コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第10回 ポップでダークな大人の童話 ブコウスキーの小説『パルプ』

作家
村上政彦

 俺はニック・ビレーン。酒に救われ、競馬に慰められている、腹に贅肉のついた55歳の中年男。LA公認の私立探偵だ。ある日、オフィスにとびきりスタイルのいい、セクシーな女性が現われた。「死の貴婦人」(レイデイ・デス)を名乗る彼女は、セリーヌを探して欲しい、と依頼してきた。セリーヌだって? とうに死んだ作家じゃないか。しかし彼女は、セリーヌは生きている、街の書店に姿を見せたという。依頼とあれば仕方がない。1時間6ドルの報酬で請け負った。 続きを読む

軽減税率で見せた公明党の現場感覚――『いま、公明党が考えていること』を読む(下)

ライター
松田 明

公明党が押し切った軽減税率

 2017年4月から、消費税が10%に引き上げられる。消費税の増税は、民主党政権時代の2012年6月に、「社会保障と税の一体改革」として自公民の三党合意で決まっていたことだ。
 公明党が導入を主張してきた軽減税率は、自公が政権に復帰した後、消費税10%時の導入が税制改正大綱に盛り込まれた。
 自民党や財務省は税収が減るとして、対象品目を「生鮮食品」のみに限定するという考えを打ち出した。公明党は、子育て世代や共働き世帯、高齢者は加工食品を利用する頻度が高いとして、加工食品も対象とすべきだと抵抗した。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第9回 人生を〝着崩す〟 ブコウスキーの詩

作家
村上政彦

 若いころジーンズを加工したことがある。履いたまま風呂に入って、そのまま乾かすと、体にフィットする。それを漂白剤でブリーチしたり、軽石で擦ったりして、わざとダメージを与えるのだ。当時は、それがスタイリッシュだった。いまでは店頭でダメージを施したジーンズが売られている。

 こういう衣服の着方は、〝着崩す〟という。ブコウスキーの人生を見ていると、この“着崩す”という言葉がぴったりの気がする。 続きを読む

平和安全法制に公明党が打った「くさび」――『いま、公明党が考えていること』を読む(中)

ライター
松田 明

「集団安全保障」の時代

 佐藤優氏と山口那津男・公明党代表の対談『いま、公明党が考えていること』では、この2016年3月に施行された平和安全法制についても語り合っている。
 この法制の背景には、国際社会の安全保障環境がかつてとは異なってきたことが指摘されている。 続きを読む

メインプレイヤーになった公明党――『いま、公明党が考えていること』を読む(上)

ライター
松田 明

 『いま、公明党が考えていること』は、キリスト教徒にして元・外務省国際情報局主任分析官、日本を代表する論客である佐藤優氏が、公明党代表の山口那津男氏と縦横に語りあった対談である。手軽な新書サイズなうえに、対談なので読みやすく、また、どこから読んでもかまわない構成になっている。

日中関係を〝過去最悪〟にさせた民主党政権

 公明党は1999年10月、自民党小渕内閣の要請を受け政権に参画した。3年3ヵ月の民主党政権時代を除き、すでに通算13年以上、日本の政権の一翼を担っている。 続きを読む