連載エッセー「本の楽園」 第110回 小川洋子の小説

作家
村上政彦

 僕は1987年に福武書店(現ベネッセ)主宰・『海燕』新人文学賞をもらって作家デビューした。同時受賞者が吉本ばななだった。その数回あとの受賞者に小川洋子がいた。当時、お世話になっていた編集者の寺田博さんが、ある文壇酒場で、「ダイヴィングプール」という短篇を褒めていた。
 僕はそれで小川洋子という作家を知ったのだが、何かのパーティーで遠くから見かけただけで、面識はない。それでも僕が信頼している編集者が褒めていたこともあって、ずっと注目していた。
 彼女はやがて芥川賞を受けて、ベストセラーも出し、人気作家となった。最近では国際的な文学賞の候補にも名を連ねている。『海燕』新人賞の同窓としては(彼女はそうおもっていないかもしれないが)、慶祝である。 続きを読む

偽装FAX送った共産党―過去3回の衆院選候補者

ライター
松田 明

「40年来の支持者より」

 さる3月16日、10数人の公明党大阪市議会議員宛てに、あいついで1枚のFAXが届いた。手書きの文字で文面はどれも同じ。

広域行政一元化条例に
反対して下さい。
賛成したら公明党に今后一切
投票しません。

40年来の支持者より。

 差出人は匿名で「40年来の支持者」と名乗っている。なるほど、ふつうは「今後」と書くところを「今后」と書くなど、年輩の人の筆跡を思わせる。 続きを読む

芥川賞を読む 第2回 『表層生活』大岡玲

文筆家
水上修一

人間とコンピュータの関係。その危うさに切り込んだ挑戦的作品

大岡玲(あきら)著/第102回芥川賞受賞作(1989年下半期)

傍観者が語る異常さ

 第102回の芥川賞は、W受賞となった。前回取り上げた『ネコババのいる町で』と共に、大岡玲の『表層生活』が受賞。枚数は171枚。東京外大在籍当時から小説を書き始め、2作目の『黄昏のストーム・シーディング』が三島由紀夫賞を獲り、その翌年に芥川賞を受賞。31歳の時だった。
 テーマは、コンピュータを筆頭とするテクノロジーが、人間の思考や価値観にどのような影響を与え変容するか、ということだ。当時は、まさにコンピュータが私たち一般人の生活の中にも深く入り込みつつあった時代だったので、こうしたテーマはあらゆる場面で話題になることが多かったはずだ。そういう意味では、時代を切り取る文学作品としては実にタイムリーだったに違いない。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第109回 楽しい生物学

作家
村上政彦

 若いころから、僕は典型的な文系だった。理数系はまったくだめだった。からだが受け付けない。数字や化学式などを見ると、自然に思考が停止する。小学校のころの理科は、少しおもしろかったけれど、中学に進んで、算数が数学と呼ばれるようになると、理系の授業も嫌になった。
 ともかく、おもしろくない。僕の興味を惹いてくれない。教科書に、学ばせるための努力をしろよ、と言いたかった。教師への不平ではない。少なくとも僕を教えてくれた教師は、生徒が関心を持つように、いろいろと授業を工夫してくれた。だから、教科書と、こちらの問題である。
 国語は好きだった。教科書を手にすると、すぐに全部読み終えた。詩でも、小説でも、エッセイでも、短歌や俳句でも、論説文でも、なんでもおもしろいとおもった。言葉で表現されたものは、広告のコピーすらおもしろかった。
 長い歳月を経て、小説を書くようになって、30年以上が過ぎた。つい最近、尊敬している作家の先輩から、あなたは理数系が嫌いでしょう、といわれた。その通りである。だめだよ、あんなおもしろい世界はないよ。そうですか? そうだよ。 続きを読む

特集㉕ 日蓮正宗、謀略の決行——年末ギリギリの混乱狙う

ライター
青山樹人

 この記事は『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』(青山樹人著/鳳書院)の発売にともない「非公開」となりました。
 新たに「三代会長が開いた世界宗教への道(全5回)」が「公開」となります。

「三代会長が開いた世界宗教への道」(全5回):
 第1回 日蓮仏法の精神を受け継ぐ(4月26日公開)
 第2回 嵐のなかで世界への対話を開始(5月2日公開)
 第3回 第1次宗門事件の謀略(5月5日公開)
 第4回 法主が主導した第2次宗門事件(5月7日公開)
 第5回 世界宗教へと飛翔する創価学会(5月9日公開)

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『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』
青山樹人

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