コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第4回 エリック・ホッファーという生き方

作家
村上政彦

 近代人の典型的な生き方は、学校で学んで、会社で働くことだ。しかし、近年になって学び方と働き方には選択肢が増えてきた。その気になれば、学校や会社という組織に属さないで、学び、働くこともできる。エリック・ホッファーは、そういう生き方の先駆的な存在だったのかもしれない。 続きを読む

アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で何があったのか――映画『サウルの息子』

ライター
倉木健人

「ゾンダーコマンド」という仕事

 無名の新人監督の作品にして、2015年カンヌ国際映画祭でいきなりグランプリを獲得した、いま世界中の映画関係者にもっとも注目されている映画である。 続きを読む

今こそ庶民の力で両国関係を動かす時――書評『日本と中国の絆』

ライター
青山樹人

〝相手の側の気持ち〟を考える

 著者の胡金定氏は甲南大学教授。1956年、中国・福建省生まれ。国立厦門大学を卒業後、世界銀行の奨学生となって日本に留学し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了した。日本暮らしは既に30年余、人生の半分を超えている。
 本書(『日本と中国の絆』)は日本と中国の文化の比較研究を続けてきた胡さんが、日常の生活習慣や文学作品、あるいは歴史上の人物の逸話などを通し、両国のかかわりを読み解いたエッセイ風の論考集である。 続きを読む

天才アピチャッポンの未公開作がついに日本で封切り――映画『世紀の光』

ライター
倉木健人

2016年はアピチャッポン・イヤー

 2010年に『プンミおじさんの森』で、タイ人監督として初めてカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン。1970年バンコク生まれ。タイ東北部のコーンケン大学で建築を学んだあと、米国のシカゴ美術館附属シカゴ美術学校で美術・映画制作の修士課程を修了した。
 これまで『ブリスフリー・ユアーズ』(02年)でカンヌの「ある視点賞」、『トロピカル・マラディ』(04年)で同「審査員賞」を受賞。いわゆる商業映画とは異なる〝個人的な映画〟としての作品を撮り続け、世界の注目を集めてきた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第3回 本の逆襲

作家
村上政彦

 僕はお菓子が好きで、かつて食後には必ずデザートにお菓子を食べ、危うくメタボになりかけた。そこで、1週間のうち、数日間だけお菓子の解禁日を決めて、その日を「お菓子祭り」と称することにした。
 辛いもの、甘いもの、数種類買って来て、全部の袋を開けて少しずつ味見する。妻には、ひとつずつ食べれば、といわれるのだが、やめられない。だって、いちばん愉しい瞬間なのだから。 続きを読む