「革命政党」共産党の憂うつ――止まらぬ退潮と内部からの批判

ライター
松田 明

「赤旗」の発行自体が危機的事態

 6月26日の『しんぶん赤旗』が、ちょっとした波紋を呼んだ。1面の全幅を使って掲げられたヨコ見出しにデカデカと、

革命政党として統一と団結固める

との文字が躍っていたからだ。
 これは24日から2日間にわたって開催された日本共産党の「第8回中央委員会総会」(8中総)を報じた紙面だ。赤旗の1面に「革命政党」という文字が躍ったのは、いつ以来のことだろう。党員や支持者のなかからは、むしろ戸惑いや反発の声も聞こえる。
 8中総では、退潮傾向に歯止めがかからない党勢への言及が相次いだ。
 先の統一地方選で、日本共産党は計135議席を減らす大惨敗を喫した。党員の減少と高齢化、機関紙『しんぶん赤旗』の部数減も著しい。
 志位和夫委員長自身が、

討論では、党内に、「もう一つ元気が出ないという声がある」、「敗北主義的な傾向がある」ということが率直に出されました。(8中総「結語」

この2回の国政選挙と統一地方選挙での後退、連続する激しい反共攻撃などに直面して「何となく元気が出ない」という気分が党内にあることは事実だと思います。(同)

と述べている。
 党員の減少と機関紙の退潮は、今に始まったことではない。3年前の2020年2月の『しんぶん赤旗』は「読者拡大の現状は危機的」と題して、田中悠・機関紙活動局長の厳しい現状認識を記している。

読者拡大の現状は危機的であり、ずるずると推移するならば、文字通りの「発行できなくなる危機」にたちいたることを、率直にお伝えしなければなりません。(『しんぶん赤旗』2020年2月16日

 今年5月30日、田中局長は再び、

いよいよ「赤旗」の発行自体が危機的事態に直面するギリギリの状況です。

と窮状を訴えた。

すべては「支配勢力からの攻撃」

 日本共産党が「統一戦線」戦略として推し進めてきた野党共闘は、旧民主党を分裂させ、2年前には立憲民主党の執行部総退陣を招き、日本共産党そのものも退潮させている。
 それでも志位和夫委員長は、なんと2000年11月から22年以上も党首の座に君臨したままだ。
 こうした実態に共産党の内部からも批判の声が上がり、今年1月には現役のベテラン党員が相次いで執行部の刷新と党首公選を求める書籍を出版した。
 すると、党はこれらの人物を除名。さすがに左派系文化人や朝日新聞、毎日新聞などからも批判が出たが、共産党は〝大軍拡反対への連帯の分断〟だとヒステリックに反発した。
(参考:WEB第三文明「暴走止まらぬ共産党執行部――2人目の古参党員も『除名』」)
〝粛清〟は止まらず、6月に入っても兵庫県南あわじ市議の蛭子智彦氏が、これら除名者に同調するSNS投稿をしたとして、罷免・除籍処分となっている。
 今回の8中総でも、志位氏は自身に向けられている批判について、次のように述べた。

結局、批判の中身は、「選挙で後退した」「党勢が後退した」というもので、私個人が政治的に重大な誤りを犯したとか、品性の上で重大な問題点があるという批判ではありません。つまりこの攻撃の本質は、日本共産党そのものに対する攻撃(党サイト「志位委員長の幹部会報告」

「長すぎるのが問題」という批判は、2020年の第28回党大会にむけた討論ではまったく出なかった批判であり、21年総選挙いらいの反共攻撃のなかで支配勢力から意図的に持ち込まれた議論だということを指摘しておきたいと思います。(同)

 党勢は退潮しているけれど、それは委員長の「政治的に重大な誤り」ではないので、委員長への批判は「日本共産党そのものに対する攻撃」になるらしい。
 古参のベテラン党員らから相次いで諫められたことも、「支配勢力から意図的に持ち込まれた議論」だと言うのだ。

「暴力革命の方針に変更なし」

 もはや鉄の規律と党執行部のメンツを守ることが目的化して、世のなかに自分たちがどう映っているかなどお構いなしなのだろうか。そう考えると、8中総の閉会を告げる赤旗が「革命政党として統一と団結固める」と大見出しを打ったことは象徴的である。
 ところで、この日本共産党が掲げる「革命」について、公安調査庁は1952年の創設以来、民主党政権時代も含めて強い警戒を緩めていない。
 公安調査庁のサイトには、

 共産党は、第5回全国協議会(昭和26年〈1951年〉)で採択した「51年綱領」と「われわれは武装の準備と行動を開始しなければならない」とする「軍事方針」に基づいて武装闘争の戦術を採用し、各地で殺人事件や騒擾(騒乱)事件などを引き起こしました。
 その後、共産党は、武装闘争を唯一とする戦術を自己批判しましたが、革命の形態が平和的になるか非平和的になるかは敵の出方によるとする「いわゆる敵の出方論」を採用し、暴力革命の可能性を否定することなく、現在に至っています。
 こうしたことに鑑み、当庁は、共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体としています。
公安調査庁「共産党が破防法に基づく調査対象団体であるとする当庁見解」

と記されている。

「将来は憲法の進歩的改正」と主張

 現在も日本共産党の実質的な最高指導者である不破哲三氏は、1968年に著わした論文で当時の日本社会党の平和革命路線を批判し、

「平和革命」の道を唯一のものとして絶対化する「平和革命必然論」は、(中略)日和見主義的「楽観主義」の議論であり、解放闘争の方法を誤らせる(『現代政治と科学的社会主義』新日本出版社)

と述べている。日本共産党はこれら複数の重要論文をいまだ公式に否定していない。だからこそ公安調査庁も警察庁も「暴力革命の方針に変更なし」と警戒を続けるのだ。
 この6月、野党の参議院議員が今でもこの見解に変更がないか質問主意書を提出。27日、政府は「答弁書」を閣議決定した。

日本共産党は、日本国内において破壊活動防止法(昭和27年法律第240号)第4条第1項に規定する暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、また、同党のいわゆる「敵の出方論」に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識しており、現在でもこの認識に変わりはない。(「政府答弁書」令和5年6月27日)

 なお、1975年に日本共産党出版局が発刊した『日本共産党と憲法問題――公明党への回答と質問』では、共産党の綱領を実現するために改憲が必要だと主張している。

たとえば、現憲法の天皇条項をそのままにしては完全な民主主義を実現できず、社会主義を実現できないと考えている。だからわが党は、〝主体的意志〟として、将来の展望のなかに憲法の進歩的改正を含めている。(『日本共産党と憲法問題――公明党への回答と質問』)

 自衛隊を「違憲の存在」としながら、もし日本の主権が他国に侵されれば「自衛隊を活用する」と言い、日本国憲法とはまったく相いれない「社会主義・共産主義の社会」の実現を綱領に掲げ「憲法の進歩的改正」を主張しながら、「護憲政党」だと言い募る政党。
 今や野党のなかでも孤立する「革命政党」は、どこへ向かうのであろうか。

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