本屋をパトロールしていたら、柴田元幸さんの翻訳した本が眼に留まった。何だか、つい最近も同じことがあったなとおもいながら、手に取った。『コーネルの箱』。ジョゼフ・コーネルというアーティストの作品について、詩人のチャールズ・シミックが書いた本らしい。
柴田さんが翻訳しているのだからおもしろいのだろうが、こちらにも予算というものがあって、すべて買うわけにはいかない。ぱらぱら捲っていたら、マルセル・デュシャンと交流があった、という記述を見て、すぐレジへ持って行った。 続きを読む

小説を読むようになったころ、手に取ったのは、最初のうちはヨーロッパの近代小説だった。やがてモダニズムの作品に親しむようになって、気づいたらアバンギャルドへたどりついていた。
いちばん気に入ったのは、フランスのヌーボーロマンだ。代表的な作家であるアラン・ロブ=グリエの作品を追いかけた。彼の作品で手に入るものは、すべて読んだ。といってもフランス語は読めないので、翻訳されたものに限る。 続きを読む
僕が文学と出会ったのは、近所の小さな本屋さんだった。このコラムでも何度か書いている気がする。成長して街場へ出掛けるようになったとき、大型書店へ出入りするようになった。
最初、友人と一緒に出掛けたのだが、彼がそれほどの本好きではないかことが災いして、すぐに帰ろうと言い出す。僕は宝の山へ踏み入ったトレジャーハンターのようになっているので、何を言っているのだという気持ちになる。で、結局、彼は怒って帰ってしまった。 続きを読む
かつてこのコラムで町の本屋について取り上げた。僕は実家の近所にある小さな本屋で文学と出会って小説家を志した。もし、この本屋がなければ、僕の人生は違ったものになっていたかも知れない、と書いた。
その後、僕はふとあることに気づいた。読書をするとき、手に取る本は、本を扱う人々についてのものが結構あるということだ。どうかすると、本業の小説についての本よりも、そっちのほうに関心を惹かれている。 続きを読む