特集⑯ ニセ法主の登座――疑惑の「4月15日」

ライター
青山樹人

「あんたはウソツキだ」

 創価学会の顧問弁護士でありながら、学会の乗っ取りを企て、水面下で日蓮正宗の反学会活動家僧侶と連携し、さまざまな謀略を重ねていた山崎正友。
 池田会長が辞任して迎えた本部総会の直後の5月14日、山崎は日達法主を動かして法華講大講頭の地位に就いた。
 総講頭であった池田SGI会長がその地位も降りて総講頭が不在となった今、山崎は大講頭として、同じく大講頭である北条会長と対等の立場となったわけである。
 おそらくこの瞬間、山崎はこの世の絶頂期を味わっていたことだろう。
 しかし、仏法破壊の因果は厳しい。この時期を境にして、山崎は一挙に破滅への坂を転がり落ちるのである。
 まず、山崎の権力の源泉であった日達が、山崎を大講頭に据えて70日目の7月22日に急逝した。次期法主には、総監であった阿部日顕が登座した。
 山崎は早速、新法主となった日顕に接触するのだが、山崎が日達派の活動家僧侶の軍師であることを承知していた日顕は、山崎に面と向かって「あんたはウソツキだ」と言い放ち、以後、本山への出入りを禁止した。
 活動家僧侶によって無法地帯と化していた宗門内。日顕は自分の権力を守るためには、前法主を師僧とする活動家僧侶の影響力を削ぐべきだと計算したのであろう。
 だが、その日顕の側にも厄介な問題が起きた。山崎が活動家僧侶たちを煽り、「相承(そうじょう)」について疑念の声を公然と上げさせたのである。
 日蓮正宗では、代々の法主から法主へ、唯授一人血脈相承(一人から一人への相伝)がなされるとされてきた。
 大石寺では15世紀頃に13、4歳の法主が何代も登場し、あるいは他宗派出身の法主を据えざるを得なくなった時期があった。批判をかわすために、「相承」によって法主から法主へ特別な境地が伝授され、法主がいかなる人間であれ、大衆はこれに随順しなければならないという説が唱えられたのである。
 日蓮大聖人からの「法水」が、器から器に漏らさず移されていくように代々の法主に受け継がれ、その際に何か特別な権能が伝えられるという〝神話〟だ。
 もちろん、日蓮大聖人の教義にそのような神秘主義などあるわけがない。教団を維持していくうえで、他の日蓮門流に対する大石寺の優位性を主張し、一宗の統率権を穏便に移譲させるための手続きとして創作されたものである。

自己申告で法主になった日顕

 とはいえ、それでも詳細な記録の残っている近代の歴代法主の場合、死期を悟った旧法主は、周囲の者に命じて準備させ、立会人を置いて相承の儀式をおこなってきた。
 1959年、65世法主の日淳から66世の日達に相承された際も、日淳は高僧を立ち会わせ、相承したことを真っ先に創価学会の事実上の責任者であった池田総務(当時)に連絡している。
 ところが、日達は誰にも相承をする余裕もないまま急逝した。側近の誰も、相承を確認していない。
 日達の訃報を聞いて本山に駆けつけた日顕が、7月22日朝の枕経の場で、居合わせた菅野慈雲、細井琢道ら日達の親族に「あとのことはどうなっているのか」と尋ねたことは、当の親族らによって証言されている。
 つまり相承について、日顕自身が何も知らなかった証拠である。
 それが、同日午前11時からの緊急重役会議の席上、日顕は78年4月15日に「日達から相承について内々に話を受けていた」と自己申告する。そのことは自身の日記に明確に記してあるなどと述べ、これを唯一の根拠にして67世法主に登座したのである。
 山崎の指示を受けた反学会活動家僧侶らは、日達の誕生日であった78年4月15日の法主のスケジュールの記録を公開した。
 この日、日達は朝から夜まで法務や面会の予定が詰まり、静岡の大石寺から祝賀会のために都内のホテルに移動している。相承をするどころか、日顕と日達が懇談することすら物理的に不可能であった。
 実際、日達はこの78年4月15日以降も、日顕を宗制宗規上で次期法主に不可欠な地位である「能化」にさえ任命していない。また宗規に「次期法主の候補者を学頭と称する」とあるにもかかわらず、その学頭職にもしていない。
 それどころか、しばしば日達は公衆の面前で日顕を小僧扱いし、4月15日当日の祝賀会にさえ呼んでいないのだ。
 その日に自分が次期法主と指名した人間を誕生祝賀会にさえ呼ばず、その後も手続き上必要な地位につけないなど、あまりにも不自然である。活動家僧侶らは、日顕が法主の地位を詐称していると騒ぎはじめた。
 一方、山崎もすぐに日顕への攻撃を開始する。複数の週刊誌メディアに、日顕が「宗内きっての遊蕩児」であり、相承もないまま法主の座を盗んだという暴露記事を連発したのである。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。