三代会長が開いた世界宗教への道⑤――世界宗教へと飛翔する創価学会

ライター
青山樹人

新しい世界秩序を求めて

 それまでの冷戦構造が崩壊した1990年代以降、人類は新たな秩序を求めていた。世界の多極化とアイデンティティの揺らぎは、いたるところにナショナリズムや民族主義の不穏な火を放ちはじめていた。
 世界の指導者たちは池田先生との対話を求めた。90年代の10年間に会見した国王、大統領、首相だけで40人に及ぶ。
 また世界各国の著名な学識者たちは競うように池田先生の著作を読み、各国を代表する最高峰の大学や学術機関が講演を要請した。90年代に実現した講演だけでも次のとおりである。

ブエノスアイレス大学(アルゼンチン/90年3月)
北京大学(中国/90年5月)
マカオ東亜大学(現・マカオ大学 返還前のマカオ/91年1月)
フィリピン大学(フィリピン/91年4月)
ハーバード大学(米国/91年9月)
香港中文大学(返還前の香港/92年1月)
ガンジー記念館(インド/92年2月)
アンカラ大学(トルコ/92年6月)
中国社会科学院(中国/92年10月)
クレアモント・マッケナ大学(米国/93年1月)
ブラジル文学アカデミー(ブラジル/93年2月)
ハーバード大学(93年9月)
深圳大学(中国/94年1月)
モスクワ大学(ロシア/94年5月)
ボローニャ大学(イタリア/94年6月)
ハワイ・東西センター(米国/95年1月)
アテネオ文化・学術協会(スペイン/95年6月)
トリブバン大学(ネパール/95年11月)
サイモン・ウィーゼンタール・センター(米国/96年6月)
コロンビア大学(米国/96年6月)
ハバナ大学(キューバ/96年6月)
ラジブ・ガンジー現代問題研究所(インド/97年10月)

ソクラテスの対話を蘇らせた人

 池田先生は1980年代までに、モスクワ大学など世界の6つの大学から名誉学術称号を受けていたが、90年代には新たに65大学が名を連ねた。
 2001年には早くも100番目の受章となり、2022年4月末時点で400に達している。文字どおり人類史上に並びない知の宝冠である。
 2度目のハーバード講演がおこなわれた1993年、池田先生によってそのボストンの地に池田国際対話センター(旧名・ボストン二十一世紀センター)が創立された。以来、精力的に異なる宗教土壌の学識者たちとの対話やシンポジウムを重ね、今や世界的な碩学たちが訪れる重要な学術拠点となっている。
 同センターが出版した研究書は、ハーバード大学、スタンフォード大学、イェール大学など全米はもとより各国の300以上の大学の約1000講座で使用されている。
 1996年には、やはり池田先生によって「文明間の対話」をモットーに掲げ戸田記念国際平和研究所が創立された。初代所長に就任したのは、平和学の泰斗でありイスラム教徒であるマジッド・テヘラニアン博士。のちに国連は2001年を「文明間の対話年」と定めるが、これを国連に提唱したのはテヘラニアン博士の出身国イランのハタミ大統領だった。
 ゴルバチョフ元ソ連大統領は、創価学会創立75周年(2005年)に寄せた祝福のメッセージで、こう述べた。
〈池田先生は、東西冷戦によって分断された世界を駆けめぐり、人々の心の中に安心と信頼の輪を幾重にも広げました。対話という唯一の武器を持って戦われたのです。まさにソクラテスの対話を蘇らせた方であります。〉

「ガンジー・キング・イケダ展」

 マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの母校である米国モアハウス大学は、南北戦争の2年後に創立されたキリスト教系の名門大学だ。
 2000年9月、キングの精神の継承と顕彰に生涯をささ捧げてきた、同大学キング国際チャペルのローレンス・E・カーター所長が来日。同大学として池田先生に「最高学識者」称号を贈った。
〈池田大作は、マハトマ・ガンジーとマーチン・ルーサー・キング・ジュニアが求めて戦ったすべてを、生きながらに体現する存在である〉
 カーター所長は、こう高らかに宣言し、さらにモアハウス大学の「人権の闘士の殿堂」に掲げられることになった池田先生夫妻の肖像画を紹介した。
 キングの精神を永遠に顕彰するその場所には、すでにネルソン・マンデラら世界の人権の闘士の肖像画が掲げられてきた。だが、池田先生の肖像画は少しばかり異例なものだった。
 肖像画には、池田先生と並んで香峯子夫人の姿がともに描かれ、創価学会の初代会長である牧口常三郎、2代会長である戸田城聖のふたりが、夫妻の背後に描かれていた。
 それはモアハウス大学が、牧口・戸田・池田という創価学会の三代の指導者に貫かれた「師弟の道」を高く評価し、また夫の偉大な闘争を妻が支え続けてきた池田先生夫妻の半世紀の道のりを、人類への献身の歴史と受けとめたからだ。
 その後、同大学は「融和のためのガンジー研究所」などと協力して「ガンジー・キング・イケダ――平和建設の遺産展」を全米はじめ世界各地で開催している。
 南米パラグアイやニュージーランドでは、国会の議決を経て国会議事堂を会場に同展が開かれた。ドイツの首都ベルリンやアイスランドの首都レイキャビクでは、市庁舎で開催されている。各国はそれほどの熱意と敬意をもって、この展示を受け容れている。
 カーター所長は、2018年に『A Baptist Preacher’s Buddhist Teacher』(バプティスト牧師の仏法の師匠)を米国のミドルウェイ・プレスから出版。同書は、キリスト教のもっともすぐれた書籍を選出するイルミネーション・ブック・アワードの「回想録」部門で、2019年の金賞に輝いた。
 邦訳は『牧師が語る仏法の師』とのタイトルで第三文明社から発刊されている。
〈池田会長とSGIは、究極の宗教的な実用主義者(プラグマティスト)だと思います。老若男女を問わずあらゆる人に、信仰の教典と手段と組織を与えて、自身の成仏、組織的行動、平和運動への取り組みを可能にしているからです。このような非凡な精神性は、他のどの宗教団体でも見たことがありません。わが師キング牧師の非暴力哲学を、どうしたら永久に継承していけるのだろうかと絶望していた日々から私を救い出してくれたのは、池田会長と創価学会との交流でした。〉(同書より)

中国に広がる池田大作研究

 2006年3月、北京大学に隣接する資源ビルディングに創価大学の北京事務所がオープンした。外国の大学としては、ハーバード大学、東京大学に次いで、創価大学が3番目である。
 オープニングの式典には、中国外交部の楊振亜元駐日大使、中日友好協会の井頓泉常務副会長、元北京大学党委員会書記の王学珍主任が出席。また中国科学技術大学の朱清時学長、浙江大学の潘雲鶴学長、東北大学の赫冀成学長ら、9人の大学学長など44大学の関係者、各界を代表する200人ものそうそうたる顔ぶれが揃った。
 今日、中国では北京大学、復旦大学など45(2022年5月時点)の名門大学に「池田思想」の研究機関が公式に開設されている。学長自らが研究所長を兼務する大学もある。
 2014年10月には、日中間が〝国交正常化以来で最悪〟という厳しい状況下だったにもかかわらず、西安にある陝西師範大学を会場に第8回の「池田大作思想国際学術シンポジウム」が開催された。池田先生の初訪中40周年を記念したもので、中国と諸外国の43大学・諸機関から107人の研究者らが出席。78本の論文が寄せられた。
 池田先生とイギリスの歴史学者アーノルド・トインビー博士との対談集『二十一世紀への対話』は、中国でも1985年に『展望二十一世紀』として出版。当時の代表的なベストセラーとなっている。
 中国の学術界でこれほど池田研究が広がっている背景として、長年にわたって同書が読み継がれてきたことがある。名門・華中師範大学の元学長であり、中国近代史の泰斗として「史学大師」と尊称される章開沅博士も、85年に『展望二十一世紀』を読んだひとりだ。
〈心の底から深い共鳴を感じました。以来、私は池田会長をすごい人物であると深く尊敬しておりました。また池田会長の意見、考え方を論文のなかで何カ所も引用させていただきました。〉(『第三文明』2007年8月号)
 章博士は池田先生と対談集『人間勝利の春秋』(日本語版は第三文明社)を刊行し、華中師範大学「池田大作研究所」の学術顧問に就いている。
 世界はこのように池田大作という人と、その思想と行動を見ているのだ。
 2015年6月。フィレンツェにあるイタリア文化会館に同国のマッテオ・レンツィ首相を迎え、フィレンツェ市長ら多数の来賓が見守るなか、イタリア共和国とイタリアSGIがインテーサ(宗教協約)に調印した。
 共和国憲法第八条に基づき、信教の自由の擁護を前提として、イタリア共和国が影響力のある宗教団体との間に、教育・研究機関の設立など諸権利を認める協約だ。これまで同国内では12の団体しか認められていない。14年間にわたる厳正な審査を経て、イタリアSGIがいよいよその一角に迎えられることとなった。
 これは、今やヨーロッパ最大の仏教宗派となったSGIが、どのように認識されているかを雄弁に物語るものだ。世界広布新時代の躍進を象徴する慶事となった。
 大西洋に浮かぶ島々でも、富士山より高いアンデスの街でも、かつて日本の軍靴が踏みにじったアジアの諸国でも、希望の大陸アフリカの諸国でも、今この瞬間、広宣流布は同時進行で生き生きと進んでいる。

ICANがノーベル平和賞受賞

 2017年、核兵器禁止条約の制定に向けたキャンペーンを展開し続けてきたICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)がノーベル平和賞を受賞し、現地時間の12月10日、ノルウェーの首都オスロの市庁舎で授賞式がおこなわれた。
 式典には、ノルウェー・ノーベル賞委員会の招聘を受け、ICANの国際パートナーの一員としてSGIの代表も列席した。
 ICANが設立されたのは2007年。母体となったのは1980年に誕生したIPPNW(核戦争防止国際医師会議)だ。IPPNWも85年にノーベル平和賞を受賞している。87年には共同創設者のバーナード・ラウン、ミハイル・クジンが相次いで日本を訪れ、池田先生と会見している。
 核廃絶に対する創価学会の取り組みは非常に長く、1957年9月8日、戸田先生が横浜・三ツ沢の地で、核廃絶への取り組みを「遺訓の第一」として青年たちに託したことに淵源を持つ。
〈じつは、ICAN設立前の一時期、核兵器廃絶の運動は世界的に大きな停滞期を迎えていました。平和運動に携わる人たちの関心が環境問題などに移り、一方では核軍縮に関する重要な動きで失敗がつづいたためです。たとえば、2005年5月のNPT(核拡散防止条約)再検討会議は何の成果も得られず閉会し、同年9月の国連総会の首脳会合の成果文書では、核兵器に関する言及が見送られました。
 そうした状況を重く見た池田会長は、翌2006年1月26日発表の第31回「SGIの日」記念提言の中で、2010年までの5年間を核兵器廃絶の流れを作り直す「重要な挑戦の時である」とし、世界の志を同じくする人々に共闘を訴えました。
 その提言に呼応するように、翌年にICANが設立され、そこを起点に世界の核廃絶運動が再び盛り上がっていったのです。〉(佐藤優『世界宗教の条件とは何か』潮出版社)
 ICANが設立されると、設立メンバーのひとりで当時の議長だったティルマン・ラフ博士が創価学会本部を訪ね、SGIに国際パートナーに就いてくれるよう要請した。
〈ICANを立ち上げた時、SGIと協力したいと考えたのは自然なことでした。多様な人々によるグローバルな連帯と貢献――ICANが目指していたものを、SGIは体現していたからです。〉(ティルマン・ラフICAN国際運営委員/『聖教新聞』2017年12月16日)
 SGIはこれを快諾し、両者はそれ以来、「核兵器なき世界への連帯――勇気と希望の連帯」展を共同制作して世界81都市を巡回させたほか、広島での「核兵器廃絶のための世界青年サミット」の開催(2015年)など、多くの活動を協力して展開してきた。
〈SGIは、私たちICANにとって最も古く、一貫したサポーターの一つです。核兵器の禁止と廃絶を目指す戦いにおいて、計り知れないほどの重要な役割を担ってきました。〉(ベアトリス・フィンICAN事務局長/『聖教新聞』2017年12月13日)
 佐藤優氏は、こうした一連の流れを踏まえて、こう述べている。
〈そうした経緯を考えれば、「ICANがノーベル平和賞を受賞したことは、SGIが受賞したに等しい」と言ってもけっして過言ではないと思います。〉(前掲『世界宗教の条件とは何か』)
 核廃絶への民意、国際世論の動向で見逃せないのは、世界に12億人以上の信徒を持つカトリックの総本山バチカンの意思だ。現在の教皇フランシスコにとって、「核廃絶」はもっとも重視しているテーマのひとつ。
 2019年に被爆地・長崎を訪問した際のスピーチでは、核兵器禁止条約の重要性にも言及し、世界の指導者たちに向けて、「核兵器のない世界が可能であり必要であるという確信」(「VATICAN NEWS」2019年11月24日)を訴えかけた。
 そのバチカンが核廃絶への重要なパートナーのひとつと見なしているのが、欧米最大の仏教宗派であり、世界192カ国・地域の「世界市民」の連帯としてのSGIである。
 核兵器禁止条約が採択された直後の2017年11月には、ローマ教皇庁が「核兵器のない世界と統合的軍縮への展望国際会議」を開催。SGIはこの会議の協力団体となっている。世界から数百名が参加した2日間の会議。記念撮影の最前列には、教皇フランシスコとともにノーベル賞受賞者、国連軍縮担当上級代表、池田博正SGI副会長、日本の被爆者の代表らが並んだ。

永遠に指揮をとる

 世界広宣流布のあり方について、かつて池田先生はスペイン語版御書全集に寄せた「序文」で、次のように述べた。
〈宗教の種々の違いは、人間の多様性、時代の違い、地域の違い、歴史的経緯の違いなどの要因が複雑に影響し合って生じてきたものである。しかし、それぞれの異なった教義の中には、人間の幸福を実現するための何らかの洞察と真実が含まれている。現代の宗教間の対話において、それぞれの違いは違いとして認め合いつつ、各宗教の洞察と真実を学びあっていけば、人間の幸福のための宗教として、互いに錬磨していくことができるにちがいない。
 そして、この対話と相互錬磨の道をどこまでも歩み続けて、人類の全宗教がそれぞれの固有の価値を発揮しつつ、「人間のための宗教」として結びつき、世界平和実現への最大の力になっていくことを、私は念願している一人である。〉(『大白蓮華』2011年5月号)
 それにしても、人類史をふりかえって、これほどの短日月のうちに全人類に影響を及ぼす規模の宗教運動が確立された事例はないだろう。
 創価の三代の指導者、とりわけ池田先生と共に立ち上がった幾百千万の民衆群像は、未来までの物語として刻まれるに違いない。

※この記事は『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』(青山樹人著/鳳書院)から全5回にわたって抜粋し、一部加筆したものです。

三代会長が開いた世界宗教への道(全5回):
 第1回 日蓮仏法の精神を受け継ぐ(4月26日公開)
 第2回 嵐のなかで世界への対話を開始(5月2日公開)
 第3回 第1次宗門事件の謀略(5月5日公開)
 第4回 法主が主導した第2次宗門事件(5月7日公開)
 第5回 世界宗教へと飛翔する創価学会(5月9日公開)


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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書店)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書店)、『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』(2022年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。