この連載を締め括るに当たり、歴史の問題は避けて通れない。沖縄空手の起源をめぐっては、その解明に必要な史料の多くが、1609年の薩摩藩による侵攻、1879年の日本政府による琉球処分、1944年の米軍による沖縄大空襲や翌年の「沖縄戦」によって消失したとされる。近年、空手の歴史をアカデミズムの立場から研究する動きも新たに出てきているが、巷間流布されてきた幾つかの「定説」にも疑問の声が投げかけられている。その一つが、沖縄に存在したとされる固有の武術「ティー」をめぐる問題だ。例えばこれまで、沖縄空手の源流は、沖縄にもともとあった土着の武術「ティー」と中国から渡ってきた武術とが融合して形成されたとの「定説」がまことしやかに喧伝されてきた。本連載においても当初はそのように紹介した。ただし、現在の研究ではそれとは異なる事情も浮き彫りにされている。沖縄空手の歴史の問題を数回にわたり取り上げる。 続きを読む
