コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第1回 ショーペンハウエルの読書の腕前

作家
村上政彦

 石川淳がエッセーで書いているのだけれど、かつて中国の文人・黄山谷が、士大夫(知識階級)は3日読書をしないと、顔が醜くなり、言葉にも味わいがなくなると言っているらしい。 続きを読む

キリスト教徒と僧侶による、歯に衣着せぬ対談――書評『創価学会を語る』

ライター
松田 明

世界で伸長する創価学会

 この国では「宗教」がきちんと議論されることがない。それは、社会が成熟によってデリケートなことがらをスルーしているからではなく、宗教や信仰について真摯に考えるだけの成熟にいまだ至っていないからである。 続きを読む

未来を担う若き世代にこそ読んでほしい一書――書評『新たなグローバル社会の指標』

ライター
青山樹人

名門・香港中文大学第6代学長との対話

 対談者の一方である劉遵義(りゅう・じゅんぎ)氏は香港中文大学の第6代学長(2004~2010)を務めた。1944年、中国貴州省生まれ。香港で初等教育を受けたあと米国スタンフォード大学に学び、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得。スタンフォード大学アジア太平洋研究センター長などを歴任した。経済発展と経済成長、中国を含む東アジア経済を専門とする経済学の泰斗である。1997年のアジア通貨危機を早くから予測し、警鐘を鳴らしていたことでも知られている。 続きを読む

ノルウェーの理系女子がパリで見つける幸せの基準――映画『1001グラム ハカリしれない愛のこと』

ライター
倉木健人

※このコラムには、2015年10月31日公開 映画『1001グラム ハカリしれない愛のこと』のストーリーなど内容についての記述があります。

ノルウェー国立計量研究所がロケに全面協力

 主人公は〝理系女子〟である。
 マリエはノルウェー国立計量研究所で働く科学者。生活や社会の基準となる「長さ」「重さ」の計測のエキスパートである。
 一方、私生活には失敗し、夫と別居中。夫に大半の家具を持ち出された殺風景な部屋で暮らしている。
 演じるのはノルウェーでも人気の高い女優アーネ・ダール・トルプ。心がこわばって、まるで感情が動かないように見えるマリエを、自分とは「全然違う人間」と言いつつ巧みに演じている。 続きを読む

国交正常化の原点を丹念に見直す―書評『扉はふたたび開かれる 検証日中友好と創価学会』

ライター
青山樹人

宗教家ゆえに黙殺されてきた功績

 行き詰まったら原点に帰れ、である。
 2015年1月から7月までの訪日外国人は、はやくも1100万人を超えた。中国人が最も多く275万人余で、前年の同じ時期より2倍以上に増えている。
 日中関係は観光や経済を中心にかつてないほど深まっている。一方でこの数年、政治的な次元では幾度も「国交正常化以来最悪」という形容詞で語られる危機が続いてきた。 続きを読む