ワクチン接種1億回突破――デマや陰謀論には警戒を

ライター
松田 明

有効性が高いワクチン接種

 河野太郎・行革相は8月10日の閣議後記者会見で、日本国内での新型コロナウイルスのワクチン接種が1億回を超えたことを発表した。
 このうち、65歳以上の高齢者では、1回目の接種を終えた人が3120万8726人で高齢者人口の87.9%。2回目まで終えた人は2944万1332人で83.0%にまで達した(8月11日時点)。
※「首相官邸ホームページ」ワクチン総接種回数・内訳
 日本のワクチン接種回数は、フランス、イギリス、ドイツを抜いて世界全体でも5位にまで上昇。日本より多いのは中国、インド、米国、ブラジルで、いずれも日本よりはるかに人口が多い国だ。
 7月頃から感染力の強いデルタ株が猛威を振るい、日本国内は深刻な「第5波」を迎えている。これは世界的な傾向で、感染が落ち着きつつあった米国でも陽性者が急増。
 デルタ株は世界130以上の国と地域で確認されており、タイやフィリピン、オーストラリアなどでは首都圏のロックダウンに踏み切った。
 ただ、このデルタ株に対してもワクチンは極めて有効である。

ワクチン接種の進む国を中心に接種を完了した人が感染する「ブレークスルー感染」の症例が報告されているものの、ウイルス抑止にワクチン接種の有効性はなお高い。米カリフォルニア州などデータを入手できる米国の25州と首都ワシントンでワクチン接種と感染の関係をみると、接種を完了した人のうち、これまでに感染した人は0.09%と、1000人に1人(0.1%)に満たない。接種完了後に重症化した人は0.01%、死亡するケースは0.001%とさらに少ない。(『日本経済新聞』8月6日

リスク高い行動から感染

 4月以降、日本国内の新規陽性者は20代がもっとも多い傾向が続いている。東京都の場合8月10日時点では60代未満が全体の94%を占めている(NHK「新型コロナウイルス 特設サイト」東京都の感染状況(年代別・感染経路))。これは、高齢者を優先したワクチン接種の有効性を端的に示したものといえるだろう。
 世界的な感染再拡大でファイザー製のワクチン供給量が減少したため、7月前半には1日140万回に達した日本のワクチン接種回数もやや頭打ちになっている。
 それでも平均100万回のペースは維持できる見通しなので、やはり国民の側が「三密を避ける」「マスク・手洗い」といった基本的な対策の徹底を継続するしかない。
 国立国際医療研究センターの調査では、感染経路不明とされていた新規陽性者の3分の2が、「友人との飲食」「大人数の誕生会」「マスクなしでの室内ライブ参加」といった、リスクの高い行動をとっていたことが判明している。
 ワクチン接種のスピードは自治体によって差が生じている。ただし、積極的に接種情報を獲得できているかどうかといった個人の「情報格差」もある。
 厚生労働省のサイト「コロナワクチンナビ」では、各人の地元自治体で接種予約のできるクリニック等の情報が出ている(クリニックによって情報更新の時期が異なるので、丁寧に1軒ずつ確認することを推奨)ので、ぜひ活用してほしい。

デマの発信源は少数アカウント

 一方で、若い世代ほどワクチンへの忌避感情が見られる。これは「遺伝子が書き換えられる」「不妊や流産になる」といったデマ情報に不安を感じていることが大きく影響している。
 NHKが専門家らと共同でおこなった解析によると、SNSでデマ情報を発信しているのはごく少数のアカウントで、これが大量に拡散されていることがわかった。

分析の結果、全体で数万のアカウントのなかで、「上位20の発信者」の投稿だけで、全体の約4割を占めていました。最も多い発信者では2500ものアカウントにシェアされていて、限られた少数の発信者が大きな影響力をもっていることが分かりました。(「NHK NEWS WEB」8月10日

 日本経済新聞も同様の調査結果を報じている。

日本経済新聞の調べでは、ワクチンが不妊につながるというツイッター上への投稿が1月から7カ月間で約11万件あった。その半数の5万件超がわずか29人の投稿が発端だった。(『日本経済新聞』8月10日

 プラットフォーマー側もデマ情報への対処を厳しくしており、ツイッター社の日本法人は7月、悪質な陰謀論を発信し続けてきた医師らのアカウントを凍結した。

「反ワクチン」煽る野党議員

 残念ながら、野党議員のなかにも陰謀論やデマ情報を発信し続けている人々がいる。
 2019年の参院選で立憲民主党公認候補(比例区)として当選した須藤元気議員は、その後およそ1年で同党を離党。東京都知事選ではれいわ新選組の山本太郎代表の支援に回った。
 須藤議員はこの8月3日、

冷静に科学的な視点で見れば、確実な効果が得られていないわけですね。それなのに、多くの犠牲者が出ているワクチン接種をさらに推進しようとすることに不可解さを感じます。(須藤議員のツイート

と自身のツイッターに投稿。医療関係者などから批判を浴びている。
 立憲民主党の東京都第13区総支部長で、次期衆議院選の立候補予定者である北條智彦氏も、ツイッターに「ワクチン接種前に知って欲しい3つのこと」と題して「立憲民主号外版」というチラシの画像を投稿。
 そこには「卵巣の損傷や永久不妊の可能性が否定できません」「子供や若い方への接種は絶対ダメ」「接種者の息や汗からスパイクタンパク質が放出される」等、ワクチンへの不安を煽る誤情報が満載されていた。
 これも炎上して、結局この投稿は削除されている(参考記事:「YAHOO! JAPANニュース」7月16日)。
 この1年半のあいだ、立憲民主党や日本共産党は、ワクチン確保や接種体制構築に必要な予算に反対。ワクチン接種にもブレーキを掛け、政府の特例承認を見送らせた。

政府は当初、ワクチンがコロナ対策のゲームチェンジャーとなることを見越し、日本でも早期に接種開始できるよう、海外の臨床試験データに基づいて迅速に承認する『特例承認制度』の活用を検討していた。しかし、立憲と共産党が強く反発。ワクチンではなく、むしろPCR検査体制の拡充をと主張した。立憲や共産党はワクチンの効果には人種差があるという理由で国内での治験にこだわり、欧米各国で行われていたワクチンの緊急使用に猛反対した。(「AERAドットコム」6月17日

 もちろんワクチンの接種は任意であり、個人が選択すること。だからこそ、不安情報やデマを拡散して人々の判断を誤らせる行為は容認されるものではない。
 みずほリサーチ&テクノロージズ株式会社・上級主任エコノミストの服部直樹氏は、1日100万回のワクチン接種が維持できれば、

21年10月頃には時短要請を解除し、22年1月頃には経済活動を完全に正常化できるようになる見込みだ。(『公明新聞』8月8日)

と述べている。
 パンデミックには必ず終息の日が来る。感染防止の基本を徹底しながら、ワクチンへの正しい情報の共有につとめたい。

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