コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第8回 短篇作家としてのトルーマン・カポーティ

作家
村上政彦

 トルーマン・カポーティという作家には、いくつかの貌がある。たとえば、映画の『ティファニーで朝食を』の原作者としての貌。また、ノンフィクション・ノベル『冷血』の作者としての貌。そして、短篇作家としての貌がある。 続きを読む

〝ガチ〟のバイオ研究者が書いたコーヒーの本――書評『コーヒーの科学』

ライター
松田 明

著者の専門はバイオ研究

 日本国内のコーヒー消費量は、2001年が41万トン余りだったのが2015年には46万トン超と、ゆるやかながら年々増加の傾向にある(全日本コーヒー協会データ)。
 スターバックスが唯一なかった鳥取県にも今や出店し、コンビニも淹れたてコーヒーの店頭販売を相次いで始めている。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第7回 編集者という仕事①

作家
村上政彦

 出版不況といわれながら、いまも編集者は人気の職業のようだ。このあいだ聞いた話だが、僕も著作を出した大手の出版社では、採用の枠が6人のところ、2万に及ぶ応募者がいたという。
 僕は知り合いの編集者の顔を思い出しながら、彼もそんな競争をくぐり抜けてきたのだな、と感慨深かった。しかし、編集者という仕事の何がそれほど人を惹きつけるのだろうか。 続きを読む

アピチャッポンの最新作、日本初公開――映画『光りの墓』

ライター
倉木健人

眠り病にかかった兵士たち

 世界が注目するタイの現代美術家にして映画作家でもあるアピチャッポン・ウィーラセタクン。2016年の日本がさながら〝アピチャッポン・イヤー〟になることは、以前に『世紀の光』についての本欄で述べた。
 その『世紀の光』に続いて3月26日から順次公開されるのが、この『光りの墓』だ。フランスの「ル・モンド」紙が「彼は新しい映画史を書いている」と評したアピチャッポンの、まさに最新作である。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第6回 フクシマの祈り

作家
村上政彦

 あなたの前にいるのはご主人でも愛する人でもありません。高濃度に汚染された放射性物体なんですよ。

と、原発事故の現場へ急行した消防士の妻は忠告を受けた。夫は14日後に死亡し、2ヵ月後に出産した赤ん坊も被曝していて、4時間で息を引き取った。彼女は、こうした話ができるようになるまで10年間かかったという。 続きを読む