歴史的なG7広島サミット――「核兵器のない世界」めざして

ライター
松田 明

G7首脳等による平和記念公園行事(「首相官邸サイト」5月19日)

首脳らが「被爆の実相」に触れる

 3日間にわたったG7広島サミットが無事に閉幕した。
 1975年の第1回からの歴史を通しても、さまざまな面でもっとも意義のあるサミットになったという声も聞かれる。
 特筆すべきことの第一は、米国、イギリス、フランスという核保有国を含むG7首脳が、そろって平和記念資料館を見学し、被爆者とも面会したこと。米国は広島に原子爆弾を落とした当事国であり、米国も他の核保有国も核抑止論に立って核戦力の近代化を進めている。
 それらの国の首脳が〝核兵器の惨状〟を伝える資料館を訪れることには、自国内で慎重論や反対論も根強かった。
 今回、核兵器国と非核兵器国の首脳がともに資料館で「被爆の実相」を目にし、その足で原爆慰霊碑に献花したことの意義は大きい。
 最終日21日には、インドなど招待国8カ国の首脳と国際機関の代表らも資料館に足を運び、原爆慰霊碑に献花した。また、ウクライナのゼレンスキー大統領も同じく資料館を見学し、岸田首相とともに慰霊碑に献花した。
 米国のバイデン大統領はサミット閉幕後の記者会見で、

19日の原爆資料館への訪問に関して「核戦争の破壊的な現実と、平和構築のための努力を決して止めないという共同の責任を思い起こされた。G7の首脳と共に、核兵器の脅威のない世界の実現に向けて、引き続き取り組んでいくことを改めて誓った(『毎日新聞』5月21日

と述べた。またイギリスのスナク首相も資料館で深く心を動かされたと述べ、

「爆発でねじ曲がった子供の三輪車や破れた血まみれの制服などの展示品を見た」と明かし、「これらの記憶を胸に刻み、我々は(広島で)何が起きたのか決して忘れないと決意し、歴史的なG7サミットで平和と自由、民主主義の道を歩むことを誓った」と強調した。(『毎日新聞』5月21日

各国間の対話を加速させたサミット

 議長国である日本は、広島サミットにオーストラリア、ブラジル、コモロ(アフリカ連合議長国)、クック諸島(太平洋諸島フォーラム議長国)、インド(G20議長国)、インドネシア (ASEAN議長国)、韓国、ベトナムの8カ国首脳を招待した。
 多くはグローバル・サウスと呼ばれる新興国を代表する国々であり、インドやブラジルのように対ロシアでG7とは態度に一線を画している国もある。
 日本は絶妙なバランスでこれらの国々を招き、G7との対話の輪のなかに引き入れた。
 イギリスのスナク首相は閉幕後の記者会見で、

岸田氏がゼレンスキー氏とグローバル・サウスの首脳たちを日本に呼んだことについて、「多大な称賛」を贈ると表明。G7が「より多くの国や地域と関わり、その声に耳を傾けている」ことを示したとし、こう続けた。
「日本は、私たちの安全保障が、住む場所に関係なく分かちがたいものだと示した。私たちがもつ価値観は普遍的なものだ」(「BBC NEWSJAPAN」5月21日

と日本の努力を称賛した。
 国内事情でサミット後のパプアニューギニアやオーストラリア訪問を取りやめていたバイデン大統領も、急きょ広島でクアッド(日米豪印戦略対話)を開催することができた。
 また日米韓3カ国首脳会談も実現し、バイデン大統領はあらためて日韓首脳を米国に招待すると表明した。
 広島では他にも各国同士のバイ(2国間)会談が分刻みでおこなわれ、首脳同士がひざ詰めでさまざまな対話・交渉を繰り広げることができた。
 重苦しい戦争と分断が広がる世界にあって、「対話」の力と重要性を世界中の人々が実感したのではないか。

白眉はゼレンスキー大統領の対面参加

 広島サミットのハイライトは、なんといってもウクライナのゼレンスキー大統領の対面参加が実現したことだろう。このことでサミットに対する世界各国の注視は一気に高まった。
 とりわけロシアによる侵攻後初めて、インドのモディ首相とゼレンスキー大統領が会談できたことの意味は大きい。
 インドは一方でクアッドに参加しつつ、欧米の対ロ政策とは一線を画し、ロシア産の原油を購入している。

モディ氏は会談中、「ウクライナでの戦争は、全世界に影響を与えている大きな問題だ」としたうえで、「政治や経済ではなく、人道や人間の価値観に関する問題だと考えている」と指摘。ウクライナへの人道支援の拡大を誓い、「解決に向けてできる限りのことをしていく」とも表明した。(「朝日新聞デジタル」5月21日

 バイデン大統領もNATO諸国がウクライナにF16戦闘機を供与することを容認し、パイロットの訓練を米国内でおこなうことを表明した。
 むろん、これらは長い時間を要することであり、むしろロシアが停戦に応じる環境づくりを進めたものだと見られている。
 ウクライナは今、ロシアによる核攻撃の脅威に直面している。またザポリージャ原発もロシアの軍事支配下にある。
 ゼレンスキー大統領が広島の地から世界に向けて発信したことは、いかなる国も核の脅威を戦争に利用してはならないという強力なメッセージとなった。
 あるいは今回のサミットが、ウクライナ侵攻停戦への転換点になり得るかもしれない。
 水面下で関係各国と調整し、ゼレンスキー大統領の参加を実現させることができたことは日本外交の大きな成果だろう。

日本政府に課された大きな宿題

 19日に発出された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」では、

我々は、2022年1月3日に発出された核戦争の防止及び軍拡競争の回避に関する五核兵器国首脳の共同声明を想起し、核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならないことを確認する。

とした。
 さらにロシアに新戦略兵器削減条約(新START)履行に戻るよう要求し、透明性や対話を欠いた中国の核戦力増強に懸念を表明。中ロに対し、核兵器不拡散条約(NPT)のもとでの対話に関与するよう呼びかけた。
 また核兵器使用の実相への理解を高め、持続させるために、世界中の他の指導者、若者及び人々が、広島及び長崎を訪問することを促すとし、日本及び各国がこの目的のために次世代が参加できる基金の創設を歓迎した。
 20日に発出された「G7広島首脳コミュニケ」は、

我々は、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンと共に、全ての者にとっての安全が損なわれない形で、現実的で、実践的な、責任あるアプローチを採ることによる、核兵器のない世界の実現に向けた我々のコミットメントを表明する。

核兵器不拡散条約(NPT)は、国際的な核不拡散体制の礎石であり、核軍縮及び原子力の平和的利用を追求するための基礎である。

と、「核兵器のない世界」実現に向けてNPT体制の維持と強化が必須であることを確認した。
 また中国に対しても、

我々は、中国に率直に関与し、我々の懸念を中国に直接表明することの重要性を認識しつつ、中国と建設的かつ安定的な関係を構築する用意がある。我々は、国益のために行動する。グローバルな課題及び共通の関心分野において、国際社会における中国の役割と経済規模に鑑み、中国と協力する必要がある。

と「建設的かつ安定的な関係」構築の意思を表明した。
 バイデン大統領は閉幕後の記者会見で、米中間で「近いうちに雪解けが見られるだろう」と語っている。
 なおコミュニケでは、サミット前に日本の与野党間で争点となったLGBTQ+等の人権についても、

我々は、あらゆる多様性をもつ女性及び女児、そしてLGBTQIA+の人々の政治、経済、教育及びその他社会のあらゆる分野への完全かつ平等で意義ある参加を確保し、全ての政策分野に一貫してジェンダー平等を主流化させるため、社会のあらゆる層と共に協働していくことに努める。
(中略)
あらゆる人々が性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、暴力や差別を受けることなく生き生きとした人生を享受することができる社会を実現する。

と明記された。
 日本はこのコミュニケをまとめた議長国として、これらの宣言をすべて自らが実行していかなければならない。その意味では、日本にとってのサミットの真の成否は、今後の岸田政権の行動にかかってくるだろう。

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