画期的な北九州市の挑戦――暴力団追放とSDGsのまち

ライター
松田 明

注目集める北九州市

 九州の最北部に位置する人口939450人(2020年1月現在)の北九州市。
 九州では同じ福岡県の福岡市に次ぐ大都市であり、県庁所在都市以外では、全国でも川崎市に次ぐ。
 関門海峡を挟んで本州の山口県と近接し、ひとつの市のなかに日本海に面したエリアと瀬戸内海に面したエリアがある。
 古来、大陸から最新の文化が入ってくる玄関口で、近代に入ってからも門司(もじ)港は外国航路の船が最初に立ち寄る港のひとつだった。アインシュタインやヘレンケラーも、門司に滞在している。
 また、1901年(明治34年)に官営八幡製鐵所がつくられると、この地は日本の近代産業の先端地になった。
 現在のJR山陽本線、鹿児島本線、日豊本線、日田彦山線、筑豊本線は、いずれも北九州市内が起点となっている。
 その北九州市はいま、新たな脚光を浴びる都市として各方面から注目されている。
 まず、10年連続待機児童ゼロを達成するなど「次世代育成環境ランキング」で9年連続して「子育てしやすい街」全国トップに輝いている。
 民間賃貸住宅の家賃平均は、全国主要都市のなかで熊本市に次いで2番目の安さ。物価の安さ、救急車の平均到着時間なども全国トップクラスで、暮らしやすい街として注目されている。
 まだSDGsの取り組みがはじまる5年前の2011年に、すでに北九州市は国の「環境未来都市」に選ばれた。
 2018年には、OECD(経済協力開発機構)の「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」にアジアで初めて選出され、内閣府の「SDGs未来都市」にも選定されている。

SDGsと公明党

 このような未来を先取りする都市として注目される北九州市だが、日本の近代化の先駆地であっただけに、かつては大気汚染など「公害のまち」という汚名を被っていた。
 また、2012年の改正暴力団対策法によって日本でただひとつ「特定危険指定暴力団」の認定を受けた工藤会が、長年、北九州市内に本部を置いていた。
 同会は、一般市民に対して手榴弾を使うなどきわめて凶悪なことで知られ、2014年には米国財務省が〝ヤクザのなかでももっとも凶暴な組織〟として、組織としての工藤会と最高幹部2人を経済制裁の対象にしているほどだ。
 負の要素の大きかった北九州市が、いまのような先進都市に変わった背景には、なによりも住民たち、とりわけ女性たちの取り組みが大きかった。
 1997年に「地球温暖化を考える北九州市民の会」を創設した秋枝博子さんは、かつてノーベル平和賞受賞者である環境保護活動家ワンガリ・マータイさんが同市を訪問した際のことに触れ、

「まちを生まれ変わらせた人たち、生活を変えた人たち、病気を克服しきれいな環境のまちに変えた人たちに会いたいなら、北九州に行きなさい」「北九州の人々のすばらしい行動をご覧なさい」と、私たちの取り組みを評価してくださいました。(『第三文明』2021年1月号)

と語っている。
 一方、こうした市民と手を携えて、さまざまな施策の実現に尽力してきたのが公明党の北九州市議団だ。
 市議団団長の山本まち子市議は、

 SDGsには「誰一人置き去りにしない」との理念があります。この理念は、公明党の「大衆とともに」との立党精神や、「小さな声を聴く力」とのスローガンと通底しています。(同)

と語る。
 事実、SDGsに関しては、どの政党よりも公明党の取り組みは際立っている。
 ビル&メリンダ・ゲイツ財団日本常駐代表の柏倉美保子さんは、

 公明党は、どこよりも先にSDGs推進委員会を設置し、市民社会やNGO、企業など多様なセクターから意見を聞き、政府中枢への提言を重ねてきた。世界の先進国に先駆け、日本でSDGs推進が主流化する重要な流れをつくったと評価している。実際、SDGsには「世界の食料廃棄を半減する」という目標もある中で、公明党が主導して食品ロス削減推進法が成立した。公明党の推進力を発揮した成果だ。
 SDGsの「誰一人取り残さない」との理念は、公明党が掲げる人間主義や、人類益を重んじる姿勢とも相通じる。SDGs達成に向けた取り組みの一環として、今後、公明党がますます国際保健政策を推進していくことを期待している。(『公明新聞』2019年6月18日)

と、公明党が政治の分野で日本のSDGsを大きく牽引してきたことを高く評価している。

公明党だからできること

 北九州市と市民、福岡県警が2014年から「暴力団追放運動」を開始。前述したように手榴弾が投げ込まれるなど凶暴な抵抗を見せた工藤会だったが、構成員の約半数が逮捕された。
 固定資産税の滞納によって市が差し押さえた本部事務所も、2019年には転売された。
 2020年4月、この跡地を買い取ったのがホームレス支援などを続けてきたNPO法人「抱撲(ほうぼく)」だ。
 抱撲の理事長を務めるのは、日本パブテスト連盟・東八幡キリスト教会牧師の奥田知志氏。
 奥田氏は、

 行き先のない子どもたちに工藤会以外の居場所をつくれるのかどうか、同じ社会に生きる私たち自身も問われているのではないでしょうか。暴力が入り込むスキマもないような希望に満ちたまちをつくりたい。抱撲で工藤会の本部事務所跡地を買い取ろうと決めたのはそのためでした。(『第三文明』2021年1月号)

と語る。
 奥田氏は、公明党の地道な取り組みに信頼を寄せてきたひとり。困窮者支援の現場で、従来は制度からこぼれ落ちる人々がいたことを指摘し、

 この点では、公明党が尽力した「生活困窮者自立支援法」は一つの道筋を開きました。(『第三文明』2018年5月号)

と述べ、〝宗教的な概念をバックボーンに持つ公明党〟への期待を語ってきた。
 そして今回、工藤会本部事務所跡地に全世代型の福祉拠点をつくるにあたっても、次のように語る。

 公明党は地域の生活に寄り添い、現場の声に耳を傾ける活動をずっとしてこられた。新しいプロジェクトを地元にしっかりと根付かせるため、私たちの構想や思いを市民に伝え、また逆に地域から上がってきた要望を私たちに届けてほしい。これは、「大衆とともに」を立党精神としてきた公明党だからできることです。(『第三文明』2021年1月号)

 すべての政党のなかで公明党だけがもつ強みは、地方議員と国会議員の計約3000人のチームワークだ。
 多くの政党では党内にヒエラルキーがあり、市町村議員の声が直接国会議員に届くことさえ難しい。
 公明党は政党のなかで最多の市議会議員数をもち、しかも国政では与党。地域のなかの小さな声を拾い、即座に国会議員や他地域の議員とも共有して対処できる唯一の政党である。
 政治は口先ではなく、何をやったかが問われる。
 さまざまな課題を先駆的に解決してきた北九州市にあっても、公明党市議団はさらに市民の期待に応える結果を出していってもらいたい。

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