壊で2度逮捕された。
 この長野市議の場合も最初に他人の自転車のサドルに体液をかけた容疑で逮捕。その後、通行中の10代女性に抱きついていた別の事件で再逮捕されている。一審で被告は罪状を認め、懲役2年、保護観察付き執行猶予4年の判決を受け入れた。

被告は平成29年夏ごろから女性の自転車のサドルに体液をかけるようになり、30年1月ごろからは、歩いている女性に抱きつく行為を繰り返していたとしている。(『産経新聞』2018年9月3日

 この人物は2015年9月に長野市議に当選しているので、現職の市議でありながら性犯罪を繰り返していたことになる。
 千葉の事件でも長野の事件でも、被害者たちは一生消えない心の傷を負わされた。
 支持者も党員も高齢化が著しい日本共産党。逮捕された党幹部や市議は、いずれも20代、30代で候補者になっている。若い世代の人材の層が薄くなり、根本的な資質を欠いた人物を〝若さ〟だけを売りに担ぎ上げているのでは、有権者はたまったものではない。

規約を無視した除名処分

 2月6日に日本共産党を「除名」になった松竹伸幸氏が、3月6日に「共産党中央に手紙を出しました」と題する自身のブログを更新した。
 松竹氏は大学卒業後に日本共産党の専従職員となり、国会議員秘書、党本部の政策委員会で安保外交部長などをつとめた。2001年の第19回参議院選挙では同党の比例区候補(落選)にもなっている。現在は京都南地区に所属し「かもがわ出版」で編集主幹をつとめていた。
 今年1月19日、松竹氏は『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)を出版。志位委員長が22年以上も党首の座にいることに疑義を呈し、党員による党首公選制の導入を提唱。同党の安全保障政策を現実的なものにすべきだとも提言した。
 すると、日本共産党は直後の2月6日に同氏を除名。しんぶん赤旗で「党規約と党綱領に対する攻撃」「重大なことは、松竹氏が、党攻撃のための分派活動を行ったこと」などと非難して除名を正当化した。
 この「除名」には朝日新聞や毎日新聞も社説で〝閉鎖的体質〟と批判したが、日本共産党側はこれにも激しく反発した。
 松竹氏は3月6日のブログで、今回の「除名」処分について「除名の理由として挙げられた四つの点は、いずれも事実と言えず、評価も異なります」として再審査を求めるとした。
 さらに処分は党規約に定めた手続きを踏んでおらず複数の瑕疵(かし)があると指摘。

1、支部党会議・総会で処分を決定しなかった問題
2、「支部委員会の同意」という虚構が前提とされている問題
3、処分を決定する会議で意見を述べる権利を奪われた問題

を挙げた。

「大軍拡側からの攻撃」

 日本共産党では京都府委員会常任委員などを歴任した鈴木元氏が、やはり1月20日に『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を刊行した。同書の帯には「貴方はただちに辞任し、党首公選を行い、党の改革は新しい指導部に委ねてほしい。」と書かれている。
 同書は松竹氏が在籍するかもがわ出版から出されているが、日本共産党は松竹氏を除名した理由として、「鈴木元氏の本の内容が党攻撃であることを知りながら、その発刊を督促したこと」「この行為が、党攻撃のための分派活動にあたることは当然」としている。
 だが、奇妙なことに党首選への立候補をほのめかした松竹氏だけは即座に「除名」され、同じように「党攻撃」の本を書いた鈴木氏は何ら処分を受けていない。

鈴木氏の処分に踏み切れば、京都という金城湯池の地盤が揺らいだり、共産批判に拍車がかかったりする可能性もある。(『産経新聞』3月6日

3月5日に、その京都で統一地方選の候補者らと共に演説会をひらいた志位和夫委員長は、

大軍拡の逆流に正面から立ち向かう党というのは、相手から見れば怖いし邪魔なんです。それゆえの攻撃は激しいものがあります。

と述べ、

日本共産党の規約を無視した行動で除名された元党員を利用して、一部大手メディアが〝共産党は異論を許さない政党だ〟というキャンペーンをやっております。

と非難した。
 党内から相次いで突きつけられた独裁体制への批判も、除名に対する朝日新聞や毎日新聞の批判も、志位委員長に言わせると「大軍拡を進めている側からの攻撃」ということになるらしい。
 こんな話に拍手を求められる支持者も気の毒だが、志位氏のあげたツイッターに写っていた会場の聴衆は、日曜日の日中にもかかわらず明らかに高齢者ばかりが目立つ。
 ベテランからの異論には耳をふさぎ、若手幹部は性犯罪で次々に逮捕される。日本共産党の未来には暗雲が立ち込めるばかりである。

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