コラム」カテゴリーアーカイブ

良識的な中間層の声を、いかに政治に反映させるか――【書評】『21世紀の自由論』(佐々木俊尚著)

ライター
青山樹人

ヨーロッパの普遍主義の終り

 話題の一書である。
 著者の佐々木俊尚氏については、今さら多くを説明するまでもないだろう。毎日新聞記者からフリージャーナリストに転じ、ITと社会の相互作用と変容をテーマに多彩な言論活動を続けてこられた。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)など、今という時代の姿を見事に言語化してみせた著作は読んだ人も多いはずだ。 続きを読む

巨匠が贈る「対話への行動」促すメッセージ――映画『サンドラの週末』

ライター
倉木健人

※このコラムには、2015年5月23日公開 映画『サンドラの週末』のストーリーなど内容についての記述があります。

1人を解雇するか、全員のボーナスをあきらめるか

 カンヌ映画祭で史上初の5作品連続受賞。しかも2度のパルムドール大賞。その巨匠・ダルデンヌ兄弟の最新作『サンドラの週末』が日本でも公開になる。
 ジャン=ピエール・ダルデンヌ(兄)とリュック・ダルデンヌ(弟)の2人は、一貫して〝社会の枠からはみ出してしまった人〟を主人公に映画を撮り、世界に衝撃と共感を与えてきた。 続きを読む

分かたれた者たちが結ばれていく美しい衝撃作――映画『追憶と、踊りながら』

ライター
倉木健人

※このコラムには、2015年5月23日公開 映画『追憶と、踊りながら』のストーリーなど内容についての記述があります。

通訳を介して進行する映画

 李香蘭こと山口淑子の歌う「夜来香」が聴こえ、少し古いデザインの壁紙がフレームの中を流れていく。
 原題の「Lilting」には、軽妙にリズミカルに動かす、というようなニュアンスがある。ともすれば硬直し動きを止めてしまう人間たちに対し、ホン・カウ監督は、再びリズムを与え、背中を押し、軽やかに揺り動かしていく。登場人物も、そして観ている私たちも。 続きを読む

道徳と人権――道徳の教科化は人権教育拡充のチャンスだ

フリーライター
草野 亘

道徳の教科化へ・パブリックコメントの実施

 安倍政権の道徳の教科化へ向けた動きが加速化している。今年(2015年)2月4日に文科省は道徳の教科化についての改正案を提示し、3月5日までの期間でパブリックコメント(意見公募手続・意見提出制度)を実施した。 続きを読む

【コラム】徳島県・旧海部町に学ぶ地域コミュニティの知恵

ライター
青山樹人

自殺率のきわめて低い町

 今年(2015年)1月15日に発表された警察庁の集計(速報値)で、2014年の自殺者数が前年比で7%減の2万5374人となり、1997年以来の低水準になったことがわかった。自殺防止に向けて各自治体も取り組みを進めていることに加え、自殺防止センターなどのNPOが地道な活動を重ねてきた成果の顕れであろう。 続きを読む