岸田首相に対して核兵器のない世界を強く諭したローマ教皇

中部大学教授
酒井吉廣

 令和4年5月3日、4日、岸田文雄首相はイタリア共和国及びバチカンを訪問し、4日にはローマ教皇フランシスの謁見を受けた。
 今回のローマ教皇と岸田首相との会談の内容は、将来の核兵器禁止条約を日本がどう扱うべきかを考えるのに重要だと理解したので、とても短い原稿になるが、寄稿した次第である。

日本政府と教皇庁で異なる岸田首相謁見の報道

 4日のローマ教皇との会談で日本政府の報道では、核兵器の廃絶に向けた両者の認識の一致とウクライナ情勢について岸田首相が語ったことになっている(「ローマ教皇フランシスコ台下への謁見・日バチカン首脳会談」外務省HP)。
 これに対して、教皇庁の報道(Holy See Press)は「Pope Francis: ‘Use and possession of nuclear weapons inconceibable’」と題名に岸田首相の名前を入れず、内容も核兵器禁止の話に特化しており、ウクライナのことについては最後に対話と平和が急ぎ必要だと語っている。
 ローマ教皇は会談で、戦争の片側を支援するのではなく、戦争そのものを悪として即時和平の必要性を説いた。これは、池田大作創価学会名誉会長の戦争を悪とする思想に通ずる発言だったとの印象を受けた。
 また、ローマ教皇は「核兵器の使用と保有に全面的に反対する」という立場を表明した。
 教皇庁広報局のマテオ・ブルーニ局長によると、ローマ教皇は岸田首相との話の中で、「平和が花開くためには、すべての人々が戦争の武器を捨てる必要があり、中でも最も強力な破壊力を持つ核兵器は、都市全体、国全体を麻痺させるほどの殺傷能力と破壊力があることが、明確になっている」と述べた。ブルーニ局長は岸田首相の反応には触れていないが、岸田首相も賛成したに違いない。

看過できない「核共有」論

 ローマ教皇が反核の思いを語ったのは、今回が初めてではない。例えば、日本においてだけでも、2019年、広島の原爆被災から75年を翌年に迎えるにあたり記念式典の主催者にメッセージを送った。同じ19年の来日時には、長崎の長崎爆心地公園、広島の平和記念公園で祈りを捧げ、被爆者と面会している。この時、ローマ教皇は、核兵器の保有や配備は不道徳であると述べている。
 そして、繰り返しその核兵器廃絶を訴え、核兵器禁止条約への支持を表明している。
 ロシアのウクライナ侵攻で核兵器の使用が懸念されている今、ローマ教皇の核兵器廃絶への呼びかけは見過ごすことはできない。また、日本国内でも「核共有」との意見が政治家から出てきているが、決して看過できない。
 今回の会談でローマ教皇は、広島選出の岸田首相に、そのような思いのすべてをぶつけたのではないだろうか。
 4月26日、公明党の山口代表は、アメリカの核兵器を同盟国で共有する「核共有」について否定的な考えを示し、

岸田政権は非核三原則を堅持する姿勢であり、公明党も同様だ。日本は核兵器のない世界を目指してリーダーシップを取るべきだ。(「NHK NEWS WEB」4月26日

と述べている。
 核兵器のない世界を実現するために、ローマ教皇と岸田首相の歴史的な会談をよい機会として、公明党を中心として日本は、核兵器廃絶への本格的な舵取りをすべき時が来ていると感じてならない。

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