作者が子どもたちに語ったこと
本書に収められた2編の小説の作者は、創価学会第3代会長であり創価学会インタナショナル会長であった池田大作である。
ただし最初に明確にしておきたいのは、この2編はもちろん、池田が子どもたちに書き綴り贈ってきた絵本や物語といった文芸作品からは、特定の宗教的ドグマや価値観がいっさい排除されていることだ。
あらゆる宗教運動にとって、次世代への信仰の継承が重要な問題であることは言うまでもない。
しかし、池田が若い命に対して指針としたのは、①健康でいこう ②本を読もう ③常識を忘れないでいこう ④決して焦らないでいこう ⑤友人をたくさんつくろう ⑥まず自らが福運をつけよう ⑦親孝行しよう(未来部7つの指針)といったことである。
とりわけ、いずこの国においても池田が中高生の世代に繰り返し伝えてきたのは、「友情」「信念」「正義」「平和」といったことがらについて、世界の名著や偉人の生き方を通して思索し、これらを大切にする人間に育ってほしいという願いであった。
本書の2編の小説のうち、『ヒロシマへの旅』は1986年8月から87年2月まで、『フィールドにそよぐ風』は1988年11月から89年3月まで、いずれも創価学会中等部の当時の機関紙『中学生文化新聞』に連載されたものである。
いずれも1996年に『池田大作全集』第50巻に収録されたが、本書はこれを底本として著作権者の了解のもと一部修正し、このほど第三文明社から刊行された。 続きを読む