コラム」カテゴリーアーカイブ

日本とフィリピンの「共生の世紀」を見つめて――書評『マリンロードの曙』

ライター
松田 明

両親を日本軍に惨殺されたアブエバ氏

 ホセ・V・アブエバ氏は、ニューヨーク市立大学、イェール大学等の客員教授を経て、東京の国連大学本部に勤務。帰国後は国立フィリピン大学総長として手腕を振るい、退官してカラヤアン大学を創立、初代学長に就任した。同国の憲法改正諮問委員会委員長を務めるなど、文字どおりフィリピンを代表する知性の1人である。 続きを読む

詩人・岩崎航の初エッセイ集――書評『日付の大きいカレンダー』

ライター
青山樹人

1万部を超えた詩集

 書店の世界で話題になっている詩集がある。岩崎航の綴った『点滴ポール 生き抜くという旗印』(ナナロク社)。2013年夏に出版されるや、1世紀超の歴史を有する『三田文学』が創刊以来初の巻頭カラーページで岩崎を紹介し、詩人・谷川俊太郎は岩崎の住む仙台まで駆けつけて彼と共にトークイベントをおこなった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第2回 ブームのその後 ラテンアメリカ文学最新事情

作家
村上政彦

 僕とラテンアメリカ文学の出会いを順序立てて語ると、世界文学と日本文学の在り方を交えた長い話になるので、読者を退屈させるわけにもいかないから、要所だけをしるすことにする。

 20歳前後の頃のことだ。ふらっと入った古書店で何気なく手にした小説が、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』(1967)だった。これはおもしろかった。 続きを読む

巨匠マファルバフが描く〝平和への寓話〟――映画『独裁者と小さな孫』

ライター
倉木健人

「アラブの春」で脚本を練る

 モフセン・マファルバフ監督はイラン出身。これまで各地の国際映画祭で50以上もの賞を受賞し、なかでもタリバン政権下のアフガニスタンを描いた「カンダハール」(2001年)はカンヌ国際映画祭エキュメニック賞に輝き、タイム誌が選ぶ歴代映画ベスト100にも選出された。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第1回 ショーペンハウエルの読書の腕前

作家
村上政彦

 石川淳がエッセーで書いているのだけれど、かつて中国の文人・黄山谷が、士大夫(知識階級)は3日読書をしないと、顔が醜くなり、言葉にも味わいがなくなると言っているらしい。 続きを読む