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沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第40回 沖縄古伝武術空手 剛毅會空手道 岩﨑達也宗師インタビュー

ジャーナリスト
柳原滋雄

 戦後の日本本土で隆盛を極めたフルコンタクト空手の元祖・極真空手。実際にその歴史をたどれば、沖縄発祥の空手から枝分かれした一部にほかならない。その極真空手に人生の若いころに命を賭け、その後、源流である沖縄空手に価値を見出した空手家を何人か取り上げてきた(「極真から沖縄空手に魅せられた人びと」《第26回第27回第28回》参照)。この連載の最後にインタビューを行った剛毅會(ごうきかい)空手道の岩﨑達也宗師(いわさき・たつや 1969-)もその一人だ。取材の最初にクギを刺されたのは、「武術性があるかどうかが問題であって、自分にとってそれが沖縄空手でなければならないということではない。たまたま師事した(沖縄空手の)先生がものすごい武術性を持っていた」という言葉だった。沖縄空手の本質とは何なのか、インタビューを試みた。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第39回 沖縄固有の武術「ティー」は存在したのか(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

弱者の武術として始まった沖縄空手

 最も初期に一般的に記録に残された空手に関する資料は、当時まだ沖縄の小学校教員であった船越義珍(ふなこし・ぎちん 1868-1957)が1913(大正2)年に『琉球新報』紙上に発表した「唐手は武藝の骨髄なり」(1月9日付)と題する文章とされる。
 そこで船越は、15世紀初めに琉球王朝が統一され、中央集権化が図られ武器をことごとく取り上げられたこと、さらに薩摩の琉球侵攻によって「ひどい目に逢わされた」結果、「無手勝流唐手の必要を痛切に感じ」、「護身用として唐手の練習をやらねばならぬ立場になったのであろう」と推測した。
 ご存じのとおり、船越の師匠は、安里安恒(あさと・あんこう 1828-1914)と糸洲安恒(いとす・あんこう 1831-1915)の2人だが、その2人の口伝を取り入れた見解であったことは容易にうかがえる。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第38回 沖縄固有の武術「ティー」は存在したのか(中)

歴史研究は始まったばかり

 沖縄空手の歴史をきちんと筋道立てて説明している人は、今のところいないと考えています。これが決定版という空手の歴史に関する書籍はいまのところありません

中学校の体育教師として長年勤めた勝連盛豊さん

 うるま市の喫茶店でそう語るのは、2017年に『検証 沖縄武術史 沖縄武技―空手』(沖縄文化社)を発刊した勝連盛豊(かつれん・せいほう 1947-)だ。
 直接の空手経験はないものの、棒術の使い手で、そこから棒術の歴史の研究を始めたのが空手についても調べるようになったきっかけだったという。
 30年に及ぶ研究成果は今年7月、『検証 沖縄の棒踊り』(同)として実を結んだ。その調査の中で実感したのが、空手がオリンピックの正式種目に採用される時代になったにもかかわらず、空手に関する正確な歴史がいまだにまとめられていないとの危機感だったという。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第37回 沖縄固有の武術「ティー」は存在したのか(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

 この連載を締め括るに当たり、歴史の問題は避けて通れない。沖縄空手の起源をめぐっては、その解明に必要な史料の多くが、1609年の薩摩藩による侵攻、1879年の日本政府による琉球処分、1944年の米軍による沖縄大空襲や翌年の「沖縄戦」によって消失したとされる。近年、空手の歴史をアカデミズムの立場から研究する動きも新たに出てきているが、巷間流布されてきた幾つかの「定説」にも疑問の声が投げかけられている。その一つが、沖縄に存在したとされる固有の武術「ティー」をめぐる問題だ。例えばこれまで、沖縄空手の源流は、沖縄にもともとあった土着の武術「ティー」と中国から渡ってきた武術とが融合して形成されたとの「定説」がまことしやかに喧伝されてきた。本連載においても当初はそのように紹介した。ただし、現在の研究ではそれとは異なる事情も浮き彫りにされている。沖縄空手の歴史の問題を数回にわたり取り上げる。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第36回 沖縄伝統空手道振興会 新垣邦男・新理事長インタビュー

ジャーナリスト
柳原滋雄

 2008年に沖縄空手の有力4団体で結成された連合組織・沖縄伝統空手道振興会(豊見城市)。これまで各種国際セミナーの開催をはじめ、沖縄空手会館の運営などにも携わってきた。このほど喜友名朝孝・前理事長の任期を引き継ぎ、歴代4人目の理事長に就任した北中城村(きたなかぐすくそん)の新垣邦男(あらかき・くにお 1956-)村長に、振興会の今後の課題などについて聞いた。(取材 2019年6月27日) 続きを読む