近代人にとってこの災害が耐えがたいのは、それに対抗して『する』ことがないということではないだろうか。
新型コロナウイルス禍に関して、劇作家の山崎正和氏が昨年(2020年)夏の逝去の直前、雑誌『中央公論』7月号に寄せた論考の中の一節である。事実、悪疫の世界的流行(パンデミック)という異質の災害下、私たちは「外出しないこと」「集まらないこと」を心掛けるばかりで、「行動『する』こと」「何かを『する』こと」を罪意識にも似た思いで控えている。こうした事態に、「現場で活動『する』」「生の声で伝承『する』」「人々と直(じか)に接触『する』」ことを真髄とする東日本大震災の被災地の語り部たちは、どう立ち向かってきたのだろうか。苦闘する語り部たちの姿を福島の地に追った。
(冒頭アイキャッチ画像:口演する青木代表=「富岡町3・11を語る会」提供) 続きを読む